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■知性と感情を盛り込むメルセデスデザイン
3月16日、メルセデス・ベンツのミドルクラスSUVであるGLCの2代目が国内発表されました。
グローバルで260万台が販売されたベストセラーモデルらしく、基本的なスタイリングはキープコンセプトとされました。
では新型のデザインの見所はどこにあるのか? あらためてチェックしてみました。
●キープコンセプトながらより滑らかなボディに
まずサイズを見ると、全長が50mm、ホイールベースが15mm伸長しましたが、1890mmの全幅は変わっておらず、このあたりからもキープコンセプトの意図が感じられます。
ただし、そこへ投入されたのは、メルセデスデザインの基本思想である「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋)」の最新の解釈です。
ランプとグリルが離れていた先代のフロントは、そこに段差がありましたが、両者が一体となった新型は面一化が進み、よりスムーズな顔付きに変化しました
フロントライトは、最近のメルセデスらしくスリムな形状ですが、それでも先代の「丸み」をしっかり残しています。
最近のメルセデスは、バンパー両端の巨大なエアディフレクターが特徴で、中には「これ大きすぎじゃ?」と思えるケースも。
新しいGLCも、とくにAMGラインでは結構な大きさですが、開口部内にフィンを施した別パネルを組み合わせたことで、懸案の「巨大な穴」感は払拭されています。
先代のサイドビューは、セダンに準じてウインドウ下端のラインがリアに向けて降下しており、そのため逆台形となったリアピラーが独特のアンバランスさを生んでいました。その点、ウインドウ後端を持ち上げた新型のピラーはスリムになり、サイドビュー全体に軽快さを与えています。
ボディ面は、先代の強いキャラクターラインが消え、最近のメルセデスらしく滑らかな表情へ進化し、感情とともに知性を感じさせます。
もうひとつ、前後のフェンダー上部にブリスター風のラインが引かれたのがトピックです。これはSUVとしての力強さ、走破性を表現する最低限のアクセントだと思えますが、ちょっと意外なところではあります。
●もっとシンプルに、よりグッドバランスに
先代は、リアハッチドアの中央部が突き出し、上下2段構造のような表情でしたが、これがボディサイド同様、ツルッと滑らかな面になったのが新型の特徴です。そこに、水平基調のドッシリとしたバンパーを組み合わせて踏ん張り感を出しています。
また、先代のリアランプは、文字どおり一世代前の厚みのある積層的なグラフィックでしたが、これも最近の同社らしいスリムで柔らかな形状に一新され、滑らかな面にうまく溶け込んでいます。ただ、その分SUVとしては若干の弱さを感じてしまうかもしれません。
さて、先代はミドルクラスSUVの王道的なプロポーションでありつつ、先のリアピラーやサイド面のキャラクターラインなど、どこか「引っかかり」のあるクセのようなものがありました。
その点、新型は「センシュアル・ピュリティ」の第2章として、各パートの洗練度はもちろん、全体の佇まいもよりバランスのよさを感じさせる変化を見せました。
「最近のメルセデスはどのモデルを見ても皆同じ」なんて声も聞かれますが、一連の純粋な表現が退屈さに陥らず、普遍性を感じさせる次元まで昇華できるのか? 知性と感情を表現した新しいGLCには、その回答の一端を見ることができるようです。