トヨタ車体の超小型モビリティ「コムス」デビュー。1人乗りながら割高感のある79.8万円でスタート【今日は何の日?7月2日】

■1人乗りで手軽な足として活用可能な超小型EV

2012年に発売された1人乗りの超小型EV「コムス」
2012年に発売された1人乗りの超小型EV「コムス」

2012(平成24)年7月2日、トヨタ車体が超小型モビリティEV「コムス(COMS)」を発売しました。

コムスは、「(C)ちょっと(O)お出かけ(M)街まで(S)スイスイ」のキャッチコピーで、最高速60km/hの使い勝手の良い可愛らしいデザインの1人乗り超小型EVです。


●コムスは、普通免許が必要な第一種原動機付き自転車

超小型モビリティとは、軽自動車よりもコンパクトで小回りが利いて、環境性能に優れた手軽な足となる1人~2人乗りの3輪および4輪を指します。国交省が認定する超小型モビリティは、第一種原動機付自転車の「ミニカー」と、超小型モビリティの「型式指定車」と「認定車」の3種に分類され、いずれも高速道路は走行できません。

1人乗りのEVコムスは、第一種原動機付自転車のミニカーなので、運転するには普通自動車免許が必要。2022年から市販化された2名乗車が可能なトヨタの「C+pod」は、分類上はミニカーでなく、超小型モビリティの型式指定車で軽自動車扱いです。

ミニカーは、定格出力0.6kW以下、最高速度は60km/hで、全長2.5m以下/全幅1.3m以下/全高2.0m以下です。超小型モビリティの型式指定車は、定格出力0.6kW以上で最高速度は60km/h、ボディサイズの規定はミニカーと同じです。また、型式指定車は車検が必要ですが、ミニカーは第一種原動機付自転車なので不要です。

●最高出力5kWで最高速度60km/hで走行可能な超小型EV

コムスのシート
コムスのシート

コムスは、クルマとして最小限の装備のみで、エアコンもなく、ドアもありません。いわば、1人乗りのゴルフカートのようなクルマです。しかし、可愛いスタイリングにレーシングゲームのような近未来的なコクピットを持ちます。

コムスの3本スポークステアリングとレーシングゲームのようなコックピット
コムスの3本スポークステアリングとレーシングゲームのようなコックピット

1モーターデフ付の後輪駆動で、減速回生ブレーキ、四輪独立サスペンションによって、小型乗用車並みの快適な乗り心地と操縦安定性を実現。バッテリーは12Vの密閉型鉛電池を使用し、モーターの定格出力0.59kW(最高出力5kW)、最高速度60km/h、100V電源による満充電に要する時間は約6時間です。

車両価格は、パーソナルユースの「P-COM」が79.8円、ビジネスユースの「B-COM」が66.8万~77.3万円に設定されました。「クリーンエネルギー補助金」対象なので7万円の補助金が受けられ、最廉価仕様は60万円を切ります。

●超小型モビリティはなぜ普及しないのか、価格のせい?

2022年に市販化が始まったトヨタ「C+pod」
2022年に市販化が始まったトヨタ「C+pod」

超小型モビリティとして、「コムス」「C+pod」以外にも、アップル「e-Apple」、タケオカ自動車「ミリューR」、タジマモーター「タジマ・ジャイアン」などが市販化されています。とはいえ、デリバリー車や近隣を回るような営業車として街中で見かけることはあるものの、普及しているとは言えません。それは、パーソナルユースとして使われていないからです。

普及の障壁となっている最大の要因は、やはりコストです。コムスは79.8万円、C+podは165万~171.6万円と、用途や実用性を考えると高価です。結局のところ、普及はどうしても限定的になってしまうのです。


超小型モビリティは、注目はされても普及しない典型的なタイプのクルマなのでしょうか。価格や交通インフラ、安全確保と免許の必要性など課題は多いのですが、未来社会への第一歩のようなものかもしれません。今後それら課題もクリアされて手軽なモビリティとして普及していくことを期待したいですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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