目次
■同じ”500h”でもLCとRXでは全然違う!
5年のハイブリッドの進化ってすごいな! もう、6気筒とか4気筒なんてどうでもいいんじゃないか?
「LC500h」と「RX500h」、2台の”レクサス500h”を乗り比べてそんなことを思いました。
LC500hとはレクサスのフラッグシップクーペである「LC」のハイブリッドモデルで、デビューは2017年。
ハイブリッドシステムは、排気量3.5Lで299psのV6ガソリン自然吸気に180psのモーターを組み合わせた「マルチステージハイブリッドシステム」と呼ぶもの。システム最高出力は359psだそうです。
いっぽうRX500hはSUVの「RX」最高峰モデルで、デビューは2022年。ハイブリッドシステムは、排気量2.4Lの4気筒ターボエンジン(275ps)に、フロント87ps+リヤ103psのモーターを組み合わせます。システム最高出力は371psとのこと。
この2台は機構(ハイブリッドの構造)こそまったく異なるものの、”500h”という仕様からもわかるように、どちらもレクサスの最高峰となるハイブリッド。
しかし…ここからが本題です。フィーリングが全然違うんですよ。当然と言えば当然ですが。
●LC500hは滑らかだけどパンチがない
まずはLC500h。速さはさすがです。そして滑らか。デビューの時期である2017年のハイブリッドとしては、アクセル操作に対するダイレクト感も良好ですね。気持ちよく走ることができます。
運転していてスイートスポットだと感じたのは、ジワリとアクセルを踏んだ時のエンジンが2000~4000回転くらいの状況。まるでドライバーがエンジンと対話するかのように、リニアにエンジン回転上昇と速度上昇がシンクロする感覚はなかなか心地いいです。
ただ、アクセルを全開にしてみると、エンジン回転が上がる高揚感とか盛り上がりみたいなものが感じられないんですよ。パンチがないんです。正直に言うとそこが物足りない。
●RX500hは驚きの盛り上がり。ハイブリッドらしさは皆無
いっぽうでRX500hは同じ「500h」でも全然違った。
まず、アクセルを深く踏み込んだ時のダイレクト感が強くてハイブリッドであることをまったく感じさせない。そのうえで、一気に回転が高まって高回転が盛り上がるから、しっかりとアドレナリンが出てくる。エンジンの吹け上り(のような感覚)、伸び感、そして高回転で盛り上がる高揚感も文句なし。
全開加速にダイレクト感があるって素晴らしいじゃないですか。刺激強めです。エナジードリンクでも飲んできたのか?
RX500hのハイブリッドは燃費は二の次でパフォーマンス追求型ですが、ここまでキレがある仕上がりとは。
はっきり言うと、ハイブリッドだということは全く感じさせないんですよね。まるで、高出力でレスポンスのいいガソリンエンジンのクルマを運転しているような感覚。「ハイブリッドではなくガソリン車」と説明したら、騙される人も少なくないんじゃないかな。
それに比べるとLC500hは、「速いんだけどATがユルいガソリン高性能車」って感じです。アクセル操作に対する加速感も、変速もちょっとだけど「おやおや? そうくるのかい?」って感じる部分があるし。もしかすると、ある世代の人にとっては懐かしく感じるかもしれません。
いうまでもありませんが、運転する楽しさは断然、RX500hですね。
いや、5年前のテクノロジーとしてはこのLC500hでも相当凄かったんですけどね。ただ、デビューしてから5年が経った今を基準として考えると、ここ5年のトヨタにおけるハイブリッドの技術の進化の速度がものすごかったということですよ。
●ハイブリッドになると、気筒数は意味を持たない単なる記号?
もうひとつ思ったのは、ハイブリッドではエンジンが6気筒とか4気筒というのはあまり意味を持たないんじゃないかってこと。
だって、現実として6気筒のLC500hよりも4気筒のRX500hのほうがパワフルだし刺激的だし、ドライバーを高揚させてくれるわけだから。その辺の認識も改める必要がありそうですね。
あと、もうひとつ大きな違いと感じたのは、ブレーキのフィーリング。RX500hのブレーキは、減速度の調整のしやすさが素晴らしいです。比べるとLC500hは減速度の変化にちょっと違和感がありますね。
そういうところも、しっかりと進化しているんだなあと感心しました。
(文:工藤 貴宏/写真:ダン青木)