メルセデス・ベンツ Sクラス電動SUV「EQS SUV」とセダンの「EQS」はここが違う!

■シームレスで美しいエクステリアとEV専用プラットフォームによる高効率パッケージング

メルセデス・ベンツは、SクラスのバッテリーEV(BEV)であるEQS、EQEをほぼ同時期に日本に上陸させています。

両モデルともにBEV専用プラットフォームを採用。低く地を這うようなスタイリングとウルトラスムーズといえる走りが美点で、BEVになってもメルセデスに期待される走り、快適性が高いレベルで確保されている印象を受けます。

メルセデス・ベンツEQS SUVが発表された
メルセデス・ベンツEQS SUVが発表された

BEVの最上級サルーンであるEQSに続き、2023年5月29日(月)に発売された「EQS SUV」はメルセデス初のBEV専用プラットフォームを使ったSUVモデル。

なお、ややこしいですが、内燃機関仕様の「GLS」はSUVのSクラス。「EQS SUV」は文字どおり、EQSのSUV版であり、Sクラスの電動SUVともいえます。

新型EQS SUVのリヤビュー
新型EQS SUVのリヤビュー

「EQS SUV」は、2つの永久磁石モーターを備えた4WDモデルとすることで、SUVに期待される悪路走破性も確保され、「OFFROAD」モードも標準で用意されています。

BEVでありながら3列7人乗りを実現し、EVでも多人数が可能。EV専用プラットフォームを活かし、高効率パッケージングと美しいエクステリアを備え、Cd値0.26という空力性能の高さも自慢です。さらに、NVH(騒音、振動、ハーシュネス)対策も念入りにすることで、高い静粛性を達成しています。

エクステリアは、最近のメルセデス流である「官能的純粋」と呼ばれるデザイン言語に基づいていて、つなぎ目の少ないシームレスで流れるようなボディ面とフォルムが目を惹きます。さらに、BEVモデルの特徴である「ブラックパネル」ユニットに統合されたフロントマスクも、ひと目でBEVと分かる特徴。

横基調のライトでつながった左右のヘッドライト、ディープブラックのフロントグリルが先進性を静観なイメージを醸し出しています。

新型EQS SUVの外観
新型EQS SUVの外観

EQS SUVのデイタイムランニングライトは、3つの小さな三角形で構成されていて、EQSとの違いを演出。さらに、バックライト付の光モジュールが採用されているほか、ブラックパネルユニット裏側に超音波センサーやカメラ、レーダーなどのセンサーを配置することで、カバーの役割を果たしているブラックパネルグリルも外見から、ノイズとなる要素を注ぎ落としています。

また、シームレスデザインが際立つフロントセクションは、パネルの継ぎ目が描く線が少なく、オーバーラップ型のボンネットを採用。ボンネットのパワードームが、EQS SUVならではの力強さを演出しています。

新型EQS SUVのフロントマスク
新型EQS SUVのフロントマスク

EQSと同様に、ドアハンドルは、格納式のシームレスドアハンドルを標準装備。左フェンダー側面のサービスフラップは、ウォッシャー液補充用で、ボンネットは、室内用エアフィルター交換などのメンテナンス目的の場合にサービス工場でのみ開閉可能。通常のボンネットのように室内にオープナーは用意されていません。

リヤビューは、LEDリヤコンビネーションランプが印象的で、その内部は、曲線的な螺旋構造になっていて、立体的に見えるように工夫されています。フロントと同様に、リヤにも横基調のライトバンド(光の帯)が配置され、メルセデスのEQモデルであることが分かるようになっています。

●先進的なキャビンとフレキシブルなシートアレンジ

インテリアは、EQSと同様に圧倒的といえる先進性を抱かせるデジタル化が図られています。3枚の高精細パネル(コックピットディスプレイ、有機ELメディアディスプレイ、助手席前の有機ELフロントディスプレイ)からなる「MBUXハイパースクリーン」は圧巻です。同スクリーンは、1枚のガラスで覆われていて、細いシルバーのフレーム、エアアウトレットを組み込んだルーバー状のトリムなどがスクリーンを囲んでいます。

新型EQS SUVのインテリア
新型EQS SUVのインテリア

さらに、SUV化によりフロアからセンターコンソールまでの高さがEQS(セダン)よりも高くなったことで、上質なトレーを備えるセンターコンソール下収納が拡大するなど、前席まわりの使い勝手もさらに磨かれています。

新型EQS SUVのインパネ
新型EQS SUVのインパネ

キャビンで特徴的なのが、セカンドシートです。前後130mmの電動スライド機能を標準装備。広々した足元スペースを確保できるほか、背もたれには電動リクライニング機能も用意されます。なお、2列目のスイッチも左右ドアに配置されています。

