スバル「インプレッサWRX」アクロポリスラリーで優勝、WRCで通算40勝目を飾る【今日は何の日?6月7日】

■第2世代インプレッサWRXがアクロポリスラリー5度目の制覇

インプレッサ WRXラリーカー(2004 プロトタイプ)
インプレッサ WRXラリーカー(2004 プロトタイプ)

2004(平成16)年6月7日、スバルのインプレッサWRXが第6戦のアクロポリスラリー(6月4日~6日)で優勝を飾り、日本ではこの日の朝に朗報が広まりました。

インプレッサWRXは、1994年からWRC(世界ラリー選手権)に参戦、1995年から3年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得するなどWRCを席巻。その後も優勝を重ねて、この優勝でWRC通算40勝目、アクロポリス5度目の制覇を果たしたのです。


●インプレッサの高性能グレードとしてインプレッサWRX誕生

インプレッサは、レオーネの後を継ぐ形で1992年にデビューしました。

2004年に登場したインプレッサセダンWRX
2004年に登場したインプレッサセダンWRX

ボディタイプは、4ドアセダンとスポーツセダンのWRX、5ドアのスポーツワゴンの3種。エンジンは、すべて水平対向4気筒エンジンで、2.0L DOHCターボ(EJ20型)とNA(無過給)SOHCの1.8L(EJ18型)、1.6L(EJ16型)、1.5L(EJ15型)の4機種で構成され、駆動方式は4WDとFFが用意されました。

人気となったインプレッサは、さらなるイメージ強化のため、1993年にインプレッサの高性能モデルWRXでWRC(世界ラリー選手権)への挑戦を決断。1990年からWRC参戦を果たしていたスバル・レガシィRSからのバトンを受け継ぐものでもありました。

そのベースとなったSTI(スバルテクニカルインターナショナル)を中心に手掛けたコンプリートカー「WRX-STi」を1994年1月に発売します。EJ20ターボエンジンのファインチューニングによって、最高出力250PS/最大トルク31.5kgmを達成しました。

●1990年代後半のWRCを席巻したインプレッサWRX

その後も、インプレッサWRXは頻繁にマイナーチェンジを繰り返し、ポテンシャルを高めてパワーアップを図りました。

インプレッサWRXと激戦を繰り広げた1995年にデビューしたランサーエボリューションIII
インプレッサWRXと激戦を繰り広げた1995年にデビューしたランサーエボリューションIII

その間、1994年からWRCに参戦したインプレッサWRXは、アクロポリスラリーを皮切りに、その年は3回の優勝、1995年は5回、1996年3回、1997年8回、1998年3回、1999年5回の優勝と、ライバルの三菱ランサーエボリューションとともに熾烈なトップ争いを行いながら、WRCという世界の舞台で圧倒的な強さを発揮します。

1995年~1997年の3年間、スバルはマニュファクチャラーズタイトルを3年連続で獲得するという偉業を成し遂げ、インプレッサは世界中のファンが憧れるスポーツモデルへと成長したのです。

熱烈なファンに応える形で、1998年にはインプレッサWRXの高性能モデル「インプレッサWRX 22B-STi」を発売。搭載されたEJ22改エンジンは、ボア径を大きくして排気量を2.2Lに拡大し、最高出力280PS/最大トルク37.0kgmを発揮するモンスターモデルでしたが、車両価格500万円の限定販売400台は、わずか2日で完売しました。

●通算5回の優勝を飾ったアクロポリスに強かったインプレッサWRX

2000年代に入るとインプレッサWRXは、シトロエンとフォードの躍進によってなかなか上位に絡めない展開が続きましたが、それでも年に複数回の優勝を果たします。

インプレッサ WRXラリーカー(2004 プロトタイプ)のリアビュー
インプレッサ WRXラリーカー(2004 プロトタイプ)のリアビュー

そして2004年、シリーズ第6戦アクロポリスラリーではWRC通算40回目の、アクロポリスラリーにおいては通算5度目の優勝を飾りました。

アクロポリスラリーは、ギリシャのパルテノン神殿付近からスタートする、砂利道が多く通称“悪路ポリス”と呼ばれている過酷なラリーで、スバル伝統の4WD制御が存分に発揮できるコース。インプレッサWRXのWRC快進撃も1994年のアクロポリスの初優勝から始まったのです。

その後、2005年のウェールズ・ラリーGBの優勝を最後に、通算で47回のWRC優勝という金字塔を打ち立てて、2008年をもってスバルのWRC挑戦は幕を閉じました。


スバルのWRC復帰を熱望する声は相変わらず多いですが、今のところ復帰の情報はありません。

現行のWRC参戦車両の「ラリー1」は、パワートレインが4気筒1.6Lターボのハイブリッドと規定されているものです。水平対向エンジンあってのスバル、と思われるほどのファンがいるスバルにとっては、この車両規則、有難味と面白みがないのかも…

ですが、スバルらしいモータースポーツチャレンジ精神と開発魂は、そうそうなくなるものではないでしょう。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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