開発中の「Advanced Motorcycle Stability Assist System」は、オートバイで誰もが人機一体感を楽しめるようになる【ヤマハ発動機ニュースレター】

■将来的には、自転車などの幅広いパーソナルモビリティへの搭載も

二輪車(オートバイ)が自律走行している動画を見たことがあるでしょうか。ヤマハ発動機が開発中の「Advanced Motorcycle Stability Assist System(AMSAS)」は、いわゆる自動運転ではなく、文字どおり、ライダーの走行をアシストする二輪車安定化システム。

技術開発統括部で安全戦略を担当する坂本さん(左)と、「AMSAS」の開発プロジェクトリーダー鈴木さん
技術開発統括部で安全戦略を担当する坂本さん(左)、「AMSAS」の開発プロジェクトリーダー鈴木さん(右)

ヤマハ発動機の広報グループが発進している「ニュースレター」。今回は、2022年に発表された二輪車安定化システム「Advanced Motorcycle Stability Assist System(AMSAS)」がテーマになっています。

同社ではこれまでヒト型自律ライディングロボットの「MOTOBOT」をはじめ、AIと自立機構を備えた「MOTOROiD」を開発してきました。

二輪車安定化システムの「AMSAS」は、駆動力と操舵力の制御を使い、低速走行時に車両姿勢を安定化させる技術。駆動と操舵のアクチュエーターによる車体姿勢の安定化を目指して開発されています。

前輪に装着されたモーターが、ほうきを逆さにして手のひらでバランスをとる「倒立振り子」の原理で静止時の自立を実現。操舵軸に取り付けられたアクチュエーターが、ペダルを漕がずに自転車をスタンディングさせる時のような、細かいハンドル操作を担って安定感を高めています。

発進時から時速5km/h程度までの運転技量を要する速度域で運転を補助する「AMSAS」
「AMSAS」は、発進時から5km/h程度までの運転技量を要する速度域で運転を補助

二輪車が関連する事故は、主にライダーの認知ミスが10%、判断ミスが17%、操作ミスが5%とされているそうです。また、二輪車事故のうち約70%が事故につながるきっかけが起きてから2秒以内に発生しているというデータもあります。

二輪車の事故原因の分析から、同社では、運転支援技術の開発を「危険予知」「被害防止・防衛」「緊急回避」「被害軽減」の4つの視点で推進。

開発プロジェクトリーダーを務める鈴木明敏さんは、「AMSAS」の狙いについて事故軽減を挙げています。「AMSAS」最大の特徴は、骨格となるフレームに手を加えることなく、既存車両への適用性の高い構造でアプローチしていることだそうです。現在、開発されているプロトモデルも市販車の「YZF-R25」がベース。6軸センサーと駆動および操舵アクチュエーターが搭載されて研究開発が進められています。

下の動画からも分かるように、開発中の「AMSAS」装着車は、ライダーの技量に関わらず、歩く程度の低速で転ばずに走行できます。

鈴木さんは、「AMSASの研究は、ヒト型自律ライディングロボットのMOTOBOT、AIと自立機構を備えたMOTOROiD開発で獲得した知見や技術を、世界中のライダーに届けたいというテーマでスタートしました」とその狙いを語っています。

AMSAS開発の基点となったのは、自立機構を備えた「MOTOROiD」
AMSAS開発の基点になった自立機構を備える「MOTOROiD」

安全戦略を担当する坂本潤さんは、「AMSASが目指すのは、ライダーが操作に集中できる環境を整え、誰もが人機一体感を楽しめるようになることです。操作の技量が求められる低速での運転を補助することで、安心感をベースにしたヤマハ発動機らしい楽しさを幅広いライダーに届けたいです」と、同システムにかける想いを披露しています。「AMSAS」は、運転支援技術の核として、すでに実用化されている世界初の「レーダー連携ユニファイドブレーキシステム」など、ほかのデバイスとの組み合わせも想定され、開発が進められているそうです。

鈴木さんは、「私たちが目指す、世界中のライダーにAMSASが生み出す価値を届けるというゴールに対して、基礎技術を確立した現在はちょうど折り返し地点です。モーターサイクルだけでなく自転車など、より幅広いパーソナルモビリティに応用できる技術として育てていきたいです」と高い目標を掲げています。

今後は、さらに各デバイスのコンパクト化などを進めていくことで、課題をクリアしていく構えです。

(塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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