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■最後のロータリーエンジン車となったRX-8
2003(平成15)年1月5日に開催された“デトロイトモーターショー”で、マツダのロータリーエンジン搭載モデル「RX-8」が初公開されました。
日本での販売は4月下旬から始まり、その後生産は10年ほど続くことになりますが、RX-8の生産が終えてからのロータリーエンジン車の出現はなく、現状では最後のロータリーエンジン搭載車となっています。
●マツダが進めたロータリー攻勢
世界初のロータリーエンジン搭載の量産化モデルは、1967年にデビューしたマツダの「コスモスポーツ」です。
コスモスポーツは、最高出力110PS/最大トルク13.3kgmを発揮する10A型(491cc×2ローター)ロータリーエンジンを搭載した2シーターのスポーツカー。最高速度185km/h、ゼロヨン(0-400m)加速が16.3秒という圧倒的な動力性能を誇りました。
ただし、非常に高価なスポーツカーだったので、5年間の累計台数は1176台にとどまりました。
マツダは、その後ロータリーモデルのフルラインナップ攻勢をかけます。「ファミリアロータリークーペ」「ルーチェロータリークーペ」「サバンナ」「コスモAP」「サバンナRX-7」「ユーノスコスモ」と次々と個性的なロータリーモデルを市場に投入。そして、最後のロータリーエンジン搭載車となったのが、RX-8なのです。
●唯一のロータリー車として存在感を示した最後のモデル
RX-8は、コンパクトな2ドアクーペだったRX-7から、ユニークな観音開きの4ドアクーペに変身。ダイナミックな曲線基調の躍動感あるボリューミーなフォルムが特徴でした。
注目のロータリーエンジンは、RX-7に搭載された2ローター「13B」型をコンパクトにした高出力・低燃費の「RENESIS」へと進化。
排気ポートと吸気ポートの両方をサイドハウジングに配置した構造で、最高出力250PS/最大トルク22.0kgmを発揮し、ロータリーらしい優れたレスポンスとスムーズな走りがアピールポイントでした。
予約受注は3ヶ月で5,000台を超え好調に滑り出し、その後販売台数は下降するものの唯一のロータリーとして存在感を示してゆきましたが、2013年に生産を終了しました。
21世紀に入り、環境問題やエコがクローズアップされ始めた中で、ロータリーエンジンは苦境に立たされてゆきます。機構的にどうしても燃費がレシプロ(ピストン往復)エンジンに劣ることが、ロータリーエンジン撤退最大の理由でしょう。
●ロータリーエンジンは、燃費改良が難しいエンジン
ロータリーエンジンの燃費が改良できないのは、機構的にレシプロエンジンより熱効率が劣ることに起因します。熱効率が劣るのは、燃焼速度が遅い、冷却損失が大きい、ガス漏れ損失が大きい、という3つの要因です。
ロータリーは、燃焼室形状が扁平で細長い形状をしているので、半円球の燃焼室のレシプロに対して、相対的に燃焼期間が長期化してサイクル効率が下がり、また燃焼室のS(表面積)/V(容積)比が大きいので冷却損失が増大します。
さらにレシプロエンジンは、円形のピストンリングでシールしますが、ロータリーはシール部が長いので、燃焼ガスが漏れやすく、熱効率が低下します。
これらの問題は、ロータリーエンジン固有の機構に起因する本質的な課題ですので、解決が難しいのです。
ロータリーエンジンの復活が長く噂されていましたが、EVの「MX-30」のオプションとして用意されるレンジエクステンダー(発電用エンジン)として復活するようです。予想された結果ですが、動力性能に秀でている魅力的なロータリーエンジンですが、やはり駆動用エンジンとして使うには、燃費的に厳しいという判断でしょう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)