■CX-60のi-ACTIVSENSE機能を見る
今回は、CX-60のi-ACTIVSENSEを見ていきます。
実車を眺めてみても取扱説明書を見ても、あまりにも機能が多いのですべてを紹介しきれませんが、ま、始めていきましょう。
●i-ACTIVSENSE機能は19種
マツダの安全デバイスは「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」と総称されます。「ACTIVE」じゃなくて「E」のつかない「ACTIV」。ここは「SKYACTIV(スカイアクティブ)」と同じです。
そのi-ACTIVSENSEが持つ安全機能は、取扱説明書に倣って列記すると次のとおりとなります。
1.ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC)
2.アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)
3.車線逸脱警報システム(LDWS)
4.ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)
5.交通標識認識システム(TSR)
6.ディスタンス&スピード・アラート(DSA)
7.前側方接近車両認知(FCTA)
8.後側方接近車両認知(RCTA)
9.360°ビューモニター
10.ドライバー・アテンション・アラート(DAA)
11.ドライバー・モニタリング
12.マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)
13.クルージング&トラフィック・サポート(CTS)
14.レーンキープ・アシスト・システム(LAS)
15.緊急時車線維持支援(ELK)
16.スマート・ブレーキ・サポート(SBS)
17.AT誤発進抑制制御
18.ドライバー異常時対応システム(DEA)
19.衝突二次被害軽減システム
●個々機能詳細
ひとつひとつについて機能を解説していきます。
1.ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC:Hi Beam Control System)
夜間、前方の光の状況を判断し、ライトのロー/ハイを自動で切り替える。
2.アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH:Adaptive LED Headlight)
夜間、前方の光の状況を判断し、ライトの照射範囲や明るさを、5つの種類で自動で変化させる。
3.車線逸脱警報システム(LDWS:Lane Departure Warning System)
自車が車線から逸脱する可能性があるとき、警報とメーター表示で運転者に報知する。
4.ブラインド・スポット・モニタリング(BSM:Blind Spot Monitoring)
車線変更時、自車後方からの接近車両がある場合に、各種表示と警報音で運転者に報知する。
5.交通標識認識システム(TSR:Traffic Sign Recognition System)
走行中に、車両が認識した交通標識をメーター画面に表示し、運転者に知らせる。
6.ディスタンス&スピード・アラート(DSA:Distance and Speed Alert)
先行車との車間距離が近いことをメーター画面にて運転者に知らせる。
7.前側方接近車両認知(FCTA:Front Cross Traffic Alert)
交差点などでの自車発進時に、左右前方死角エリアから接近する車両を検知したとき、メーター表示と警報音で運転者にその存在を知らせる。
8.後側方接近車両認知(RCTA:Rear Cross Traffic Alert)
駐車場など、バックでの発進時に左右後方からの接近車両を検知したとき、メーター表示と警報音で運転者にその存在を知らせる。
9.360°ビューモニター
定速走行時や駐停車時、車両周辺のようすをセンターディスプレイに表示する。
10.ドライバー・アテンション・アラート(DAA:Driver Attention Alert)
各種の車両からの情報から、運転者の疲労や注意力を読み取り、メーター表示と警報音で運転者に休憩を促す。
11.ドライバー・モニタリング
運転者の危険な状態や行動(眠気、脇見)を検知し、運転者に危険を報知する。
12.マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC:Mazda Radar Cruise Control)
車両が捉える先行車に対して車間距離を保ちながら定速または追従走行し、運転者の負担を軽減する。
13.クルージング&トラフィック・サポート(CTS:Cruising and Traffic Support)
定速/追従走行機能を行うとともに、車線を検知しているときは、車線に沿って走行するよう、ハンドル操作をクルマがアシストする。車線を検知していない場合は、先行車の走行軌跡に沿ってクルマがハンドル操作をアシスト。
14.レーンキープ・アシスト・システム(LAS:Lane Assist System)
自車が車線を逸脱することを回避する。逸脱の可能性があるとシステムが逸脱を回避するよう、クルマが自らハンドル操作をアシストする。
15.緊急時車線維持支援(ELK)
運転者のハンドル操作アシスト。次の2つがある。
1.ロードキープアシスト機能
自車が路外に逸脱する可能性を捉えると、システムが路外逸脱を回避するよう、クルマがアシストするとともに、メーター表示と警告音でドライバーに報知する。
2.側方危険回避アシスト機能
自車の車線変更か車線逸脱により、隣り車線の車両と衝突する可能性があるとき、側方危険アシスト機能がもとのレーンに戻るよう、システムがハンドル操作をアシストすると同時に、メーター表示と警告音でドライバーに報知する。
16.スマート・ブレーキ・サポート(SBS:Smart Brake Support)
車両が捉えた対象物と自車が衝突する可能性が生じたとき、システムがブレーキ制御を行って衝突時の被害軽減を図る。大きく次の2グループ・トータル
1.前進時検知機能
・前方検知機能(SBS)
前方対象物(前方車、歩行者、自転車、自動二輪)との衝突回避orその被害軽減を図る
・右直事故回避アシスト機能(SBS)
右折時に対向車との衝突回避or衝突時の被害軽減を図る。
・前進時左右接近物検知機能(SBS-FC:Smart Brake Support-Front Cross)
交差点などでの出合い頭事故の回避or被害軽減を図る。
・交差点事故回避アシスト機能(SBS)
交差点右左折時に於ける対象物(歩行者、自転車)との衝突回避or衝突時の被害軽減を図る。
2.後進時検知機能
・後方検知機能(SBS-R:Smart Brake Support-Rear)
