室内のLED間接照明が夜のドライブを楽しくする、マツダ「CX-60」のライト類を全紹介【新車リアル試乗 8-6 マツダCX-60 i-ACTIVSENSE・ALH概要&前後ランプ編】

■CX-60の上級版ライト・ALHを試してみた

しおりさんといっしょに見ていきます
しおりさんといっしょに見ていきます

CX-60リアル試乗の第6回めは、CX-60のライト性能に焦点を当てていきます。

これだけの値段がするクルマだもの、はてさてどんな機能を有しているのかね? と興味を持っているひとは少なくないでしょう。

街乗り・高速路・山間道、3つのシーンで試してきました。

●見た目に反して知能的なライト

CX-60の持つヘッドライトは、単純な自動ロー/ハイ切り替えにとどまる「ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC)」と、照射光の形を走行シーンに応じて巧みに変化させる「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)」の2種。いずれもマツダの安全デバイス総称「i-ACTIVSENSE」に勘定され、i-ACTIVSENSEは19もの機能があると先回書きましたが、HBCとALH両方を持つことはないため、当然、19すべての機能を備えるCX-60は存在しません。

HBCは低廉寄り25S S PackageとただのXDにのみ標準装備。ALHはその他の全機種に標準でつき、25S S Packageだけ工場オプション扱い。

したがって、今回の試乗車はALHが標準で備わっています。

CX-60には、車両の外観前後ばかりか、内装照明に至るまで、フィラメント発光の電球はただのひとつもなく、すべてLED光源に統一されています。

「またかよ」とみなさんに思われそうですが、明るくて高機能なのは認めるにしても、LED素子ひとつ不点灯になっただけでも全体交換を強いられ、高い補修費を求められるLEDライトに筆者は猛反発派です。おそらくCX-60のヘッドライトも単品で15万円はくだるまいと予想していますが、下は299万2000円から上は626万4500円にまでにおよぶ車両価格(税込みで)のクルマを選ぶユーザーにとっては痛くはないかも知れず、この反発心は、今回はしまっておくことにしました。

さてライト本体。パッと見にはプロジェクターレンズをメインとするシンプル型に見えますが、よく見るとその内部には高機能のための種が隠されています。

各ランプの役割。上下動するプロジェクターランプと下段にある小さなワイド配光ロービームが種だ
各ランプの役割。上下動するプロジェクターランプと下段にある小さなワイド配光ロービームが種だ

ライトの構成は写真のとおり。

CX-60のキッとした鋭い目つきを生むプロジェクターレンズをカギカッコの形で取りかこむレンズは、上下分割されたグリルメッキにはさまれた直線状のライトと連なって灯るスモール(車幅灯)兼デイライト灯。この直線部だけはオレンジ点滅するターンシグナルを兼ねています。

プロジェクターレンズは状況に応じた上下動でローにもハイにもなる兼用ビーム。夜間のエンジン始動時は作動確認のため、いったん上下に動きます。その下のランプは純粋なハイビーム灯。

もうひとつ秘密は、ハイビーム灯の車両内側に、半分埋め込んだビー玉のような姿で外向きに配された小さな小さなかわいいランプで、こちらは「ワイド配光ロービーム」と呼ばれるランプ。

ランプ筐体が小さめ。ことCX-60は車幅が1890mmものワイドボディのため、なお小ぶりで単純なライトに見えますが、結構な仕掛けが施されていることがわかります。

憎らしい新オートライト規制に則ったポジション構成
憎らしい新オートライト規制に則ったポジション構成

スイッチは新オートライト規制に対応したタイプで、ポジションはAUTOを定常位置に、「OFF-AUTO-スモール(車幅灯)-ライト」という並び。

昼間のエンジン始動では消灯、夜間の始動ではいきなり自動点灯。夜間の停止時、手前まわしのOFFで一斉消灯の自動AUTO戻り、向こうまわし1段でスモールに、2段でライト強制点灯となります。

●鋭い目が持つ4つの機能

CX-60のALHは、

1.グレアフリー(防眩)ハイビーム
2.マーキングライト
3.ワイド配光ロービーム
4.ハイウェイモード

の4機能を持っています。

ひとつひとつを詳しく述べると・・・

1.グレアフリー(防眩)ハイビーム
ハイビーム時、前方車や反射すると眩しい標識への照射を減光する。

【作動条件】
<対象が前方車の場合>
・車速が約30km/h以上。
・システムが前方車を検知している。

<対象が標識の場合>
・車速が約60km/h以上。
・システムが眩しい標識を検知している。

2.マーキングライト
ロービーム時は歩行者をハイビームで照射し、ハイビーム時は歩行者への照射光を点滅させる。

【作動条件】
・車速が約20~約80km/hのとき。
・自車と衝突する可能性がある歩行者をシステムが検知しているとき。

3.ワイド配光ロービーム
ロービームの照射範囲を拡大する。

【作動条件】
・車速が約40km/h未満で走行中のとき。
・停車中にターンシグナルを点滅させたとき。

4.ハイウェイモード
高速走行時、ヘッドランプの照射角度を上に向ける。

【作動条件】
・車速が約95km/h以上のとき。

ALHの持つ各機能が作動する速度域をグラフにした。各機能の作動が重複する速度域もある
ALHの持つ各機能が作動する速度域をグラフにした。各機能の作動が重複する速度域もある

