ヤマハがライダーの感情を可視化する「感情センシングアプリ」を開発。バイクライフの楽しさアップや安全運転支援に活用

■心電データをスマホアプリに表示する技術を開発

クルマはもちろん、バイクのライディングも、運転する人の感情が安全などに大きく影響するといわれています。

特に、2輪で走るバイクでは、常に体で車体のバランスを取りながら走る必要がありますが、精神的にリラックスした状態でないと、必要以上に力が入りすぎたりして危険。上手く走れず転倒したり、最悪の場合は思わぬ事故に遭遇してしまうこともあります。

自分が気持ちよく走れたツーリングロードも分かる(写真はイメージ)
自分が気持ちよく走れたツーリングロードも分かる(写真はイメージ)

そんなライディングにとって大切なライダーの感情を、スマートフォンのアプリに表示できる「感情センシングアプリ」をヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が開発したと発表しました。

ツーリング先で美しい景観を眺めながら気持ちよく走っているときや、逆に渋滞路でイライラしている時の心理状態などを可視化し、バイクライフの楽しさを増幅させたり、安全運転支援に役立てるといいます。

では、実際に、このアプリはどういったものなのでしょうか?

●ライダーの感情をリアルタイムでスマホに表示

今回発表された「感情センシングアプリ」は、ヤマハと横浜国立大学 島圭介准教授の研究室、ミルウスとの共同研究により開発した「感情推定技術」を応用したものです。

ちなみに、横浜国立大学 島准教授の研究室は、ヒトが行うさまざまな運動メカニズムの原理解明と、それを基にAI(人工知能)を搭載した知能ロボット技術の研究などを行っていることで知られています。

また、ミルウスは、北海道大学発のベンチャー企業で、多様なバイタルセンサで計測したヒトの生体データを、医療や健康情報などに活用するためのプラットフォームなどを提供しています。

「感情センシングアプリ」の表示例。左は緊張を示す渋滞道路、右は感動を示すツーリングロードを表示
「感情センシングアプリ」の表示例。左は緊張を示す渋滞道路、右は感動を示すツーリングロードを表示

こうした企業や大学、そしてヤマハの産学共創で開発したのが、心電データをもとにヒトの感情を推定するという感情推定技術と、それを応用したスマートフォン用のアプリです。

主な特徴は、身体に装着したベルト型センサーで心電データを計測し、喜びやリラックスした状態、緊張など、ライダーの感情をリアルタイムでスマートフォンに表示できることです。

しかも、解析したデータは地図上にプロットすることが可能。たとえば、ツーリング先で、絶景を眺めながら気持ちよく走った場合、実際のルート上に、その時の感動や快適感などの具合を可視化することができます。逆に、渋滞路でイライラや緊張、眠気などを感じた場合、実際にルート上のどの区間で味わったのかが分かるようになっています。

渋滞路でイライラや緊張したこともアプリで分かる(写真はイメージ)
渋滞路でイライラや緊張したこともアプリで分かる(写真はイメージ)

つまり、このアプリは、過去に走ったさまざまな道の心身状態を時系列でフィードバックすることで、ライダーがライディング中の行動を判断する上での参考にできるものだといえます。

確かに、このアプリがあれば、時間や場所を選ばず、好きな時に自分のライディングに関し、いろんな回想や反省などもできますよね。

たとえば、「あの時のツーリングで走った、あのワンディングはとても楽しかったな〜。また行きたいな」とか、「あの時、渋滞でイライラしてしまったおかげで、危うく転びそうになったな。もっと落ち着いて走ろう」といった感じ。

自分がどんな感情で走ったのかが、実際のルート上に表示されるスマホアプリ(写真はイメージ)
自分がどんな感情で走ったのかが、実際のルート上に表示されるスマホアプリ(写真はイメージ)

また、「楽しい」とか「気持ちいい」といった感情で走っているときは、心理的にもリラックスしていて、体にもムダな力が入っていない状態であることが推定できます。そこで、「あの時のあんな感じでいつも走れれば、もっと楽しく安全に走れるだろうな」といった、スキルアップの参考にもなりそうです。

なお、ヤマハでは、この「感情センシングアプリ」の実証実験を、2023年後半より開始する予定。

実用化の時期や具体的な提供方法などについては未発表ですが、ライディングをもっと楽しくしたり、安全に走るための参考となるアプリだけに、今後の動向に注目です。

(文:平塚 直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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