自車が後方の対象物(障害物、歩行者)と衝突する可能性があるとき、その存在をメーター表示と警告音でドライバー報知する。さらに対象物との衝突の可能性が高まったときはブレーキ制御を行い、衝突の回避or衝突による被害軽減を図る。
・後進時左右接近物検知機能(SBS-RC:Smart Brake Support-Rear Cross)
自車が後ろ側方から接近する車両と衝突する可能性があるとき、その存在をメーター表示と警報音でドライバーに知らせる。さらに接近車両との衝突の可能性が高まったときはブレーキ制御を加え、衝突の回避or衝突による被害軽減を図る。
17.AT誤発進抑制制御
次のふたつがある。
・AT誤発進抑制制御(前進時)
前方の対象物(障害物、先行車、歩行者)がある状態でドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ場合に、システムがメーター表示と警告音を発してドライバー報知するともにエンジン出力を抑制、さらに衝突の可能性が高まったらブレーキ制御を加える。
・AT誤発進抑制制御(後退時)
後方に対象物(障害物、歩行者)がある状態でドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ場合に、システムがメーター表示と警告音を発してドライバー報知するともにエンジン出力を抑制する。
18.ドライバー異常時対応システム(DEA:Driver Emergency Assist)
高速路、一般道を問わず、運転者が急病などで運転の継続が困難になった際、車両自ら減速・停止させることで衝突事故またはその被害の軽減を図る。
19.衝突二次被害軽減システム
走行中、エアバッグが作動するほどの衝撃を受けたとき、自動で非常点滅表示灯を働かせて周囲に注意を促すとともにブレーキ制御を行って障害物などに衝突した際の被害を軽減する。自車停止後は電動パーキングブレーキも働かせる。
以上の機能は、どう数えるかにもよりますが、CX-60の持つi-ACTIVSENSEの機能数は19項目と、他メーカーに比べてかなり多い数となります。
何とかならなかったのかと思うのは、装備全体もそうなのですが、特に安全デバイス関連の構成がかなりややこしいことです。
CX-60カタログに差し込まれた冊子内装備表の中のセーフティ項だけ抜き取り、エクセル表にしたものを載せますのでごらんください。
例えばスマートブレーキサポート(SBS)。状況次第で自動でブレーキ制御を行って被害を抑えるものですが、これが持つ機能は、ベースとなる「前方検知機能」のほか、「右直事故回避アシスト機能」「前進時左右接近物検知機能(SBS-FC)」「交差点事故回避アシスト機能」「後進時検知機能」「後進時左右接近物検知機能(SBS-RC)」の6つが存在します。
SBSがつくならすべての機能が備わるかと思えばそうでもなく、例えば「前方検知機能」は全機種標準でも「右直事故回避アシスト機能」は25S S PackageとPHEV S Packageではオプション、ただのXDは選択不可、25SやXDのL Package、Exclusive Mode、そしてXD-HYBRID系列、S Package以外のPHEV全機種には標準でつくといった具合に、機種によってあるなし、そしてオプションで選択可不可があるのがややこしい。
では25S、XD、PHEVそれぞれのS Pakcageの中身が同じなのかと思ったらここにもひっかけがあり、25S S Packageのライトはシンプル型「ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC)」にとどまり、XDとPHEVのS Packageのライトは頭のいい「アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)」が標準、25S S Packageにオプション。SBSの中の「SBS-FC」は(書いていてややこしくなってきた!)、25S S PackageにもXD S Packageにもオプションすらなく、PHEV S Packageには標準・・・もうここまでくると、これを書いている筆者やCX-60購入検討者が装備表にちゃんと目を通しているか、まるでマツダの担当者に試されているかのよう。
装備表、オプション表を見て「ここまでは要らないよ」というユーザーのために選択の余地が与えられているのは理想ですが、メーカー側にしてみればいつどんな組み合わせの要望が来るかわからず、ために様々な想定でパックオプションを用意するとこのようになってしまうのは致し方ないところでしょう。
さて、これら山ほどあるCX-60のi-ACTIVSENSE各機能、すべてというわけにはいきませんが、その内容を街乗りで試してみました。
いよいよその使用感を述べて・・・といいたいところなのですが、i-ACTIVSENSEに19もの機能があり、ひとつひとつの説明だけで長くなってしまったので実践編は次回に。
(文・表:山口尚志 図版:マツダ)
【試乗車主要諸元】
■マツダCX-60 XD-HYBRID Exclusive Modern〔3CA-KH3R3P型・2022(令和4)年8月型・4WD・8AT・ロジウムホワイトプレミアムメタリック〕
★メーカーオプション
・ドライバー・パーソナライゼーション・システムパッケージ 5万5000円(消費税込み)
・パノラマサンルーフ 12万1000円(同)
・ロジウムホワイトプレミアムメタリック特別塗装色 5万5000円(同)
●全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm ●ホイールベース:2870mm ●トレッド 前/後:1640/1645mm ●最低地上高:180mm ●車両重量:1940kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/50R20 ●エンジン:T3-VPTH型(水冷直列6気筒DOHC24バルブ直噴ターボ) ●総排気量:3283cc ●圧縮比:15.2 ●最高出力:254ps/3750rpm ●最大トルク:56.1kgm/1500~2400rpm ●燃料供給装置:電子式(コモンレール) ●燃料タンク容量:58L(軽油) ●モーター:MR型 ●最高出力:16.3ps/900rpm ●最大トルク:15.6kgm/200rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池 ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/21.2/22.4km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格:505万4500円(消費税込み・除くメーカーオプション)