初代の人気を加速した「エスティマ」2代目デビュー。FF駆動化で車内包容力もアップ、ハイブリッドも追加【今日は何の日?1月11日】

■ラウンディッシュなフォルムで人気を加速

2000(平成12)年1月11日、トヨタのミニバン「エスティマ」が初めてのモデルチェンジを実施しました。初代のエスティマは1990年にデビューして大ヒット、続く2代目はFF化してさらにスタイリッシュなフィルムを採用。ハイブリッドを追加するなどして、さらに人気を加速させました。

2代目エスティマ
2代目エスティマ(弊社刊2005年ニューモデル速報 最新ミニバンのすべて より抜粋)

●“天才タマゴ”のキャッチコピーで登場した初代エスティマ

初代のエスティマは、1990年5月に“天才タマゴ”のキャッチコピーを掲げてデビューしました。

それまでは商用車ベースのボクシーなミニバンが主流でしたが、エスティマは乗用車ベースのスタイリッシュなフォルムであり、広い3列シートおよびラウンディッシュなコクピットを配した近未来的なインテリアで大きな注目を集めました。

1990年に誕生し大ヒットした初代エスティマ
1990年に誕生し大ヒットした初代エスティマ

従来のミニバンは、前輪の前にエンジンを搭載したFR車が一般的でしたが、初代エスティマはセカンドシート下部の床下に2.4L直4エンジンを搭載したミッドシップレイアウトを採用。駆動方式は、2WDとVCU(ビスカスカップリング)付フルタイム4WDが用意されました。

販売開始とともに、アウトドア派やレジャー派のファミリー層はこぞってエスティマを選び、好調な販売を記録して新しいミニバンブームに火を付けたのです。

●初代以上に斬新なフォルムとFF化によって広い室内空間を実現

2代目エスティマの後期型(弊社2005年刊ニューモデル速報 最新ミニバンのすべて より提供)
2代目エスティマの後期型(弊社2005年刊ニューモデル速報 最新ミニバンのすべて より抜粋)

新しくなった2代目エスティマは、初代以上に流線型のスタイリッシュなフォルムを採用し、Cd値はクラストップを記録。最大の特徴は、初代のミッドシップレイアウトに対して、エンジンをフロント横置きに配置したFFレイアウトに変更したことです。

2代目エスティマのハイブリッド仕様PR記事(弊社刊ニューモデル速報「2001第35回東京モーターショーのすべて」 のカバーより)
2代目エスティマのハイブリッド仕様PR記事(弊社刊ニューモデル速報「2001第35回東京モーターショーのすべて」 のカバーより)

FF化によって得られたメリットは、スペース的な余裕ができた結果、2.4L直4エンジンに加えて高出力の3.0L V6エンジンも搭載できたこと。これにより、初代を凌ぐ静粛性とパワフルな走りが実現しました。

さらに2001年には、ミニバン初のハイブリッドモデルが追加され、初代から続くエスティマの人気はさらに加速。販売台数は、2000年には12万台を超えて、カローラ、ヴィッツに次ぐ、ミニバンとしては異例の第3位の座を獲得したのです。

●2010年以降は人気が低迷し、2019年に生産を終了

しかし、その後ミニバンはコンパクトクラスと高級車クラスが人気となり、初代から30年続いたエスティマは、2019年に生産を終えました。

3代目エスティマ(弊社刊ニューモデル速報 第371弾「新型エスティマのすべて」 より抜粋)
3代目エスティマ(弊社刊ニューモデル速報 第371弾「新型エスティマのすべて」 より抜粋)

初代は1990年から10年間、2代目は2000年から6年間、3代目は2006年から13年間という長いスパンで販売が続けられました。約30年の間に2回しかモデルチェンジしなかったのが不思議ですが、頑なにコンセプトを守り続けたという強い意志も感じ取れます。

もともと初代エスティマは、日本より先に北米市場でデビューしたという経緯がありながら、海外では人気を得られませんでした。そのため国内専用車になり、結果として車種整理の対象になってしまったのです。


現在、トヨタの国内向けミニバンには、コンパクト、ミドル、高級ミニバンまでさまざまなものもが用意されています。先陣を切って功績を成し遂げたエスティマはお役御免ということなのでしょうか。

往年のエスティマファンにとっては残念でもありますが、ミニバンの始祖として大きな足跡を残したエスティマの功績は、今でも高く評価されているのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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