なぜ同じ軽二輪クラスに? ヤマハ新型スーパースポーツ「YZF-R15」(155cc)発売。ヤマハ「YZF-R25」(250cc)との違いを調べてみた

■YZF-RシリーズのDNAを受け継ぐ次世代モデル

ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、近年人気が上昇中の軽二輪クラスに、155ccのフルカウル・スポーツモデル「YZF-R15 ABS(以下、YZF-R15)」を国内販売することを発表しました。

ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブルー)
ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブルー)

ヤマハのスーパースポーツ「YZF-R」シリーズのDNAを受け継ぐこのモデルは、フラッグシップの1000ccマシン「YZF-R1」で培った技術などを投入した軽二輪モデル。

シリーズ共通のアグレッシブなスタイルに、新開発の155cc・単気筒エンジンなどをマッチングすることで、バイク免許を取得したばかりの初心者ライダーなどでも、存分にスポーツライディングを楽しめるマシンに仕上がっているといいます。

ヤマハの軽二輪モデルには、おなじYZF-Rシリーズの250cc版「YZF-R25 ABS(以下、YZF-R25)」もあり、普通二輪免許で乗れることや、車検がない、高速道路を走ることができるなど、メリットは同じ。

では一体、ヤマハはなぜ同じ軽二輪クラスに、155ccのモデルも投入したのでしょうか?

ヤマハ・YZF-R25 ABS(パープル)
ヤマハ・YZF-R25 ABS(パープル)

そこで、ここでは、新型YZF-R15の特徴を紹介すると共に、YZF-R25とどんな点が違い、それぞれどんなライダーに向いていそうなのかを検証してみます。

●海外の人気モデルを国内向けにアップデート

元々、YZF-R15は、欧州、インド、アセアンを中心に人気を誇る海外向けのロングセラーモデルでした。

ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブラック)
ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブラック)

今回の新型は、それをベースに、日本向けに開発された仕様で、バイク免許を取得したばかりの若いライダーなども、スポーツライディングの醍醐味を思う存分味わえる本格装備を持つことが特徴です。

ヤマハのYZF-Rといえば、前述した1000ccのフラッグシップモデルであるYZF-R1を頂点に、700ccの「YZF-R7」、320ccの「YZF-R3」、250ccの「YZF-R25」といった豊富なラインアップを誇るシリーズ。YZF-R15は、それらのDNAを継承したスタイルや装備を持つ軽量・コンパクトな155ccモデルです。

ヤマハ・YZF-R125 ABS
ヤマハ・YZF-R125 ABS

ちなみに、今回ヤマハでは、YZF-R15と同時に、125ccの新型「YZF-R125」も発表。車体や装備などを共通とする原付二種モデルで、こちらも若い層をターゲットとしたヤマハの新戦略モデルだといえます。

●可変バルブ機構を採用した新エンジン

YZF-R15の主な特徴は、まず、パワートレイン。最高出力14kW(19PS)を発揮する155cc・水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンには、低速向けと中高速向けのカム(吸気側)が7400rpmで切り替わる「VVA(可変バルブ)」機構を採用。全域で優れたトルク特性を発揮することで、良好な加速性能と加速感に貢献します。

YZF-R15のエンジン
YZF-R15のエンジン

また、滑りやすい路面でも安定した走りをもたらす「トラクションコントロールシステム」、クラッチの操作感を軽くすると共に、急激なシフトダウン時に後輪のホッピングなどを防ぐ「アシスト&スリッパークラッチ」なども採用。

オプションには、クラッチレバーやアクセル操作なしでシフトアップが可能な「クイックシフター」も用意し、ライダーの疲労軽減に貢献します。

●YZF-Rシリーズを彷彿とさせるフェイスデザイン

外観では、フロントカウルにYZF-R1の特徴ともいえる、フロントカウル中央のM字ダクトを踏襲。その中に、ひとつのLEDでハイ・ローを切り替えられるバイ・ファンクションタイプのヘッドランプを採用することで、コンパクトで特徴的なデザインを実現します。

YZF-R15のフロントフェイス
YZF-R15のフロントフェイス

なお、この新型ヘッドランプは、明瞭な明るさと、広くムラの少ない照射範囲を確保できる優れモノ。カウル左右にある2眼ポジションランプなどと相まって、スポーティなフェイスデザインを演出すると共に、夜間の走行に寄与するという、機能とデザインの両立を図っています。

車体では、ヤマハ独自のデルタボックス型フレームを採用。軽さと強度剛性のバランスを図ったダイヤモンド形式のフレームは、左右ピボットの軸間を209mmとワイドにし、強化部材を織り込むことで、優れた走行性に寄与します。

ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブルー)
ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブルー)

また、フロントカウルは高い高速安定性を実現する形状を採用。MotoGPマシン「YZR-M1」スタイルのバブルスクリーンなども装備することで、レーシーなスタイルや走行時の快適性などを実現します。

足まわりでは、インナーチューブ径37mmの倒立式フロントサスペンションの採用で、高い強度と剛性バランスを高次元で両立。さまざまな情報が一目で分かるマルチファンクションLCDメーターなど、高機能な装備も満載です。

車体色は「ブルー」「ブラック」「ダークグレー」の3色を用意。価格(税込)は55万円で、2023年10月16日の発売予定です。

●YZF-R25との違いは?

