新型プジョー・408の彫刻的なデザインとは? 徹底したディテールの積み重ねこそが魅力を生む【クルマはデザインだ】

■コンセプトカーの造形テーマを先取りしたエクステリアデザイン

ファストバックとクロスオーバーの融合として、セダン、ステーションワゴン、SUVの機能を併せ持つ。全高を1500ミリに抑えたことでハッチバックの佇まいも感じられる
ファストバックとクロスオーバーの融合として、セダン、ステーションワゴン、SUVの機能を併せ持つ。全高を1500ミリに抑えたことでハッチバックの佇まいも感じられる

2023年6月20日(火)、Stellantisジャパンは新型プジョー408を発表しました。

「解き放たれた新種」のコピーのとおり、セグメントやカテゴリーを越えたという新型のデザインの見所はどこにあるのか? さっそくエクステリアのスタイリングをチェックしてみましょう。


●彫刻的なラインや面による魅力的なデザイン

「解き放たれた新種」とは何かといえば、ファストバックとクロスオーバーを融合したボディであり、セダンとステーションワゴン、そしてSUVの機能を持ち合わせたことを示しています。ただ、ご存知のとおり、同様のアプローチはシトロエンがC5 Xで、トヨタがクラウンクロスオーバーで実践中です。

その中で、4700mmの全長はライバルより若干短く、CとDセグメントの中間であることと、クラウンクロスオーバーより40mm低い1500mmの全高により、ハッチバック的な趣を持つことが408の特徴です。

そして、スタイリング上での差別化を図っているのが、プジョーが掲げるデザインテーマ「Allure(アリュール)=魅力、魅惑」でしょう。

特徴的なフレームレスグリルにより、ボディとの一体感が強まったフロント。セイバーランプが伸びるエアディフレクターの大きな開口部も特徴のひとつ
特徴的なフレームレスグリルにより、ボディとの一体感が強まったフロント。セイバーランプが伸びるエアディフレクターの大きな開口部も特徴のひとつ

C5 Xやクラウンクロスオーバーが、比較的シンプルで滑らかな面で構成されているのに対し、408では彫刻的なラインや面により、徹底してディテールにこだわっているのです。

具体的には、2025年以降のBEVを示したコンセプトカー「INCEPTION CONCEPT」のデザインをいち早く反映した造形です。

フロントから見て行くと、308からさらに進化したフレームレスグリルにまず注目です。細かいドット表現はプジョーならではですが、ボディとの一体感を求める手法はレクサスのスピンドルボディにも近く、もしかしたら世界的なトレンド?と思わせます。

ボンネットフード左右両端を大きく削ぐ表現は他シリーズでも共通のもの。過大なボリューム感を避け、シャープさが増す手法だ
ボンネットフード左右両端を大きく削ぐ表現は他シリーズでも共通のもの。過大なボリューム感を避け、シャープさが増す手法だ

ボンネットフードの左右両端をザックリ削ぐ表現は、他のシリーズと同様で文字どおり彫刻的。一方で、バンパー両端のエアディフレクターはどのシリーズよりも巨大な開口を持ち、これはDセグメントに近いボディサイズと、SUV的な力強さを狙ったものと思えます。

●ディテールにこだわることで個性を生み出す

ボディサイドはさらに見所満載で、まず前後フェンダーには2008と同様の特徴的なY字形のラインが置かれています。

このラインはシャープな線で構成されますが、前後フェンダーを結ぶショルダーラインは柔らかで丸みがあるので、Aピラー下から始まるショルダーラインは、リアに向けてシャープ→丸み→シャープとウネるように変化しているのです。

前後フェンダーのY字ラインにより、ショルダーラインは複雑な軌跡を描く。ドア下部のアクセントラインの深さも見所
前後フェンダーのY字ラインにより、ショルダーラインは複雑な軌跡を描く。ドア下部のアクセントラインの深さも見所

また、ドア下部の大きな「エグり」は、ボディを薄く見せるアクセントとしてよく見られる手法ですが、PP素材のサイドシルを含めた立体造形が「ここまでやるか?」というくらい深く、やはりSUVとしての力強さを示そうとしたものと推測されます。

さらに、細かいところでは、ホイールアーチ外周の同心円のラインは、ボディ面のピークに合わせるよう、下半分でフッと消えています。2008では下まで円が描かれることで「パキッ」としたサイド面を作っていますが、408では、よりボディの柔らかさを強調したのでしょう。

下半分を大胆に削ぎ落としたリアパネル。ファストバックやハッチバックのような軽快さを感じさせる。リアランプはコンセプトカーを反映した形状だ
下半分を大胆に削ぎ落としたリアパネル。ファストバックやハッチバックのような軽快さを感じさせる。リアランプはコンセプトカーを強く反映した形状だ

リアに回ると、彫刻的どころか下半分をガバッと削ぎ落とした大胆な造形に驚きます。ここは、ファストバックやハッチバックのような軽快さを表現したものかと。

ちなみに、リアランプは冒頭のINCEPTION CONCEPTのエッセンスがより強く出ている部分です。

近年、いくつかのメーカーがシンプルなデザインに回帰している中、徹底してディテールにこだわる姿勢は、同じフランス勢のDSブランドに通じるものがあります。

いずれも細かな表現の中から「美」や「魅力」を生み出すことがテーマですが、正面からアートを掲げるところがお国柄といえそうです。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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