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■先代から再びサイズを拡大して余裕のGTカーに
1993(平成5)年8月19日、日産自動車から9代目でR33型となる新型「スカイライン」がデビューしました。
走りに振った先代モデルとなる8代目(R32型)のタイトな車室空間の反省を踏まえて、全車3ナンバーボディとして余裕のGTカーとなったのです。
●8代目までのスカイラインの歴史
歴史の長いスカイラインには、7代目まではそのクルマの特徴や時代背景を表現したニックネームが付けられ、スカイラインというよりも、そのニックネームで呼ばれていました。以下、8代目まで簡単に振り返ってみます。
・初代L型/20系(1957年~1963年)
富士精密工業(後に日産と合併するプリンス自動車の前身)にて、初代「プリンス・スカイライン」が誕生。日本の自動車史で重要な役割を果たした名車スカイラインは、ここから始まりました。
・2代目S50型(1963年~1968年):羊の皮を被った狼
プリンス自動車から登場しましたが、1966年にプリンス自動車は日産に吸収合併。日本グランプリでポルシェを抜き去った偉業をもって、見た目とパワーのギャップからつけられたニックネーム、というよりは名言。
・3代目C10型(1968年~1972年):ハコスカ
箱(ハコ)型のスカイライン(スカ)と短縮されたネーミング、1962年にはGT-Rの初代に相当する「スカイラインGT-R」が誕生。
・4代目C110型(1972年~1977年):ケンメリ
ファッショナブルなTVコマーシャルで“ケンメリ”の愛称を浸透させ、ハコスカを上回る人気を獲得して歴代最高の販売台数を記録。
・5代目C210型(1977年~1981年):ジャパン
日本の風土が生んだ日本の名車の意味を込めて“ジャパン”の愛称で親しまれました。当時は、強化された排ガス規制が優先されたため、動力性能は停滞。
・6代目R30型(1981年~1985年):ニューマン・スカイライン
イメージキャラクターに人気俳優ポール・ニューマンを起用。1970年代の排ガス規制を乗り越え、史上最強のスカイラインと謳われた「ターボRS」を追加するなど、高性能を追求。後期型ではユニークな鉄仮面も登場。
・7代目R31型(1985年~1990年):セブンス、都市工学スカイライン
ハイソカーブームの真っただ中、7代目セブンスはスカイライン伝統のスポーティさに、ハイソカーブームのラグジュアリーさを融合させましたが、販売は低調。
・8代目R32型(1989年~1994年)
先代に対して全長と全高を縮小、スリム化によって優れた走りを実現。一方で、車室空間が狭いという不満も。追加されたGT-Rは大いに注目を集めましたが、バブル崩壊の影響や、ミニバン、ステーションワゴンなど多様化も進み、販売は低調。
●3ナンバーボディで走りと快適性を合わせ持つGTカー(R33型)
9代目の特徴は、8代目の優れた走りを維持しながら、ボディを3ナンバーに拡大して、余裕の車室空間を持ったGTカーへと変貌したこと。ボディタイプは先代同様、4ドアセダンとクーペが用意され、先代同様やや丸みの帯びたスタイリングが採用されました。
エンジンは、4気筒が廃止されてすべて6気筒に統一され、2.0L直6 SOHCと、2.5L直6 DOHC、同ターボのエンジンの3機種を設定。組み合わせるトランスミッションは、5速MTと4速および5速ATでした。
ホイールベースは100mm以上延長されましたが、4輪マルチリンクサスペンションや、一部グレードで採用されたスーパーHICAS(4WS)などの採用、高性能パワーユニットの効果で、優れた走りとフットワークを実現し、GTカーとして大きく進化しました。
車両価格は、5速MT仕様でセダンが256.1万円(NA)/287.8万円(ターボ)、クーペが269.8万円(NA)/289.8万円(ターボ)に設定。先代の不評を払拭し完成度の高い9代目でしたが、一方でバブル崩壊の影響は続き、ミニバンやステーションワゴン、4WD車やSUVなどとなるボディタイプの多様化とクルマを使用目的で選ぶ時代へとなり、セダンとクーペには厳しい状況となり、9代目の販売も思わしくなかったのでした。
7代目以降、スカイラインからニックネームが消えて、型式で呼ばれることが多くなりました。スカイラインに限らず、ニックネームで呼ばれるような個性溢れるクルマが少なくなったのは残念ですが、世代ごとの強烈な個性がなくなったということもあります。が、スカイラインのブランドそのものが浸透して生き延びていった、ということでもあるのでしょう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)