スズキが新開発の「AGS(オートギアシフト)」を発表。MTベースでクラッチとシフト操作を自動化したAMT【今日は何の日?1月14日】

■機構はMTで、変速を自動化した安価な自動トランスミッション

2014(平成26)年1月14日、スズキが新開発のトランスミッション「AGS(オートギヤシフト)」の概要を発表しました。

AGSは、5速MT(マニュアル・トランスミッション)をベースにしたものですが、クラッチ操作とシフト操作を電動油圧アクチュエーターによって自動で行うトランスミッションです。一般的には、AMT(オートメイティッド・マニュアル・トランスミッション:自動MT)、あるいはシングルクラッチAT(シングルクラッチ・オートマチック・トランスミッション)と呼ばれます。

2014年に始めたASGが搭載されたキャリイ
2014年に始めたAGSが搭載されたキャリイ

●AMTは、MTを使ってクラッチとシフトノブの操作を自動化

AMTは、シングルクラッチ式ATとも呼ばれ、MTの燃費性能とATの利便性を狙って、構造上はMTと同じで、クラッチペダルの操作とシフトノブの操作を自動化した、ATの一種です。欧州では、廉価なトランスミッションとして小型車を中心に採用されていますが、日本での採用はスズキの一部のモデルに限られます。

クラッチ操作とシフト操作の自動化は、一般的には電動油圧式アクチュエーターを使いますが、モーターアクチュエーターを使ったものもあります。

シングルクラッチ式ATと呼ばれるのは、クラッチを2つ使ったデュアルクラッチ式トランスミッション(DCT)と対比するための名称です。

●AMTのメリット・デメリット

・メリット

アルト ターボRS搭載の5速AGSイメージ
アルト ターボRS搭載の5速AGSイメージ

機構はMTなので、ダイレクト感のある走りとともに、動力伝達効率が高いため燃費が優れ、さらにシンプルで軽量、低コストが可能です。また、大半の部品がMTと共通化できるため、開発・製造コストを抑えられ、MT比率が高い欧州では、その効果がより大きくなります。

・デメリット

最大の問題は、変速フィーリングが悪いことです。MTでは、クラッチを切って変速して次にクラッチをつなぐまでの間に、エンジンの駆動力がコンマ数秒間途切れ、加速中に一瞬推進力がなくなる“トルク抜け”が発生するので、ドライバーは減速感を感じます。

MT車の場合は、自分で変速するので身構えることができ慣れますが、AMTの場合は予期せぬタイミングで変速が起きるので、それをギクシャク感、ショックとして感じてしまうようです。

●AGSは一時期モデル展開していたが、現在の採用は少数

2015年に登場したASG搭載のアルトターボRS
2015年に登場したASG搭載のアルトターボRS

スズキのAGSは、新開発の5速MTをベースに油圧アクチュエーターとの接続部分とパーキング機構部分を変更してAMT化しています。また、一般のATと同様のクリープ機能やヒルホールドコントロールを採用して、AMTの発進にかかわる弱点を解消。ヒルホールドコントロールとは、坂道でブレーキ油圧を数秒間保持して、後退を防ぐ機能です。

スズキは、AGSを軽トラ「キャリイ」を手始めに、アルトなど軽自動車やソリオ、スイフトなどのハイブリッドなどに採用していましたが、現在採用は減少しています。


AGSの課題は、変速ショックですが、欧州は渋滞が少なく、比較的高速の定常走行が多いので、あまり気になりません。一方、日本では渋滞が多く、ストップアンドゴーや低速走行が多いため、変速時のギクシャク感が目立ち、ユーザーにはあまり受け入れてもらえなかったということでしょう。メリットを活かしつつ、さらに改善が施されてきたAGSですが、さてどうなるでしょうか。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる