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■電子制御システム満載の高級ツアラーに新色を設定
近年の大型ツーリングバイクには、クルーズコントロールや電子制御サスペンション、トラクションコントロールなど、最新の電子制御システムが満載の高級モデルも数多く、高い安全性や快適性を誇ります。
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)の「トレーサー9GT(TRACER9 GT ABS)」もそんな大型ツアラーの1台ですが、2023年4月20日に2023年モデルが発売されます。
新型では、新しいカラーリングを採用したことが主な変更点。ホワイトとブラックの2色を設定し、いずれにも足まわりにゴールドをマッチングすることで、高級感をアップさせていることが特徴です。
●888cc・直列3気筒エンジンを搭載
トレーサー9GTは、2015年に発売された「MT-09トレーサー」を元祖に持つ、ヤマハの大型スポーツツアラーです。
ネイキッドモデル「MT-09」をベースに開発されたMT-09トレーサーは、2018年のモデルチェンジ時に車名を「トレーサー9」へ変更。スタンダードモデルに加え、2018年には、上級モデルの「トレーサー9GT」も発売されましたが、国内では現在9GTのみをラインアップしています。
2021年に登場した現行モデルでは、888cc・直列3気筒エンジンを、軽量なCFアルミダイキャスト製のフレームに搭載。最高出力120ps/10000rpm、最大トルク9.5kgf・m/7000rpmを発揮するエンジンは、YCC-T(電子制御スロットル)などとのマッチングにより、ライダーのアクセル操作に対しリニアに出力が発生することで、扱いやすさも満点です。
また、クラッチレバーの操作を軽くすると共に、シフトダウン時の車体挙動の緩和を図る「アシスト&スリッパークラッチ」の採用で、減速時などで高い車体安定性も誇ります。
●車体挙動やサスを制御する電子制御システム
最新の電子制御システムを採用することも、このモデルの魅力です。まず、さまざまな車両挙動をセンシングする6軸のIMU(慣性計測装置)を装備し、その情報を受け取り車両側へフィードバックするECUに3種類の制御システムを搭載します。
バンク角も反映した「トラクションコントロールシステム」、旋回性能をサポートする「SCS(スライドコントロールシステム)」、前輪の浮き上がり傾向時にライダーを支援する「LIF(リフトコントロールシステム)」を備え、各制御が相互に連動することも可能。マシンのポテンシャルを効率よく引き出せることで、ライダーの運転操作集中力をサポートします。
さらに、足まわりでは、KYB(カヤバ)社と共同開発した電子制御サスペンション「KADS」を装備します。IMUの情報にもとづき、「SCU(サスペンションコントロールユニット)」が走行中に減衰レベルを自動調整することで、さまざまな走行状況へ対応。スポーティな走りと快適な乗り心地を両立しています。
ほかにも、アクセル操作なしで設定速度内の巡航が可能な「クルーズコントロールシステム」は、4速以上・約50km/h以上でセットが可能。高速道路などを使った長距離ツーリングでの疲労軽減に貢献します。 また、軽量・高剛性を実現した独自開発の「スピンフォージド・ホイール」などにより、軽快なハンドリングも実現。
レバー操作で簡単に高さを調整(5mm単位で10段階)できる大型フロントスクリーン、オプションなどのサイドケース取り付け時に、ケースの振動を軽減するダンパー内蔵取付け用ステーなど、ツーリング時の快適性や使い勝手を考慮した数多くの装備を採用していることも魅力です。
●高級ツアラーとしてはリーズナブルな価格も魅力
その2023年モデルでは、高いスポーツ性と質感を表現する「ホワイト」、艶ありと艶消しの黒を組み合わせることで質感にコントラストをつけた「ブラック」の2色を設定します。
いずれのカラーも、前後ホイールや倒立フロントフォークのアウターチューブなどにゴールドをあしらうことで、上質感や機動性の高さを演出しています。 価格(税込)は149万6000円。高級ツアラーとしては150万円以下となるリーズナブルなお値段もうれしいポイントです。
ちなみに、欧州では、2022年11月に、トレーサー9GTの上級バージョン「トレーサー9GT+(TRACER9 GT+)」が発表され、日本にも導入される予定です。
新たにミリ波レーダーを搭載し、レーダーと連携する新型ブレーキシステム「UBS」などを採用したのがトレーサー9GT+。UBSは、前走車との車間に対し、ライダーのブレーキ入力が不足している場合、前後配分を調整しながら自動でブレーキ力をアシストする機能で、より高い安全性を実現しているのが注目点です。
なお、トレーサー9GT+の日本導入時期は2023年夏以降。こちらの登場も待ち遠しいですよね。
(文:平塚直樹)