■予選Q2走れず16番手スタートだったUPGARAGE NSX GT3
2023年8月27日(日)に三重県・鈴鹿サーキットで開催された「2023 AUTOBACS SUPER GT第5戦SUZUKA GT 450km RACE」の決勝で、GT300クラスの優勝を果たした18号車 UPGARAGE NSX GT3。
波乱のUPGARAGE NSX GT3は予選Q2をマシントラブルで走ることが出来ず、Q2進出組の中では最下位となる16番手からのスタートとなってしまいます。
しかし、本来速さのあったUPGARAGE NSX GT3は、序盤から快調なペースで先行するライバルを抜きまくり、中盤には4位のポジションまで上がっていくことに成功。
そして45周目に、56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rのタイヤが外れるというトラブルにより、全コースで最高速80km/hに抑えられる「フルコースイエロー(FCY)」となります。トラブルの発生からFCY宣言、そしてピット閉鎖という流れの隙間をついてピットインに成功。タイヤ交換と給油を済ませ、小出峻選手をそのままダブルスティント(ドライバー交代無しの連続走行)で送り出します。
そして、GT300の全車が2度目のピットインを終えると、UPGARAGE NSX GT3はなんと、トップとなっていました。
●1秒未満のバトルを制してルーキーが勝利を手にした瞬間
しかし、そのすぐ後ろ、1秒未満の場所に87号車 Bamboo Airways Lamborghini GT3が追いかけて来ます。この激しいバトルのトップ争いは、終盤ラスト10周から本格化。
このバトルを見守るピットの面々。GT500のマシンが追い抜いていく際に、UPGARAGE NSX GT3とBamboo Airways Lamborghini GT3の間に間隔が開くと、安堵の声も漏れてきます。
ピットでは燃料がもつかどうか、というような会話も聞こえ、ラスト3周のところで万が一に備え給油の用意も行われます。それを見たレースクイーンの瞳からポロリと涙がこぼれることもありました。
そのバトルを追いかけるかのように追い上げてきた61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTも、ファイナルラップにはこの2台に追いついていきます。
しかし、小出選手は何とか逃げ切り、UPGARAGE NSX GT3をGT300クラスのトップでチェッカーフラグをくぐり抜けました。
大歓声のピット。
スタートドライバーを担当した小林崇志選手は、感極まっての涙をこぼします。今季2勝目とはいえ、1勝目は開幕戦岡山での悪天候下での赤旗中断による優勝。今回はフルレースを戦っての優勝とあって、喜びも大きなものとなっていたようです。
そして小林選手はプラットホームの石田誠監督と抱き合い、勝利を喜び合います。
一方、パルクフェルメにはGT300を優勝したUPGARAGE NSX GT3がやってきました。
小出選手にとっては、初の自身のドライブによるトップチェッカーでの優勝となり、また大ベテランの松浦選手を完全に抑えきっての優勝となったことで、その喜びの大きさは開幕戦岡山での優勝とは比べ物にならないと容易に想像が出来ます。
マシンから降りた小出選手は歓喜の声を上げ、喜びを心から表現していきます。
今年、2023シーズンからスーパーGTに参戦するルーキーである小出選手が、自らもぎ取ったと言っても過言ではない勝利は、大いに称賛できるものではないでしょうか。
今季2勝目を挙げたUPGARAGE NSX GT3の2人のドライバーは、ドライバーズポイントを40としてStudie BMW M4の荒聖治選手と並びますが、優勝回数の差でUPGARAGE NSX GT3がランキングトップとなります。
また、第5戦鈴鹿はGT500で16号車 ARTA MUGEN NSX GTが優勝したため、HONDA NSXのダブルWINを達成したレースともなりました。
今週末[9月16日(土)~17日(日)]はサクセスウェイトが最も重くなる第6戦スポーツランドSUGOでの300kmレースが開催されます。
魔物が棲むというSUGO。いったいどんなドラマが繰り広げられていくのでしょうか?
(写真・文:松永 和浩)