マセラティ新型SUV「グレカーレ」のデザインに見る新しさ。「MC20」「クアトロポルテ」デザインに通じる部分は?【クルマはデザインだ】

■新型はマセラティの新世代デザイン第2弾!

マセラティのSUV第2弾となるグレカーレ。先行したレヴァンテよりひと回りコンパクトだが、流麗で伸びやかなボディが自慢
マセラティのSUV第2弾となるグレカーレ。先行したレヴァンテよりひと回りコンパクトだが、流麗で伸びやかなボディが自慢

2022年春に発表されたマセラティの新型車・グレカーレのデリバリーがようやく始まりました。レヴァンテに続く同社のSUV第2弾として、すでに「スタイリッシュ!」という声が多く聞かれます。

そこで、そのエクステリアデザインについて、あらためてチェックしてみたいと思います。

●低く構えた顔付きはスーパーカー譲り

先行したレヴァンテとの比較では、160mm短く、11mm狭く、23mm低い(GT)と、ひと回り小さなボディですが、コンパクトになったというよりは、スリムで伸びやかになったという印象が強いと言えそうです。そこにはどんな理由があるのでしょうか?

MC20から始まった新世代のマセラティデザイン。独特の顔付がグレカーレにも反映されている
MC20から始まった新世代のマセラティデザイン。独特の顔付きがグレカーレにも反映されている

まずフロントを見ると、MC20から始まったとされる新世代のビジュアルアイディンティティに気が付きます。ひとつは低い位置に置かれたグリルですが、これは単に低くなっただけでなく、開口面積を減らし、前へ突き出すことで前進感を強めているのが特徴です。

もうひとつは、外側に配されたランプ。いまどきSUVをデザインしようとすれば、大概はレヴァンテのようにグリルの両端から切れ長のランプを置きたくなるものですが、新世代デザインではMC20同様、独立したランプが左右のフェンダー部まで離されています。

左右両端に置かれたランプと低いグリルが新世代デザインの証。グリル類の丁寧な面取りが柔らかい表情を作る
左右両端に置かれたランプと低いグリルが新世代デザインの証。グリル類の丁寧な面取りが柔らかい表情を作る

これによってフロントセクション全体が低くなり、厚みのあるレヴァンテの顔との違いが明快になりました。

また、丸いランプ形状や丁寧に面取りされたグリル、エアディフレクターにより、フロント全体が柔らかな表情になっているのはMC20とも異なるところです。

●虚飾を排したシンプルかつ流麗なボディ

サイドでは、リアへ向けて下るルーフラインと上下に薄いグラフィックが、一般的なSUVというよりクーペ的なスリムさを感じさせます。さらに、寝かされたリアハッチによってリアピラーのボリュームが小さくなり、ここでもクーペ的な軽快さが表れています。

豊かなショルダーラインはクアトロポルテがモチーフ。サイドウインドウやリアピラーは意外なほど軽快
豊かなショルダーラインはクアトロポルテがモチーフ。サイドウインドウやリアピラーは意外なほど軽快

一方、前後フェンダー間のカーブを描いたショルダーラインは、ご存知クアトロポルテのそれを引用した表現。これはレヴァンテも同じですが、リアフェンダーに強いキャラクターラインがない分、より流麗かつ滑らかで、結果ボディに伸びやかさが生まれているのです。

同じくサイド面では、例のトリプルサイドエアベントが特徴とされていますが、それだけでなく電子スイッチ式のドアハンドルもこのエアベントと意匠を合わせており、先の流麗なショルダーラインを邪魔していない点にも注目です。

ジウジアーロによる3200GTがモチーフのリアランプ
ジウジアーロによる3200GTがモチーフのリアランプ。リアビュー全体はシンプルかつ軽快さを感じさせる

リアでは、ジウジアーロによる3200GTをオマージュした、ブーメラン型のランプがウリのようです。なぜいま3200GT?と思ったのですが、あらためて見ると、クアトロポルテやレヴァンテなどでもリアランプの両端は若干下向きで、これが突然の表現ではなかったことに気付きます。

今回、マセラティはこのグレカーレのデザインを「コスモポリタン」であり、「タイムレス」とも謳っています。より伝統や個性を求めるイタリア車としては意外ですが、イタリアンな美しさを突き詰めることで、ある種の普遍性を得ることができるという趣旨なのかもしれません。

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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