富士重工「スバル450」デビュー。大ヒットのスバル360の排気量アップ版がなぜ成功しなかった?【今日は何の日?10月14日】

■排気量アップしたスバル450で小型車市場に参入

1960 年にデビューしたスバル450は輸出名スバルマイアでした(弊社刊「ニューモデル速報 すべてシリーズ スバル360のすべて」より)
1960 年にデビューしたスバル450は輸出名スバルマイアでした(弊社刊「ニューモデル速報 すべてシリーズ スバル360のすべて」より)

富士重工業(現、スバル)の「スバル360」が誕生した2年後の1960(昭和35)年10月14日、ボアアップによって排気量を423ccに拡大した「スバル450」がデビューしました。スバル360で大成功を収めた富士重工が、小型車市場に進出するために投入したのです。


●てんとう虫の愛称で大ヒットしたスバル360

1955年に政府が乗用車の開発を促進するために発表した、国民車構想に呼応してデビューしたスバル360は、フルモノコックボディやリアエンジンなど大胆な設計思想で、軽自動車としては初めて4人乗車を実現しました。

1958年デビューしたスバル360、国民的な人気を集めた
1958年デビューしたスバル360、国民的な人気を集めた

エンジンは、最高出力16PSを発揮する排気量356ccの空冷2気筒で、RR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトを採用。実用性の高さに加えて、可愛いスタイルから「てんとう虫」の愛称で呼ばれて大ヒットし、登場後12年にわたり長く人々に愛され続けました。

スバル360の大ヒットによって、スバルは自動車メーカーとして基盤を築き、スバル360は日本独自の軽自動車市場を切り開くという重要な役目を果たしたのです。

●スバル360のボディに排気量アップのエンジンを搭載したスバル450

スバル360のヒットによって軽自動車市場で確固たる地位を築いた富士重工は、スバル360のエンジンをボアアップして排気量を423ccに拡大した小型車のスバル450を発売。「マイア」という名前で海外にも輸出されました。

スバル360のRRレイアウトの2気筒空冷エンジン
スバル360のRRレイアウトの2気筒空冷エンジン

スバル360と異なる点は、オーバーライダー付の前後大型バンパーの装備、デメキンタイプから大型シールドビーム・ヘッドライトに変更、開閉式のリアサイドウインドウの装備などでした。ボディサイズは、スバル360より全長のみ115mm拡大しましたが、車幅と車高は同じで、室内スペースはスバル360と同等でした。

排気量拡大によって、最高出力/最大トルクは、18PS/3.2kgmから23PS/3.8kgmへと向上しましたが、販売台数は約5年半で僅か1549台にとどまりました。車両価格は38.5万円、ちなみに当時の大卒初任給は1.3万円程度(現在は約23万円)ですから、単純計算では現在の価値で約680万円となります。

●軽に比べて維持費が高いことで販売に苦しむ

小型車となったスバル450の販売が伸び悩んだ主要な理由は、スバル360に比べて維持費が高いことと思われます。軽自動車に比べて小型車は、自動車税や保険が高く、さらに小型車には車検が必要(軽は1973年まで車検が不要)だったのです。

もう一つの理由は、せっかく小型車を買ったのに、大型バンパーが装着されているとはいえ、見た目はスバル360とほとんど変わらず、しかも室内スペースも同等で、有難味がなかったと思われます。どうせなら、同時期に登場したトヨタ「パブリカ(700cc)」や三菱自動車「三菱500(500cc)」の方が、と考えたユーザーは多かったのでしょう。


モータリゼーション黎明期には、ボディはあまり変えずに、エンジンの排気量を大きくして対応するというケースがありました。メーカーとしてはコスト低減も伴いますが、当時の車所有を熱望する日本国民みんなにとっては、見た目が変わらないと新型車という新鮮味が薄れてしまいます。

スバル360は大人気ではありましたが、スバル450のチャレンジは国内の経費事情にもより、人気を獲得することができなかったようです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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