■教習所に存在しない教習用車両って……?
旅先で自由度が増すキャンピングカーは、憧れのアイテム。ペット連れでも気兼ねなく出かけられることもメリットのひとつです。その中でもキャンピングトレーラーは、普段は切り離して置いておき、旅の時だけつないで使えるのも魅力です。
実は、そのキャンピングトレーラー。引っ張るにあたって、特定の免許が必要なものと、そうでないものがあるのをご存知ですか?
そもそも、けん引車両といえば、大きな海上輸送用のコンテナ(海コン)を載せたトレーラーをトレーラートラクタにつないで走っている姿が一般的なイメージかもしれません。
そのため、普通自動車免許だけを持っているドライバーからすれば、ちょっと他人事のような話に思えるかもしれませんが、キャンピングトレーラーでも重さによって、けん引免許が必要な場合があるのです。
けん引免許は、普通・準中型・中型・大型・大型特殊自動車などの自動車で、被けん引車(トレーラーやキャンピングトレーラー)などをけん引する際に必要な免許です。
銀色に輝くボディで有名なエアストリームなど、総重量が750kgを越えるキャンピングトレーラーは、このけん引免許が必要となります。
さらに、けん引免許には、通常のけん引免許(一種もしくは二種)にくわえて、車両総重量が750kg超〜2000kg以下のトレーラーに限ってけん引が許される限定免許「けん引小型トレーラー限定免許」があります。比較的大型のキャンピングトレーラーなどでも、このカテゴリーに入ります。
ところがこの限定免許、教習所に教習用車両がなく、教習が行なわれていないのが実情なのです。
●運転免許試験場にも試験車がない!
教習所に教習用車両がなく、教習が行なわれていない限定付きのけん引免許は、運転免許試験場でも試験車両がないため、車両の持ち込み受験となります。
そして、ケースによっては、実際に自分がこれから免許を取ってけん引する予定のトレーラー、そのものズバリを持ち込むことになる場合ものあるのです。
ということは……そうです、まだ免許を取得していないので現地までトレーラーを自分の運転で引っ張っていくワケにはいきません。そのため、受験の際には試験場までけん引免許を持っている誰か別の人に、試験車両を運んでもらう必要があります。
なお車輌総重量が750kg以下となるキャンピングトレーラーやそのほかのトレーラーは、けん引免許が不要です。比較的小型で外板がFRPでできているようなキャンピングトレーラーや、自動二輪を積むような小型のトレーラーなどは、この範疇に入るものがあります。
けん引免許は18歳以上で受験資格がありますが、視力検査が普通自動車免許と異なり、視力が両眼で0.8以上(左右それぞれが0.5以上)であることのほか、深視力検査が加わります。これは、物を立体的に見る力や遠近感が正常に備わっているかを調べる検査です。
実際の検査では、覗き窓から覗いた2.5m先に3本の棒が立っており、そのうち中央の棒だけが前後へ移動、そして左右の棒と同じ距離にきた時にスイッチを押す、といったテストをします。中央の棒は3回左右の棒の間を通過しますが、その度に2cm以下の誤差で揃ったタイミングを認識できれば合格となります。
いかがでしょう。免許要らずで、ぱっと取り付けて、出かけたい時に行きたい場所へ行ける小型のキャンピングトレーラーも魅力的ですが、けん引免許が必要とはいえ、家のように大きなキャンピングトレーラーをけん引するのも夢がありますね。
※2017年6月7日の記事を2023年10月13日に追記・再編集しました。
(古川教夫)