日産のパイクカー第1弾「Be-1」デビュー。クルマ界の遺産・昭和レトロ車は今でも中古車高騰!【今日は何の日?1月13日】

■マーチをベースにした個性的なデザインのコンパクトカー

1987年にデビューしたBe-1。日産が展開したパイプカー第1弾
1987年にデビューしたBe-1。日産が展開したパイプカー第1弾

1987(昭和62)年1月13日、日産自動車が展開したパイクカーの第1弾「Be-1」がデビューしました。

パイクカーとは、特定のコンセプトを持ったデザインに特化した個性的なクルマを指します。Be-1は、ミニクーパーのようなレトロな雰囲気によって大きな人気を集めました。

●日産が仕掛けたパイクカーは、レトロ風モデル

パイクカーとは、レトロ調や先鋭的なスタイリング、あるいは過去の名車を彷彿させるようなデザイン重視のクルマを指します。個性的であるがゆえに、販売台数や販売期間が限定されることが多く、台数を狙った一般的な市販車とは異なる、限定的なモデルです。

1991年に登場したフィガロ
1991年に登場したフィガロ
1989年に登場したパオ
1989年に登場したパオ

日産がこんなコンセプトのクルマとして先鞭を斬り世に送り出したパイクカーは、日本がバブル景気に沸いた1980年代~1990年代に登場したレトロ風の雰囲気が特徴でした。

その第1弾が、初代の「マーチ」をベースにして創られたミニクーパーのような「Be-1(1987年)」です。以後、レトロなオフロードスタイルの第2弾の「パオ(1989年)」、懐かしいスポーティなクーペスタイルの第3弾の「フィガロ(1991年)」が続々と登場しました。

いずれの3台も限定販売ですが、予約が殺到するほどの人気ぶりでした。

●トヨタが仕掛けたパイクカーは、近未来的モデル

その後登場するトヨタのパイクカーである“WiLLシリーズ”は、日産とは対照的な近未来的なモデルです。

2000年にデビューしたトヨタのWill Vi。カボチャの馬車をイメージしたWiLLシリーズ第1弾
2000年にデビューしたトヨタのWill Vi。カボチャの馬車をイメージしたWiLLシリーズ第1弾

Willシリーズの特徴は、トヨタが中心となって花王や松下電器、アサヒビールなどと共同で進めた異業種プロジェクトで誕生したことです。20代~30代の若い層をターゲットにした魅力的なクルマを目指し、第1弾がカボチャの馬車をイメージした「WiLL Vi(2000年)」でした。そしてスパルタンなフォルムが特徴の「WiLL VS(2001年)」、当時のハイテク技術を搭載した「WiLL CYPHA(2002年)」と続いていきます。

いずれも、個性的なスタイリングで販売台数としては多くはありませんでしたが、大きな注目を集めました。

●レトロチックなデザインで人気を獲得したBe-1

Be-1が初めて披露されたのは、1985年の東京モーターショーでした。ここで大きな注目を集めたことから、日産は市販化することを決断。1987年の今日、発売が開始されました。

Be-1のキュートなリアビュー
Be-1のキュートなリアビュー
Be-1の丸みがこもったデザインのインパネ周辺

Be-1は、初代「マーチ」のプラットフォームをベースにしながらも、角張ったマーチとはまったく異なる“ノスタルジックモダン”をテーマにした丸みを帯びたフォルムが特徴です。

フロントフェンダーや前後エプロン部には、新開発の熱可塑性樹脂のフレックスパネルを採用し、インテリアにはニット地のシートや丸形のエアコングリル、ホワイトメーターなどが施され、キュートさをアピールしていました。

パワートレインは、1.0L直4 OHCと5速MTおよび3速ATの組み合わせ、さらにボディカラーには、鮮やかなトマトレッド、パンプキンイエロー、オニオンホワイト、ハイドレンジアブルーの4種を用意して、多くの若者の心を掴むことに成功したのです。

Be-1は、1万台の限定販売がわずか2ヶ月足らずで完売したため、多くの購入希望者のために増産を実施。なんと新車が購入できなかった人は、中古車を求め、一時期中古車市場では、200万円(発売時は、130万~145万円)を超える値で取引されていたそうです。


1987年当時はバブル絶頂期、メーカーは潤沢な資金を新車開発に投入することができました。飛ぶように売れた高級車の傍らで、このような遊び心満載のクルマも登場していたのですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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