ホンダ「FCXクラリティ」生産開始。リース料月額は米・600ドル、日本・80万円と大きな差【今日は何の日?6月16日】

■FCXクラリティが日米でのリース販売に向けて生産開始

2008年にリース販売を始めたFCXクラリティ
2008年にリース販売を始めたFCXクラリティ

2008(平成20)年6月16日、ホンダの燃料電池車「FCXクラリティ」が生産を始めました。米国で7月から、日本では11月から始まるリース販売に向けての始動でした。

2005年に東京モーターショーでコンセプトモデルとして発表されていたホンダの燃料電池車は、3年後に市販化モデルの登場となったのです。


●前身にあたるホンダFCXは、2002年に米国でのリース販売を開始

FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle:燃料電池自動車)は、車載タンクに充填した水素と大気中の酸素を反応させて発電する燃料電池の電力をバッテリーに蓄え、モーターで走行します。排出されるのは原理的に水だけなので、究極の環境対応車と呼ばれています。

2003年にリース販売を始めたFCX
2003年にリース販売を始めたFCX

ホンダは1990年代から燃料電池車の開発を本格的に始め、1999年には「FCX」のベースとなる燃料電池車「FCX-V1」と「FCX-V2」を発表。その後、燃料電池スタックの高出力化や、蓄電システムに自社開発のウルトラキャパシタを採用するなどの改良を加え、米国と日本で公道試験を始めました。

2002年には、ホンダFCXが初めてEPA(米国環境保護庁)とCARB(カリフォルニア州大気資源局)の認定を取得。これにより米国での販売が認許され、2002年末にFCXはカリフォルニア州のロサンジェルス市庁と日本の中央官庁に納車されました。

その後、日米ともリース販売先を拡大し、2005年にはカリフォルニア州で個人向けのリース販売も開始したのです。

●進化したFCXクラリティが米国と日本でリース販売を開始

FCXクラリティの流線形フォルムのリアビュー
FCXクラリティの流線形フォルムのリアビュー

FCXを進化させたFCXクラリティは、次世代自動車にふさわしいスマートなスタイリングに変貌。新システムの特徴は、水素や空気を縦に流す小型・高効率“V Flow FCスタック”と、水素と空気の流路を波型形状にした“Wave流路セパレーター”です。

モーターの最高出力を78kWから100kWに向上させ、パワープラント全体の重量出力密度2倍、容積出力密度2.2倍によって、大幅な軽量コンパクト化と高出力化を達成。当時課題であった低温始動性についても、マイナス30度まで改善されました。

FCXクラリティの燃料電池システム
FCXクラリティの燃料電池システム

これらのシステムの改善と軽量化、優れた空力性能によって燃費は20%改善。また、水素タンク(圧力35MPa)は、156.6Lから171Lに増大して、効率向上と相まって航続距離は30%向上したのです。

このように大きく進化したFCXクラリティは、米国で2008年7月、日本は11月からのリース販売開始に向けて、2008年のこの日6月16日にラインオフされました。ちなみに、リース料は、米国は600ドル(約6.4万円)/月、日本は80万円/月と、日米で大きな差がありました。

●FCXクラリティはさらにクラリティFCへと進化するも現在生産は休止

2008年にリース販売を始めたFCXクラリティ
2008年にリース販売を始めたFCXクラリティ

2016年には、さらにFCXクラリティを進化させた「クラリティ・フューエルセル(FC)」のリース販売を開始。2014年からトヨタのFCEV「ミライ(MIRAI)」が市販化(個人向け販売)しているのに対して、クラリティFCは官公庁や企業へのリース販売でした。

2014年に登場したトヨタのMIRAI
2014年に登場したトヨタのMIRAI

この時点では、クラリティFCの販売価格は766万円(ミライは723.6万円、以下カッコ内はミライの数値)、FCスタック最高出力103kW (114kW)、タンク容量141L (122.4L)、航続距離750km (650km)と、クラリティFCはミライに対して価格は高いものの、航続距離で勝っています。

クラリティFCは個人向けのリース販売も始めましたが、2021年8月に生産を終了。一方のトヨタ「ミライ」は、2020年12月にモデルチェンジして継続的に進化を続けています。


ホンダは今年2023年2月の水素事業説明会で、来年2024年に「CR-V FCEV」を日本に投入することを発表しました。これは、カーボンニュートラルをBEVとFCEVで対応するというホンダの取り組みの表れですが、水素インフラの整備が早急に促進されていかないと、一般大衆の手の届くFCEVにはなかなかならないものですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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