【学生フォーミュラ日本大会2023】競技はトップタイム争い「オートクロス」へ

■宣言通り、2番手タイムを出したのは、レース経験のないドライバー

学生フォーミュラ日本大会2023が、静岡県にあるエコパ(小笠山総合運動公園)で8月28日(月)から9月2日(土)までの6日間にわたって開催されています。

学生フォーミュラとは、学生たち自らが、構想・設計・製作した車両により、ものづくりの総合力を競う、というもので車両の性能評価やデザイン、コスト、さらにはその車両に対するプレゼンテーションまで、さまざまな角度からの審査が行なわれています。ほぼ同じレギュレーションで、世界各地で開催されており、日本大会は今回で21回目を数えます。

オートクロス競技でトップタイムとなった京都工芸繊維大学。レコードにほんのちょっと及ばなかったものの、今回唯一の55秒905のタイムを記録
オートクロス競技でトップタイムとなった京都工芸繊維大学。レコードにほんのちょっと及ばなかったものの、今回唯一の55秒905のタイムを記録

4年ぶりに海外チームの参戦も可能となった今大会では、ICV(ガソリン自動車)クラスに国内50チーム、海外から10チーム、EV(電気自動車)クラスに国内20チーム、海外10チームの合計90チームのエントリーを集めました。

6日間の日程では、最初にEV車検、その後ICV車両の車検があり、車検を通過すると、大会4日目からは動的審査と呼ばれる「アクセラレーション(75mの加速タイムを競います)」「スキッドパッド(左旋回と右旋回の周回タイムを競います)」「オートクロス(直線、ターン、スラロームやシケインを組み合わせた1周800mの複合コースの走行タイムを競います)」といった走行審査に各チームが進みます。

レースやe-Sportなどの競技経験もほぼゼロという宮田知弥選手。しかし車のことはしっかり理解しているようす。
レースやe-Sportなどの競技経験もほぼゼロという宮田知弥選手のヘルメット。しかし車のことはしっかり理解しているようす

この中で、「オートクロス」のタイムによって、最終審査となる「エンデュランス(1周約1000mのコースを二人のドライバーで10周ずつ走行する)」の出走順が決定します。

ここでトップタイムをマークしたのが、#1京都工芸繊維大学です。京都工芸繊維大学のエースドライバーが出したタイムが55秒905。午前中に同チームのセカンドドライバーが出した56秒977を上回っての堂々のトップであり、マシンの仕上がりと、2人のドライバーのレベルを見せつけるものとなりました。

この京都工芸繊維大学チームのセカンドドライバーが出したタイムを狙っていたのが#7 工学院大学です。そのエースドライバーの宮田知弥選手。京都工芸繊維大学のエースにはかなわないが、セカンドドライバーの藤田寿選手には勝てる、と以前から「お前のタイムを上回ってやる」と豪語していたようです。

そういった話を聞いていると、レーシングカードライバーとして、それなりの経験を積んでいるように聞こえてくるのですが、競技車両経験を聞くとレンタルカートくらいかなぁ、という感じ。ほぼ未経験です。

なぜ、そんな経験がないのにタイムを出せると言い切れるの? という疑問がわいてきます。でも本人的には特段難しいことではないようです。

「チームに入ってヴィークルダイナミクスを担当してきました。そこでもっと速い車を知りたいと、いろんな人に聞いてマシンづくりを勉強させてもらってきました。そのうちに、速く走れること、そしてその理想のマシンも自分の中でできてきました。その理想像をそのまま起こしたのがこの車両です」というからちょっとびっくりです。

でもきっちりと結果を出しました。「オートクロス」走行2本目で宮田選手が出したタイムは56秒625。#1 京都工芸繊維大学のベストタイムにはおよびませんでしたが、1号車のセカンドドライバーの藤田選手が出したタイムをコンマ3秒上回ったのです。

「動きの理解をして、きっちり目的意識をもって操作をして走らせられれば、目標タイムには行けます」と。もちろんこのマシンづくりにはチームの力も必要なわけですが、チーム員に対しては「能力があってすごくパワフルな仲間です。気合と根性があって、理解力も高いんです」と高評価。このドライバー、そしてチーム、ただものではない感じです。

(青山義明)

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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