では、同じ軽二輪で、250cc版のYZF-R25とは、どんな違いがあるのでしょうか?

ヤマハ・YZF-R25 ABS(パープル)
ヤマハ・YZF-R25 ABS(パープル)

まず、車体。スペックの比較は以下のようになります。

●YZF-R15
・全長1990mm×全幅725mm×全高1135mm、ホイールベース1325mm
・シート高815mm
・車両重量141kg

●YZF-R25
・全長2090mm×全幅730mm×全高1140mm、ホイールベース1380mm
・シート高780mm
・車両重量169kg

全体的にYZF-R25の方が大柄ですね。車両重量でもYZF-R15の方が軽いため、細い路地でのUターンや、駐車場での取り回しなどをやる場合、YZF-R25より扱いやすそうです。ただし、シート高では、意外にもYZF-R15の方が高いのですが、35mmほどの程度の差であれば、車体も軽いですし、さほど足着き性には影響しなさそうですね。

次に、エンジンの性能。スペック的な比較は以下のようになります。

ヤマハ・YZF-R15 ABS(ダークグレー)
ヤマハ・YZF-R15 ABS(ダークグレー)

●YZF-R15
・エンジン:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
・最高出力:14kW(19PS)/10000rpm
・最大トルク:14N・m(1.4kgf・m)/7500rpm
・ミッション:6速
・燃料タンク容量:11L
・燃費:WMTCモード値50.2km/L

●YZF-R25
・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒
・最高出力:26kW(35PS)/12000rpm
・最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/10000rpm
・ミッション:6速
・燃料タンク容量:14L
・燃費:WMTCモード値25.8km/L

パワーはYZF-R25の方が圧倒的に上ですね。高速道路を使ったロングツーリングなどでは、より余裕の走りが楽しめるはずです。

ヤマハ・YZF-R25 ABS(ブルー)
ヤマハ・YZF-R25 ABS(ブルー)

ただし、燃費では、YZF-R15はかなりいいといえます。YZF-R25の方が燃料タンク容量はやや多いのですが、1回の満タンで航続距離できる距離はYZF-R15の方が長そうです。ちなみに、カタログ数値上でみた1回の満タンで走れる航続距離は、YZF-R15が552.2km、YZF-R25は361.2kmとなります。

また、YZF-R25は、YZF-R15と同様にクイックシフターをアクセサリー設定していますが、トラクションコントロールやアシスト&スリッパークラッチはなし。より新型だけに、装備面ではややYZF-R15の方が上回るようです。

足まわりの比較では、大径37mm倒立フロントフォーク、140/70-17のワイドなリヤタイヤなど、両モデルともに同等の装備を誇ります。

ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブルー)
ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブルー)

また、メーターも、両モデルにはマルチファンクションLCDメーターを搭載していますから、この点でもほぼ互角といえるでしょう。

ただし、ヘッドライトには違いがあります。両モデルともにLEDタイプを装備している点は同じですが、YZF-R15の方が新しいモデルだけに、ひとつのLEDでハイ/ローを切り替えられるバイ・ファンクションタイプのヘッドランプという最新装備を搭載しています。

また、YZF-R15はテールカウルのデザインもより最新。YZF-R1やYZF-R7に採用さていいる立体的なデザインを踏襲しており、次世代YZF-Rシリーズのフォルムを投入しているといえます。

●リーズナブルなYZF-R15、YZF-R25は奥深さも魅力

なお、価格(税込)は、YZF-R15の55万円に対し、YZF-R25は69万800円。YZF-R15の方が14万800円安い設定です。

ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブラック)
ヤマハ・YZF-R15 ABS(ブラック)

これほどの価格差があれば、バイク購入費用があまりない若いライダーなどにとっては、YZF-R15の方がより手が届きそうですね。あと、バイクに乗り慣れていない初心者には、より車体が軽くてコンパクトなYZF-R15の方が、特に、市街地やワインディングなどでは、扱いやすいことがうかがえます。

もちろん、YZF-R25の方が、パワーなどの動力性能は断然高いので、高速道路などでより余裕の走りを楽しめるのは確かです。

特に、搭載する249cc・直列2気筒エンジンは、高回転までストレスなく吹け上がるエンジン特性により、心地良い加速感を楽しめることも魅力。シャープで軽やかなハンドリングと相まって、初心者はもちろん、ベテランライダーでもスポーツライディングの醍醐味を堪能できるマシンです。

ヤマハ・YZF-R25 ABS(ブラック)
ヤマハ・YZF-R25 ABS(ブラック)

これらから考察すると、YZF-R15は、リーズナブルな価格と扱いやすさを持つことで、より初心者向けのエントリーモデル的な位置付けではないかと思います。一方、YZF-R25は、初心者からベテランまで、より幅広いライダーに対応する懐の深いモデルだといえますね。

(文:平塚 直樹

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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