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■上級化した4代目セルボは、サブネームを付けたセルボモードに
1990(平成2)年7月12日、スズキから「セルボモード」が発売されました。
1990年に実施された軽自動車の規格変更(排気量550cc→660cc)とともに、4代目のモデルチェンジで上級化を図り、「セルボ」からサブネームを付したセルボモードとなったのです。
●セルボの前身は、ジウジアーロのデザインの「フロンテクーペ」
セルボは、スペシャリティカー「フロンテクーペ」の後継車です。フロンテクーペは、1971年にデビューした、軽初の2シータークーペで、イタリア人デザイナーの巨匠ジウジアーロのデザインをベースにしたことでも評判になりました。
フロンテクーペは、全高が軽自動車の中で最も低いスポーティな2シーターのフォルム(のちに2+2を追加)で、パワートレインは360cc 3気筒2ストロークエンジンと、4速MTの組み合わせ、駆動方式はRR。軽量なボディに加えて前後重量配分が優れていたため、その走りは軽の中でも際立っており、加速性能は2Lクラスに匹敵するレベルでした。
今でもフロンテクーペは、軽の名車として取り上げられますが、実質2人乗りで実用的でなかったことから、販売は期待通りには伸びずに、1976年に1代限りで生産を終えました。
●スポーティさを継承しながら実用性を重視した「セルボ」
1977年にスズキは、休止していたフロンテクーペを、軽の新規格に合わせた、ひと回り大きなボディを持つ新型車セルボとして復活させました。スタイリングは、フロンテクーペ同様、ジウジアーロのデザインがベースです。
パワートレインは、550cc 3気筒2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせ。後部シートには、緊急用+2のシートがセットされていましたが、実質2シーターのクーペでした。
1982年に登場した2代目セルボは、すべてを一新。駆動方式がRRからFFに、エンジンは550cc 3気筒ですが、2ストロークから4ストロークエンジンに変更。さらに、初代のスポーティ路線から、女性にも好まれるように燃費と運転のしやすさが重視されました。
そして、1988年に登場した3代目セルボは、クーペスタイルからハッチバックへと変身、1990年の軽の新規格化に合わせて生産を終了、セルボモードにバトンを渡したのです。
●スポーティかつ高級感を目指した「セルボモード」
1990年、軽の新規格に合わせてセルボの4代目として登場したセルボモード。当時は、バブル全盛の時代でセルボモードが目指したのは、走りの追求と上級化でした。
その目玉は、排気量が550ccから660ccに拡大されたことを機に、それまでの3気筒から4気筒エンジンへの変更です。ショートストロークエンジンに、1気筒あたり4バルブ化やDOHC化、さらにインタークーラー付ターボも用意されました。
スタイリングは、丸みを帯びたソフトなハッチバックで、インテリアは小型車に匹敵する高級感を演出。ターボエンジンが男性向け、NA(無過給)エンジンが女性向けとして販売されました。
新開発の4気筒エンジンを搭載し、バブル時代という背景もあり、ターボモデルは92万円と高価で、販売は伸びませんでした。一方で、1993年にデビューしたハイトワゴン「ワゴンR」が爆発的な人気を獲得し、セルボモードの存在感が薄くなった流れでもあったのでしょう。
1979年に登場した「アルト」が起こした”軽ボンネットバン”ブーム、1993年の「ワゴンR」が起こした”ハイトワゴン”ブーム、2つの爆発的なブームの狭間で登場したセルボモードは、残念ながら目立たないクルマでした。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)