各機能が作動する車速範囲がそれぞれ異なっていてややこしいので、ひと目でわかるようグラフにしておきました。

これだけ有能な割に、取扱説明書のALH説明はたった3ページしかないのが拍子抜けするところですが、ALHの作動方法も拍子抜けするほど簡単で、ライトスイッチがAUTOにあるとき、その先端にあるALHスイッチを押し、メーターに緑色のALH表示ランプが点灯すればそれでおしまい。

レバー先端にALHスイッチがあるのはありがたい。これで自動ハイ&配光が気に入らなければ、このスイッチひと押しで解除できる。そうはいかないクルマも多いものだ
レバー先端にALHスイッチがあるのはありがたい。これで自動ハイ&配光が気に入らなければ、このスイッチひと押しで解除できる。そうはいかないクルマも多いものだ

このALHスイッチが先端に設けられていることで、クルマ任せのロー/ハイ切り替えや配光をやめたいとき、ALHを任意にOFFにして自前操作が走行中でもできるようになるのが優れています。こういったスイッチは、やはり使いやすい位置に独立させて設けないと。

さて、街乗り、高速路、山間道、3つのシーンでALHの機能を試してきましたが、機能が充実していてどうやら長くなりそうなのでALHについては概要にとどめ、実践編は次回にまわすことにして、先にリヤランプまわりについて解説します。

●リヤランプと、い~い雰囲気の夜間室内照明

後ろにまわってこちらもオールLEDとなるリヤランプ。

後ろにまわってリヤコンビランプ。テールランプとストップランプは面積を変えて光る構成だ
後ろにまわってリヤコンビランプ。テールランプとストップランプは面積を変えて光る構成だ

リヤボディとバックドアをまたぐ赤点灯部は、全体でテールランプを担うと同時に、ボディ側L字部は、その下の灯体とともにストップランプを受け持っています。L字部はターンシグナルを抱え、バックドア側テールランプ下にはリバースランプ、その左には、車両右側に限られますが、リヤフォグランプが与えられています。リヤフォグランプは、フロントワイパーデアイサー、ヘッドランプウォッシャー、大型ウォッシャータンク&ウォッシャー液残量警告灯とセットで、4WDのXDに工場オプション、それ以外の4WD全車に標準装備となっています。

ターンシグナルは電球のように点滅とさきに触れましたが、それはリヤも同じ。ここは最近のマツダ車のアピールポイントなのか、マツダもCX-60サイト内の動画またはYoutubeのマツダオフィシャルチャンネルで前後ランプの点消灯の様子をおおいに自慢しています。


夜間照明時の運転席周辺
夜間照明時の運転席周辺

室内照明は凝っていて、前後ドアの上部ガーニッシュとポケット内、そしてルームランプ部に内蔵されたアンビエントライトが暗い室内をほのかに照らし出します。

ルームランプを全点灯するとこのようになる
ルームランプを全点灯するとこのようになる
ピュアホワイトの内装と白いルームライト光で夜も室内が映える。たぶん黒内装のCX-60ではこうはならない
ピュアホワイトの内装と白いルームライト光で夜も室内が映える。たぶん黒内装のCX-60ではこうはならない

フロントとリヤサイドのルームランプは、夜間の単なる実用照明でしかないと思っていましたが、今回のCX-60試乗車ではフル点灯させると、ピュアホワイトの内装カラーと相まって、そこいらのクルマとはちょっと異なる雰囲気を醸し出しています。他の色ではどうなのかな。

新しく買った電気製品、機種変更した携帯電話orスマートホンの感激のピークが箱を開けた瞬間で、その持続もせいぜい1週間であるのと同様、CX-60の室内照明も慣れりゃあ何とも思わなくなるのでしょうが、それにしても夜乗るたびにこの雰囲気が味わえるなら、白いLEDの室内照明も悪くはありません。すでにCX-60を使っているユーザーは、絶えず「いいクルマ買っちまったぜ」とニヤついていることでしょう。

筆者はもともとホテルや美術館で見る間接照明に興味があり、LEDに対しても流行る前から自分のクルマに何とか採り入れようと、いつかは群馬県立美術館にまで足を運び、間接照明を見物したこともあるのですが(美術眼や絵心はないので肝心の展示品は見ないで帰った)、やはりしかるべきひとがデザインすればこうも仕上がりは変わってくるものよ。

写真を撮っておきましたのでじっくりごらんあれ。

というわけで今回はここまで。

次回「ALH実践編」で。

(文・写真・表:山口尚志 モデル:星沢しおり)

【試乗車主要諸元】

この姿もなかなかいい
この姿もなかなかいい

■マツダCX-60 XD-HYBRID Exclusive Modern〔3CA-KH3R3P型・2022(令和4)年8月型・4WD・8AT・ロジウムホワイトプレミアムメタリック〕

★メーカーオプション
・ドライバー・パーソナライゼーション・システムパッケージ 5万5000円(消費税込み)
・パノラマサンルーフ 12万1000円(同)
・ロジウムホワイトプレミアムメタリック特別塗装色 5万5000円(同)

●全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm ●ホイールベース:2870mm ●トレッド 前/後:1640/1645mm ●最低地上高:180mm ●車両重量:1940kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/50R20 ●エンジン:T3-VPTH型(水冷直列6気筒DOHC24バルブ直噴ターボ) ●総排気量:3283cc ●圧縮比:15.2 ●最高出力:254ps/3750rpm ●最大トルク:56.1kgm/1500~2400rpm ●燃料供給装置:電子式(コモンレール) ●燃料タンク容量:58L(軽油) ●モーター:MR型 ●最高出力:16.3ps/900rpm ●最大トルク:15.6kgm/200rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池 ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/21.2/22.4km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格505万4500円(消費税込み・除くメーカーオプション)