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■D1ライツはD1GP参戦を目指す若手が多数参加
タイヤを4輪とも滑らせつつ、進行方向とは逆方向にカウンターステアを当て、タイヤスモークを吐き出しながら疾走するドリフト走行でのカッコよさを競い合い、毎年たくさんのファンを熱狂させているのが、国内最高峰のドリフト競技会『D1グランプリシリーズ(略称:D1GP)』です。
そしてそんなD1グランプリシリーズへの参戦を目指す、未来のD1選手たちによって争われているのが、下位カテゴリーとして設けられているD1ライツシリーズで、今回紹介する玉城詩菜選手もここに参戦しています。
●D1GP藤野選手に師事して初参戦のD1ライツで結果を残す
沖縄県出身の玉城詩菜(たまき しいな)選手がドリフトをはじめたのは21歳のころ。2台目のクルマへと乗り換えるタイミングで、たまたま出てきたJZX100型マークIIがマニュアル車だったことから、オートマ限定を解除しつつドリフトも開始。それまで勤めていた会社を辞め、整備士学校に通って整備士免許も取得し、自分でクルマをイジりながらドリフトライフを楽しんでいました。
転機となったのは2018年。沖縄で開催されたドリフトイベントに参加した玉城選手は、そこにゲストとして呼ばれていた藤野選手に助手席へ乗ってもらい、さまざまなアドバイスをもらうとともに、「ちゃんとやりたいなら本州に来て挑戦してみたら」と言われたそうです。
雑談のなかの何気ない会話だったのかもしれませんが、これがのちの人生を大きく左右するターニングポイントとなりました。
それから2年ほど悩んだ玉城選手でしたが、26歳のときに奮起して、そのときの愛車であるJZX100型クレスタとともに上京。それから1年ほどは都内に住みつつ、走行会などに参加してドリフトライフを満喫していたそうですが、藤野選手が主催している走行会や大会に参加することで、「男女を問わず上には上がいるんだなってのを知れましたし、それが刺激になって、もっと上手くなりたいと思うようになりました」と、玉城選手はそのときの心境を振り返ってくれました。
なお、2021年には、D1競技への入門カテゴリーとなっている、D1地方戦のセントラルディビジョナルシリーズ第4戦日光に参加し、初参加ながら3位入賞。D1ライツシリーズ参戦時に必須となる、D1-Aライセンスを取得申請するためのポイントを満たすこととなりました。
そして2023年の4月。藤野選手が代表を務めるチューニングショップ・ウィステリアに入社し、D1ライツへの参戦計画がスタート。7月上旬に開催されたD1ライツシリーズの第4戦&第5戦にスポット参戦し、初参加ながらベスト8進出という快挙を成し遂げたのです。
●「クルマが変わっても乗れるように!」とテクを追求
というわけで、活躍目覚ましい玉城選手をさらに深掘りすべく、インタビューを敢行させていただきました。
クリッカー「今はどんなことに力を入れてレースに取り組んでいるんですか?」
玉城「藤野さんの指導での考え方が、『運転がそもそも上手くならないといけない』って方針なんです。なので、クルマが変わったからといって乗れない、ということがないように、こういうクルマだからこういうふうに動かす、みたいなことに力を入れてますね」
クリッカー「ドリフトだと『振り出しをもっと』とか『アクセルワークをしっかり』とか、そういうことじゃないんですね」
玉城「ノリと勢いで行け!っていうタイプじゃないんです。この前も軽耐久でFFのGRコペンに乗せて(※レースに参戦)もらったり、次は筑波サーキットでFRのND型ロードスターに乗らせてもらうんですけど、駆動方式が変わっても運転できるようにって感じですね。FFならこう運転する、みたいなことを常に意識して、瞬時に判断できる能力というか、それを実践できるように経験値を積み重ねてます」
クリッカー「ドリフトテクニックというよりも、基本的な運転テクニックということですね」
玉城「まずはそれができないとってところです。大会でも実力以上のことはできないですし、本番にその実力をしっかり出すためにも基礎は大事だと思うので。あとは、練習だから何本もあると思うな、ということで、1周1周を集中して走るようにしてますし、いろんなジャンルに積極的にチャレンジさせてもらってますね」
●第6戦エビスでは単走1本目にまさかの横転
クリッカー「先日開催されたD1ライツシリーズ第6戦エビスは、どうだったんでしょうか?」
玉城「エビスは初めて走るコースですし、今回からクルマが180SXになったんですけど、練習走行のときから思っていた以上に乗りやすくて、車速も乗せられるようになったし、ラインもトレースできていたんです。だから本番の1本目も無茶したわけじゃないんです。けど、『こうなったときにはこう操作しなきゃいけない』っていう技術的な引き出しが足りなくて、横転してしまったんだと思ってます」
クリッカー「シチュエーションというか、ケースバイケースな実力が不足していたということですか?」
玉城「そうですねー。今はそういう技術的な引き出しが3つくらいしかなくて…。あのとき(※横転した時)もアクセルを踏んでいたら行けたかもとは思いますが…経験不足です」
クリッカー「怪我とか…カラダのほうは大丈夫だったんですか?」
玉城「カラダのほうは本当に無傷で…鞭打ちとかもなくて絶好調です」
クリッカー「マシン的なダメージは?」
玉城「足まわりはアームが歪んだくらいで、ボディ的には屋根を交換しなきゃな、というところですが、修理できそうな範囲ではあります。まぁイチから制作したクルマなので落ち込みましたけど…」
●「最終目標は打倒藤野!」と意気込む玉城選手
クリッカー「将来的な目標とか夢はなんですか?」
玉城「あと4ポイントでD1GPライセンスが申請できるので、残りの2戦でそのポイントだけは取りたいな、というのが本心ですけど、今シーズンは日光戦からのスポット参戦なので、もしGPライセンスが取れたとしても、来年(2024年)はD1ライツで修行して、チャンピオン争いのできるドライバーになりたいなと思っています」
クリッカー「D1グランプリにはステップアップしないということですか?」
玉城「まだまだ技術的にも経験値的にも足りないので、じっくりみっちり力をつけてやっていきたいですね。長い道のりにはなりそうですけど、ゆくゆくはD1グランプリに出たいですし、藤野さんも倒したいとは思ってますけど…」
クリッカー「師匠を倒すのが最終目標なんですね」
玉城「だいぶ先になりそうですけどね。今回のエビス戦はD1グランプリと併催ということもあって、結果的には横転しちゃったけど、すごくたくさんの人から『応援しています』とか『頑張ってください』とか『大丈夫ですか』と言ってもらえました。そういう声援にも応えられるようちゃんと実力をつけて、ひとつずつ壁を超えていけたらなと思っています」
●横転からの復活となる次戦・備北に期待
第4戦日光では、初出場でいきなりのベスト8進出というデビューを果たし、続く第5戦日光では単走敗退。先日の第6戦エビスではニューマシンを投入したものの、まさかの横転で単走敗退という、波乱万丈のシーズンとなっている玉城選手ですが、「次の備北までにはマシンを直して頑張ります」と意気込んでいました。
次戦のD1ライツシリーズは、2023年9月30日(土)・10月1日(日)に岡山県の備北ハイランドサーキットにて開催される第7戦&第8戦(最終戦)です。目標としているD1GPライセンス取得に向けたポイントを獲得できるのか、玉城選手の活躍に期待したいところです。
(文・写真:山本 大介)
【関連リンク】
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