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■水素の環境性能とロータリーの力強い走りの両立を狙った先進モデル
2009(平成21)年3月25日、マツダが水素ロータリーエンジン(RE)とモーターを組み合わせた「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」のリース販売を開始しました。基本的にCO2を排出しない水素の環境性能とREの力強い走りの両立が狙いです。
●水素とガソリンの両方で走行可能なRX-8ハイドロジェンREをリース販売開始
マツダは、唯一REを量産化したメーカーですが、古くから水素エンジンの開発にも積極的に取り組んでいます。2006年には、CO2を排出しない水素を燃料とするREを搭載した水素RE車「マツダRX-8ハイドロジェン(水素)RE」のリース販売を開始し、注目を集めました。
RX-8ベースのハイドロジェンREは、RENESIS REを使って通常のガソリン噴射に加えて、1ローターにつき2本のガスインジェクターを装着して水素も直接噴射できる“デュアルフューエルシステム”を採用。ガソリンでも水素でも走行可能で、運転席のスイッチで燃料を切り替えることが可能でした。
航続距離の短い水素エンジンの弱点をガソリンで補うことが狙いで、水素使用時の航続距離は100kmですが、ガソリンを使用すると549kmまで延びます。リース販売先は、主にエネルギー関連企業や広島県など、地方公共団体でした。
●ハイドロジェンREハイブリッドをプレマシーに搭載
マツダは、RX-8ハイドロジェンREをさらに進化させたモデルとして、2009年プレマシーハイドロジェンREハイブリッドのリース販売を始めました。
プレマシーハイドロジェンREハイブリッドは、RX-8ハイドロジェンREのように水素REをクルマの動力源として使うのではなく、水素REで発電機を回して発電させてバッテリーを充電し、その電力でモーター走行するシリーズハイブリッドです。
前述のRX-8ハイドロジェンREに比べて、ハイブリッド化の効果によって航続距離は2倍の200kmに延び、最高出力も40%向上して150PSを達成。さらに、内装には植物由来のカーボンニュートラルな原料から作られた内装材“バイオテックマテリアル”を採用するなど、地球環境に配慮した仕様となっています。
プレマシーのハイドロジェンREハイブリッドのリース先は、主にエネルギー関連企業や広島県など、地方公共団体でした。
●ついに復活したロータリーは、シリーズハイブリッドのPHEV
マツダは、今年2023年の1月13日に、ロータリーエンジンを発電機として使うPHEVのクロスオーバーSUV「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を欧州で初公開しました。
EVの航続距離を伸ばすために、補助的に比較的小さなエンジンで発電するレンジエクステンダーとの噂もありましたが、発表されたMX-30のパワートレインは、日産自動車”e-POWER”と同じシリーズハイブリッド方式のPHEVでした。エンジンは発電のためだけに使い、その電力をバッテリーに蓄電して、その電力でモーターを駆動させてモーター走行するシステムです。
一般的なレシプロエンジンより、小型軽量で振動の小さいロータリーエンジンの強みを生かしたマツダらしいPHEVシステム、ロータリー復活待望論者の期待に応えた形となりました。
「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」のハイブリッドシステムは、基本的な考え方は2009年にリース販売されたプレマシーハイドロジェンREハイブリッドと同じです。10年以上前にリース販売されたシステムが、バッテリーやモーターなど様々な電動部品や制御技術の進化によって、ついに市販化されるレベルに達したということです。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)