また、セカンドシートのバックレストは「40:20:40」の分割可倒式で、電動調整式により荷室容量は645Lから最大880Lまで拡張できるフレキシビリティも美点です。5人乗車時でもゴルフバッグを4つまで積載できることが可能だそう。さらに、セカンドシートを倒せば最大2100Lもの荷室容量を生み出すことができます。なお、3列フル乗車時でも、195Lの容量を確保。

●航続距離は589km~593km

パワートレーンは、電動パワートレインの「eATS」が搭載され、モーターは永久磁石同期モーター(PSM)になります。永久磁石同期モーターは、ACモーターのローター(回転子)に永久磁石が装着され、ローターには通電の必要がありません。モーターは三相の巻線を2つ備える六相式で、強力なアウトプットを実現。

新型EQS SUVのフロントシート
新型EQS SUVのフロントシート

「EQS 450 4MATIC SUV」の最高出力は 265kW(360PS)、最大トルクは800Nmを発揮。「EQS 580 4MATIC SUV Sports」は、最高出力400kW(544PS)、最大トルクは858Nmに達します。こうした動力性能を実現しながらWLTC モードによる航続距離可能距離は、「EQS 450 4MATIC SUV」が593km、「EQS 580 4MATIC SUV Sports」は589kmに達しています。

また、4WDの「4MATIC」は、トルクシフト機能によってフロントとリヤのモーター間で駆動トルクの緻密な連続可変配分が行われるのが特色になっています。前後の「eATS」は、相互独立に調整可能で、前後輪に必要な駆動トルクを毎分1万回もの頻度でチェックし、必要に応じて前後の駆動力配分が最適化されます。電気信号による制御(オンデマンド式)であるため、機械式の4WDシステムに比べてハイレスポンスで、高効率性も兼ね備えています。

新型EQS SUVの2列目と3列目
新型EQS SUVの2列目と3列目

EQS SUV のリチウムイオンバッテリーは、107.8kWhもの大容量に達しています。充電は6.0kWまでの交流普通充電、150kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応。

なお、急速充電の目安としては、22.5度の室内での充電時間(10~80%)は100分(30分の充電の場合は、10〜30%まで完了)。90kWタイプでは、18.5度の室内での充電時間(10~80%)は、53分(30分の充電の場合は10~49%まで完了)。150kWタイプは、19度の室内で充電時間(10~80%)は、49分(30分の充電の場合は、10~58%まで完了)だったそうです。いずれもメルセデス・ベンツ施設内の急速充電器を使った場合です。

●家庭の太陽光発電システムで発電した電気をEQS SUVにためられる

日本向けの特別機能として、EQS SUVから車外に電力を供給できる双方向充電が可能です。家庭の太陽光発電システムで発電した電気をためることができるほか、停電した場合などに、電気を家庭に送る予備電源としても利用できます。なお、給電は「MBUX」の設定画面よりバッテリー残容量10〜50%まで10%単位で設定可能です。

新型EQS SUVの最大時のラゲッジスペース
新型EQS SUVの最大時のラゲッジスペース

そのほか、メルセデス・ベンツ最新の先進安全装備が完備されるのをはじめ、「3年間無料、以降最長7年間継続されるサービス」のテレマティクスサービス「Mercedes me connect」、初めてのEVでも安心の充電サービス「Mercedes me Charge」なども用意されています。

「Mercedes me Charge」は、新車購入から5年間または10万kmのいずれか早い方まで、一般保証修理/定期メンテナンス(点検整備の作業工賃・交換部品)/24時間ツーリングサポートが無償で提供される保証プログラム「EQケア」が付いています。

高電圧バッテリーも10年または25万km以内で、サービス工場の診断機により高電圧バッテリー残容量が70%に満たないと診断された場合の保証を付帯。さらに、納車時に車載される専用の充電カードを使い、全国にある約20,000基の提携充電器も利用できます。申し込みから1年間は、月額基本料金および充電料金が無料になります。

新型EQS SUVのラゲッジスペース
新型EQS SUVのラゲッジスペース

5mを超える全長、2m超の全幅、そして価格の面でも乗り手を選ぶことは間違いありませんが、1542万円〜1999万円という価格設定は、その内容から考えると適正(リーズナブル)といえるかもしれません。

●ボディサイズ(EQS 580 4MATIC SUV Sports):全長5135×全幅2035×全高1725mm

●価格
「EQS 450 4MATIC SUV」:1542万円
「EQS 580 4MATIC SUV Sports」:1999万円

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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