■東京消防庁からの移動で、昭和レトロな消防車が走行可能な状態によみがえる
伊藤かずえさんのシーマをレストアした日産が話題ですが、これに限らず、さらに力強く古いクルマを再生させる試みが、日本の自動車メーカーでも見られるようになっています。
このほど、東京消防庁と日産は、東京消防庁が長年保管してきた「ニッサン180型消防ポンプ自動車」を走行可能な状態にする再生を行ったと明らかにしました。
「ニッサン180型消防ポンプ自動車」は、本格的な国産消防ポンプ自動車の第1号といわれています。
同車両は、2023年6月15日(木)から18日(日)に開催される「東京国際消防防災展 2023」で展示されます。イベントの初日には、最後の仕上げ作業となる「ホーン取り付け」とあわせてお披露目されます。
「ニッサン180型消防ポンプ自動車」は、1941(昭和16)年に大田区の蒲田消防署に配置され、戦時中は空襲火災の消火活動で活躍しました。
その後、1945(昭和20)年5月に高輪消防署(二本榎出張所の前身)に配置され、東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年10月まで使用された後、高輪消防署二本榎出張所で、広報車両の1台として展示されてきました。
今回の再生は、日産の社内活動であり、歴代の日産車の再生に取り組む「日産名車再生クラブ」に所属する4名のエンジニアが担当。
当初の再生目標であった「走る、曲がる、止まる」というクルマの基本性能だけでなく、動かなくなっていた方向指示器やワイパー、点灯しなくなっていた赤色灯など、車両全体の電気系統の再生も含まれています。
同クラブは、同社が誇る名車再生(レストア)を目指し、「往年のクルマをきちんと動く形で保存したい、当時の最高レベルの技術を学びたい」という想いを持つ所属メンバーが、様々なレストアに取り組んでいます。
「ニッサン180型消防ポンプ自動車」の再生は、「走行ができなくなっているニッサン180型消防ポンプ自動車を再び走らせることができないか?」という、東京消防庁企画調整部広報課からの相談を受けて検討が開始されました。
東京消防庁 企画調整部広報課 消防司令の松村龍也氏は、「2023年は、1923(大正12)年9月に発生した関東大震災から100年目を迎える節目の年です。この年に歴史ある車両が再び走り出せるようになったことを大変うれしく思います。多くの皆さまに愛される車両として様々な場所で活用し、都民の防災意識の向上に貢献することを願っています」とコメント。
再生に携わった「日産名車再生クラブ」の有志4人は、当時の塗装や凹みなどは活かしつつ、走行できるようにするため、約2年にわたって数々の作業を行い、再生を果たしたそうです。
リーダーを務めた日産自動車のエンジニアである河合俊明氏は、「社内でも戦前の日産車に触れる機会が少ない中で、戦火の中で活躍し、戦後も地域の安全を守ってきた歴史的な車両の再生を行う今回の取り組みは、大変貴重な体験でした。このクルマに再び息吹を与えるべく、社内に残っていた整備要領書を参考にしつつ、現場で現車と向き合いました。当時の活躍に想いを馳せつつ、メンバーとも楽しみながら再生作業に取り組もことができました」と、貴重な経験について振り返っています。
見事によみがえった「ニッサン180型消防ポンプ自動車」は、「東京国際消防防災展 2023」での展示後、東京消防庁の広報車両として保管され、今後は同庁によるイベントなどでも活用される予定になっています。
■「ニッサン180型消防ポンプ自動車」お披露目イベント
●日時:2023年6月15日(木) 12:00~12:30
●場所:東京国際消防防災展 2023 屋外展示会場(東京ビッグサイト)
(塚田 勝弘)