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■乗り心地がいいという評価を聞かないCX-60だけど…実際どうなの?
マツダCX-60は乗り心地があまりよくない……そんな評価が、昨今の自動車メディア業界では半ば定説になっています。
確かに、ボク自身も「乗り心地がいいか?」と問われれば、「荒れた路面だと粗い感じだよね。ゴツゴツと入力があるし、車体の上下の揺れがちょっと大きくて、洗練されているとは言いにくいかな」と答えるでしょう。路面が荒れていなければ、全く気にならないのですが。
さて、先日のこと。とあるロケでそんなCX-60と日産「エクストレイル」を連ねて移動することがありました。
後席にはモデルさんとスタイリストさんが座りましたが、彼女らは状況により、CX-60とエクストレイル両方の後席で移動を体験。そしてロケも終盤にかかったタイミングでふと話を振ったのです。
「このクルマ(CX-60)はちょっと乗り心地が悪いでしょ? リヤシートに座って移動するならもう一台のクルマ(エクストレイル)のほうが快適だよね??」と。
●リヤシートを乗り比べた女性に尋ねたら、意外な答えが返ってきた
でも、彼女たちの意見は意外なものでした。
「CX-60のほうが断然いい!」というのです。
モデルさんとスタイリストさんの2人ともが、まるで申し合わせたかのようにまったく迷いのない意見を即答したことに驚きました。2人が2人とも“CX-60推し”って意外過ぎます。
その理由は「居心地はエクストレイルよりもCX-60のほうがいい」というもの。
具体的に言えば、エクストレイルは「まずシートの革がよく滑る。それにシートの形状が姿勢をしっかり保持してくれない。座っているとお尻が前にズレて姿勢が崩れる。その結果、頻繁に姿勢を整えないといけない。だから快適ではない」とのこと。
いっぽうでCX-60は「革が滑らない。それに身体を包むようなシートの形で姿勢が乱れず、座っていて姿勢を直すことが少なくて済む。だから快適」とのこと。
「後席に座ってロングドライブに出かけるのならどっちがいい?」と尋ねたら、2人とも「CX-60のほうがいい!」と即答でした。
「でも、CX-60は乗り心地が悪いでしょ?」と質問すると、「そうなのかな? それはよくわからない。でも、快適なのはどう考えてもCX-60」とのこと。
そんな2人の意見を聞いて、ボクは自動車ライターとしてハッとしました。
●認識を改めないといけないのはボクら自動車ライターなのかも
ボクらは常日頃、単純に走っているときの動きとして「乗り心地が“いい”とか“悪い”」で評価しがち。
しかし、後席に座る人にとっての快適性とは、シート表皮の滑りにくさとかシート形状、さらには乗車姿勢まで絡んでくるもの。それらを含めたトータルの結果が居心地であり、ユーザー目線の本質はそこが大事なんじゃないかと。
たしかに、長時間移動時の居心地とか疲れにくさはエクストレイルよりもCX-60のほうが良好です。
だから、クルマを選ぶ人には「乗り心地」というひとつの物差しだけでなく、表皮やシート形状、乗車姿勢など多方面からの視点でトータルでの居心地をクルマ選びのポイントにして欲しいと思うのです。
まずは、ボクら自動車メディアに携わる人が、それをしっかり読者に伝えないといけないんですけどね。
というわけで、SUVの後席を乗り比べたモデルさんとスタイリストさんに話を聞いたら、自動車専門家目線とは違う結果が見えて、新しい気付きがあったという話でした。
評価って奥が深いですね。
ちなみに、ここでいう「マツダCX-60」とは4WDモデルの話。FRモデルはもっと乗り心地がいいという噂もあるのですが、未試乗なのでちょっと楽しみだったりします。
(文:工藤 貴宏/写真:ダン青木)