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■ヤマハはMX2で4年連続のタイトル防衛
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、モトクロスの世界最高峰レース「モトクロス世界選手権」の2023年シーズンで、最高峰クラス「MXGP」とその下位クラス「MX2」のダブルタイトルを獲得。マシンを製造するメーカーに与えられるコンストラクタータイトルで二冠を達成しました。
2023年シーズンのヤマハは、MXGPへ「Monster Energy Yamaha Factory MXGP Team」、MX2には「Monster Energy Yamaha Factory MX2 Team」をワークスチームとして投入。
いずれのクラスもライダータイトルこそ逃したものの、「YZ450FM」や「YZ250FM」といったワークスマシンが高い戦闘力をみせたことで、総合力を発揮。
2023年9月24日に開催された最終戦イギリスGPで、所属ライダーたちが奮闘したこともあり、MXGPでは2年連続、MX2では4年連続の栄冠を手中にしています。
●長い歴史を誇るシリーズで活躍
モトクロス世界選手権は、FIM(国際モーターサイクリスト連盟)が、1957年にスタートさせたモトクロスの世界最高峰レースです。2輪車のレースとしては、ロードレース世界選手権の「MotoGP」が有名ですが、そのモトクロス版といえるのがこの大会。
長い歴史を誇るこのシリーズで、ヤマハは、1972年から本格参戦を開始。同年に当時最高峰だった500ccクラスと、その下位クラスとなる250ccクラスの両方で初優勝を達成します。
また、翌1973年には、後に世界のモーターサイクル用サスペンションの基準となる1本型サスペンション、「モノクロスサスペンション」を搭載した「YZM250」を投入。そのマシンを駆るハカン・アンダーソン選手が250ccで初のチャンピオンをヤマハにもたらすなどで大活躍します。
そして、その後もヤマハは、着実に勝利を積み重ねることで、モトクロス世界選手権で通算12回のライダータイトルを獲得しています。
そんなモトクロス世界選手権の2023年シーズンで、ヤマハは、MXGPに市販モトクロッサー「YZ450F」の2023年モデルをベースとしたファクトリーマシンYZ450FMを投入。
ライダーには、2022年シーズンにランキング2位となったジェレミー・シーワー選手をはじめ、ランキング4位のマキシム・ルノー選手、ランキング5位のグレン・コルデンホフ選手といった3名のトップライダーを起用し、2015年以来となるライダーの年間チャンピオン獲得に挑みました。
また、MX2では、4ストローク250ccのワークスマシン「YZ250FM」を投入。ライダーには、2022年シーズンでランキング2位となったヤゴ・グリーツ選手と、4度の優勝などでランキング5位となったティボー・ベニスタント選手、さらにヨーロッパモトクロス選手権のEMX250でチャンピオンに輝いたリック・エルジンガ選手を加えた3人体制で参戦しました。
●MXGPはヤマハが逆転でタイトル獲得
タイトル争いが最終戦までもつれ込んだ、2023年シーズンのモトクロス世界選手権。MXGPクラスでは、前戦の第18戦イタリアGP(2023年9月17日)終了時点で、ライダーの年間ランキングは、シーワー選手が3位、コルデンホフ選手が4位、ルノー選手が10位。また、MX2のライダー年間ランキングでは、グリーツ選手が2位、ベニスタント選手9位、エルジンガ選手10位に。
さらに、コンストラクタータイトルでは、MXGPでトップのGASGASを8ポイント差で2位のヤマハが追走。逆にMX2では、2位のKTMに40ポイントの差をつけてヤマハが1番手につけるといった展開でした。
そして、1大会2レース制で行われた運命の最終戦。MXGPでは、シーワー選手が2位・4位の総合2位に入り、7つ目のポディウムシルバーウエアを獲得。シリーズ年間ランキングで3位となります。また、コルデンホフ選手は最終戦で3位・5位に入り、年間ランキング4位を獲得。ルノー選手は予選で激しく転倒し、最終戦を欠場し、年間ランキング10位で終わります。
ほかにも、ワークスチーム以外のヤマハライダー、「Gebben van Venrooy Yamaha」のカルヴィン・フランデレン選手らも奮闘したことにより、コンストラクタータイトルでヤマハが逆転。2位GASGASと2ポイント差という僅差ながら、939ポイントを獲得し、見事に2年連続のタイトルを手中にしました。
また、MX2では、グリーツ選手がレース2でスリリングなグランプリ優勝を果たし、年間ランキング2位を獲得。一方、ベニスタント選手は最終戦2位・6位で、年間ランキング9位。エルジンガ選手は9位・16位で、年間ランキング10位を獲得。
いずれも、ライダータイトルこそ逃したものの、総合力で勝り、ヤマハがコンストラクタータイトルを獲得。2位KTMを48ポイント引き離した977ポイントを獲得し、MX2で4年連続の栄冠を手にしています。
(文:平塚 直樹)