ルノー、日産、三菱自動車の新アライアンスは当初15年間の予定。日産だけでなく三菱もルノーのEV新会社に出資を検討

■議決権の上限は相互15%まで

以前お伝えしたように、ルノーと日産は株式を15%相互出資すると声明を出しています。同声明は、ルノーと日産の取締役会での承認待ちという状況になっていました。

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ルノー、日産、三菱3社による記者会見の様子

2023年2月6日、ルノー、日産自動車、三菱自動車は、ルノーグループと日産の取締役会での承認を経て、3社のアライアンスをより高いレベルに引き上げることを目指した、新たな取り組みを発表しました。

主な取り組みは、下記の3点です。

・ラテンアメリカ(中南米)、インド、ヨーロッパにおいて事業面で高い価値を創造するプロジェクト
・各社の新しい取り組みにパートナーが参加可能になる戦略的な機敏性の向上
・リバランスされたルノーグループ、日産間の株式相互保有と強化されたアライアンスのガバナンス

ルノーと日産は、上記取引に関する拘束力のある枠組み合意を締結し、2023年第1四半期末までに最終契約の締結を予定しているそうです。最終契約に規定された取引は、規制当局の承認を含むいくつかの条件を前提にしていて、2023年第4四半期に完了する予定。

こうした広範な取り組みは、新たな機敏性をもたらし、各社の強みの技術を活用するなど、24年間続いたパートナーシップの進化と強化につながるとしています。

より高いレベルのアライアンスになるべく、「100年に一度の大変革期」といわれる中、いわゆる「CASE」対応した新しいモビリティサービス市場で、各社が革新と変革を続ける中、多くの成長機会を生み、事業の効率化に貢献するとしています。

●ルノーが中南米で0.5tピックアップトラックを開発し、日産に供給

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ルノー、日産が対等な立場で新たな提携を結ぶ

各地域での戦略についても、より具体的に触れられています。

ラテンアメリカ(中南米)では、ルノーグループが開発し、アルゼンチンで日産に供給する新たな0.5tピックアップのプロジェクトを推進。さらに、1tピックアップの日産フロンティア/ルノー アラスカンの協業プロジェクトを継続し、今後もルノーがピックアップをアルゼンチンのコルドバ で両社向けに生産されます。

また、メキシコでは、日産が20年ぶりにルノーグループ向けに新型車を生産。さらに、「CMF-AEV(コモン・モジュール・ファミリー)」プラットフォームをベースとした、日産とルノーグループの手頃な共通Aセグメント電気自動車(EV)2モデルを投入。

また、インドでは、ルノーグループと日産の両社は、インド市場と輸出向けとして、両社向けの新型SUV、ルノー トライバーから派生する日産の新型車など、複数の新型車プロジェクトでの協業を検討するそう。中南米と同様に、日産とルノーグループによる共通のAセグメント電気自動車も検討するとしています。

●「CMF-B」をベースとした次世代の三菱ASXと三菱コルトの2モデルを開発

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ルノーが設立するEV新会社に日産だけでなく、三菱自動車も出資を検討

ルノーのお膝元であるヨーロッパでは、ルノーグループと三菱自動車が、ルノー キャプチャーとルノー クリオの資産を活用し、「CMF-B」プラットフォームをベースとした次世代の三菱ASXと三菱コルトの2モデルの新型車を開発。

さらに、ルノーグループ初のソフトウェア定義(Software Defined)車種として、2026年にルノー FlexEVanを投入し、欧州市場において日産に供給される予定です。

また、2026年以降のラインアップとして、日産とルノーグループは、次世代CセグメントEV(電気自動車)における協業の可能性を模索としています。ベンチマーク(指標)レベルの充電時間を達成するべく、日産とルノーが共通の800Vアーキテクチャーの採用を検討するなど、ヨーロッパ市場向けモデルにおける技術の共有を継続。

こうした取り組みは、2026年からフランスのルノー・エレクトリシティで生産される「CMF-BEV」プラットフォームをベースとした将来の日産のコンパクトEV(Bセグメント)など、既存のプロジェクトとともに推進されます。

そのほか、上記3地域以外につても協業を発表。車両にのみにとどまらない物流やアフターセールス、充電インフラ、バッテリーの協業についてアナウンスされています。

ヨーロッパにおける協業は車両だけでなく、物流から使用、リサイクル、使用済みの段階に至るまでのライフサイクルに拡大。物流やアフターセールス、販売金融において、ルノーグループ、日産、三菱自動車の3社が物流ネットワークでの協業機会を検討し、販売店の収益性向上やコスト削減を目指しています。

また、主要市場での共用店舗の増加もトピックス。ヨーロッパにおいて強いプレゼンスのある「Mobilize Financial Services」を活用し、中古車やアフターセールス、販売金融面の共通戦略が策定されます。

中でもEV充電インフラでは、ルノーグループと日産が、欧州で両社の販売店での充電インフラ整備に共同で取り組むことを検討。さらに、ルノーグループと日産の両社は、使用済みバッテリーと生産廃棄物のリサイクルについて、共通のパートナーを選定するとしています。

●三菱自動車もルノーのEV新会社アンペアへの参画を検討

電動化や低排出技術についても新たな合意を得ています。事業に付加価値が期待できる各社のプロジェクトに投資、協業することで合意。

以前から伝えられているように、日産は、ルノーグループが設立するEV&ソフトウエア子会社アンペアの戦略的投資家になるべく、最大15%を出資する意向。日産のヨーロッパ市場の強化、新規事業の加速化が期待されるとしています。

加えて、三菱自動車もアンペアへの参画を検討していて、日産、三菱自動車は、低排出ガス内燃機関(ICE)およびハイブリッドパワートレイン技術のさらなる規模と市場の拡大を目指す、ルノーグループの取り組みである「ホースプロジェクト」の顧客となる予定としています。

こうした取り組みは、全固体電池、ソフトウェア定義(Software Defined)された車両、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転など、既存の技術分野における協業とともに推進されることになるそうです。

そして、最大の目玉である株式相互保有についても中身が明かされました。

ルノーグループと日産が締結した拘束力のある枠組み合意では、両社の新たなアライアンス契約の締結は、2023年3月31日までの予定。従来のアライアンス関連の契約が置き換えられ、新しいアライアンス契約の有効期間については、当初15年間になる予定です。

さらに、今回の新たな取り決めに伴い、ルノーグループとフランス政府との間で、2016年2月4日に締結されたガバナンス契約が解消されます。フランス政府は、ルノーグループにおける議決権を自由に行使することが可能になります。

引き続きルノーグループは、日産の取締役会で2名を推薦する権利を有し、日産はルノーグループの取締役会において2名を推薦する権利を有することになります。「アライアンス オペレーティング ボード(AOB)」は、ルノーグループ、日産、三菱自動車の調整の場として存続する、としています。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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