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■晴のち豪雨そして雹。天候変化の激しかった開幕戦岡山
スーパーGTの2023シーズン開幕戦、2023 AUTOBACS SUPER GT開幕戦 OKAYAMA GT 300km RACE の決勝レースが4月16日(日)に岡山県の岡山国際サーキットで行われました。
前日の予選では、大雨により予選での走行時間が変更になったり、GT300の予選Q1・A組が赤旗で中断されるなど、かなり天候に左右された展開でしたが、決勝のスタート時は快晴とはいかないまでも、晴れ間が広がる天候でした。
しかし、スタートに先立って行われた、岡山県警のパトカー先導によるパレードランの最中に雨がぱらつき始めます。ただし、レインタイヤに履き替えるほどの雨ではなく、そのままの状態でスタートが切られます。
レース序盤はポールポジションの23号車 MOTUL AUTECH Zと予選2位の3号車 Niterra MOTUL Zが後続を引き離します。しかし、予選8番手の100号車 STANLEY NSX-GTが猛烈な追い上げを見せて3番手に浮上。さらにNiterra MOTUL Zとの差を詰め、7周目にはついに背後に貼りついていきます。
この上位陣の白熱した展開に、まさに水を差したのが強まってきた雨脚。
15周目には雹を伴う豪雨に。このタイミングで、MOTUL AUTECH Zがピットインのうえレインタイヤにチェンジ。その後も各車が続々とピットインしていきます。この16周目にGT300のマシンがコースアウトでフルコースイエロー(FCY)。その直後にGT300の2台のGT-Rがそれぞれトラブルでストップしてしまい、この処理のためにセーフティーカー(SC)が導入されることに。
このFCYのタイミングでピット作業を行ってしまったのが、STANLEY NSX-GT。微妙なタイミングではありましたがペナルティとなり、その後、上位陣から脱落してしまいます。
SCが導入されてしばらくすると雨は弱まっていき、空には晴れ間も垣間見れるほどになります。そして19周目にはピットがオープンとなってNiterra MOTUL Z、19号車 WedsSport ADVAN GR Supra、1号車 MARELLI IMPUL Zがタイヤ交換に入ります。この時Niterra MOTUL Zは給油作業も行い、その後に訪れるドライバー交代でのピットインの際の作業時間を短くしておこうという作戦をとっています。
●晴れ間後の再豪雨が呼び起こす激しすぎる展開
スリック、レインとタイヤ交換などでピットを出たり入ったりとなり、6位まで順位を落としたMOTUL AUTECH Zは、路面の乾いたところで一気に追い上げ、36周目にはトップの36号車 au TOM’S GR Supraに追いつき、41周目の1コーナーで抜き去って再びトップに立ちます。そのくらいの周回数となるとドライバー交代を伴うピットインを行うチームも増えてきます。
最初のSCでのタイヤ交換時にピットインし、ピットアウトのタイミングで一時的にピットクローズされたことで、13番手まで下がったNiterra MOTUL Zが、44周目にドライバー交代を行います。給油をすでに終わらせていたために、かなり短い作業時間で千代勝正選手から高星明誠選手に交代しコースに復帰。
トップのMOTUL AUTECH Zは46周目にピットインし、スリックタイヤへの交換とドライバー交代を行い、au TOM’S GR Supraの前でコースに復帰。しかし47周を終えた時点で、MOTUL AUTECH Zと、追うau TOM’S GR Supraの差は、わずか0.738秒。
48周目に入ったところでGT300車両のコースアウトにより再びFCYとなり、またここで再び激しい雨が降り始めます。そこでMOTUL AUTECH ZはFCY解除の50周目にすかさずピットイン! ウエットタイヤへの交換を行います。これで6番手に後退はしましたが、雨の状況次第では有利にもなります。
その直後に2台のGT300車両が絡むアクシデントが発生し、2度目のSCが導入。さらにSCランの最中に雨に加えて、近くで落雷を確認したためにレースは55周目に入ったところで赤旗、レース中断となります。
午後3時35分にSCの先導で再開されます。雨がかなり強くなったために、スリックタイヤで走行を強いられていた各チームのマシンがタイヤ交換で一斉にピットインしたため、MOTUL AUTECH Zがトップに返り咲きます。そんな中、au TOM’S GR Supraがピット作業のミスで左フロントタイヤが脱落。2コーナー外側でストップ。
これでNiterra MOTUL Zが再び2番手に返り咲き、3番手には予選7位ながらシャシー交換により序盤にペナルティストップ5秒を行って後方に沈んだ8号車 ARTA MUGEN NSX-GTが浮上。
その後61周目に入ったところで、GT300車両2台がコースアウトしてコース上で停止。この回収作業が大雨の中で行われるために、再び赤旗が提示されてレースは中断します。
午後4時20分に再びSC先導で走行を再開しますが、62周を消化して63周目に入ったところでこの日3度目の赤旗が出され、これをもってレースを終了するとの決定がなされます。
とんでもなく順位の変動したレースとなりましたが23号車 MOTUL AUTECH Zが、結果的には今季初戦でポール・トゥ・ウイン。また、この優勝で松田次生選手自身が持つGT500クラスの最多勝記録を24勝に伸ばしました。2位は3号車 Niterra MOTUL Z、3位には8号車 ARTA MUGEN NSX-GTが入りました。
また周回数によるポイントの問題ですが、今回のレースは優勝マシンが61周を走行。フルポイント付与の下限は既定周回数の75%となり、岡山戦で言えば84周の75%は61.5周ですが、周回数に小数点以下はあり得ませんので切り捨てとなります。そのため61周でフルポイントの要件を満たすということで、優勝の23号車 MOTUL AUTECH Zはポールポジションポイントを含めて21ポイントが付与されることとなりました。
天候の目まぐるしく変わる中、予選、決勝ともに赤い「Z」が1、2フィニッシュとなった開幕戦岡山。次戦の富士ではNISSAN Zの強さが続くのか? それともお膝元のトヨタ勢が巻き返すのか? ロングディスタンスな450kmで競われる富士戦も見逃せません。
●スーパーGT2023開幕戦 岡山 GT500決勝結果
順位 ゼッケン 車名 ドライバー 周回数
1 23 MOTUL AUTECH Z 松田次生、ロニー・クインタレッリ 61
2 3 Niterra MOTUL Z 千代勝正、高星明誠 61
3 8 ARTA MUGEN NSX-GT 野尻智紀、大湯都史樹 61
4 14 ENEOS X PRIME GR Supra 大嶋和也、山下健太 61
5 8 ZENT CERUMO GR Supra 立川祐路、石浦宏明 61
61 MARELLI IMPUL Z 平峰一貴、ベルトラン・バゲット 61
7 17 Astemo NSX-GT 塚越広大、松下信治 61
8 39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra 関口雄飛、中山雄一 61
9 19 WedsSport ADVAN GR Supra 国本雄資、阪口晴南 61
10 64 Modulo NSX-GT 伊沢拓也、太田格之進 61
11 6 ARTA MUGEN NSX-GT 福住仁嶺、大津弘樹 61
12 100 STANLEY NSX-GT 山本 尚貴、牧野 任祐 60
13 37 Deloitte TOM’S GR Supra 笹原右京、ジュリアーノ・アレジ 60
14 24 リアライズコーポレーション ADVAN Z 佐々木大樹、平手晃平 59
15 36 au TOM’S GR Supra TOYOTA 坪井 翔、宮田莉朋 56
(写真:吉見 幸夫/文:松永 和浩)