2000Nmのエンジンを搭載するモンスターマシンに乗った!【2022年 私にとっての10台(重大)ニュースby諸星陽一】

■印象からの順位です

諸星陽一が2022年に乗ったクルマのなかで印象深いクルマを紹介します。順位はクルマの善し悪しとかではなく、どれだけ印象が深く、心に残っているかです。

●10位:フィアット500e

フィアット500eフロントスタイル
フィアット500eのフロントスタイル

今、日本に足りないのは小型車、つまり5ナンバー車だと常々思っています。道路には大きなクルマがあふれてしまい、狭い日本がさらに狭くなってきています。

そこへイタリアからやってきたのがフィアット500e。フィアット500らしいキュートなスタイリングで、ボディサイズは5ナンバーに収まるもの。

フィアット500eのリヤスタイル
フィアット500eのリヤスタイル

エンジン車のフィアット500はちょっともの足りないパワーユニットですが、EVにしたことでトルク感も申し分のないものになりました。ただ、急速充電に難ありなので順位は低め。

●9位:トヨタ・クラウン

クラウン フロントスタイル
クラウンのフロントスタイル

もっとも変化が難しいクルマが、ものすごく変化したという部分は本当にすごいことでした。

だれもが「これがクラウンなの?」と思ったけど、堂々と「これがクラウンです」と言い切ったのはとても素敵な出来事でした。ユーザーの若返りが至上命令のクラウンが、見事に若返りした印象であることも見逃せません。

クラウンのリヤスタイル
クラウンのリヤスタイル

先代でもずいぶん若返りを果たしていますが、ヨーロッパ車っぽいことをして人気を取ったという雰囲気でした。それが今回は日本的でオリジナリティがあったことがとてもよかったと感じました。

残念なのは全幅1800mmをやめてしまったこと。

●8位:ルノー・アルカナ

ルノー・アルカナフロントスタイル
ルノー・アルカナのフロントスタイル

ルノーはE-TECHというハイブリッドシステムを開発、それを採用したモデルで最初に日本に導入されたのがアルカナでした。

E-TECH最大の特徴はドッグクラッチ式のミッションを持つところです。ドッグクラッチというのはギヤとギヤをかみ合わせる方式のクラッチで、レーシングカーなどにも採用される方式です。

ルノー・アルカナリヤスタイル
ルノー・アルカナのリヤスタイル

ドグクラッチは動力の伝達が効率的に行えるのですが、ギヤチェンジのときに大きなショックが発生するというデメリットがあります。E-TECHではハイブリッドのモーターでギヤを同期してショックを低減。非常にスムーズな変速を可能にしていました。これは感動ものでした。

●7位:日産サクラ/三菱ekクロスEV

日産サクラフロントスタイル
日産サクラのフロントスタイル

日本の道路インフラを考えたら軽自動車のサイズ感はとても使いやすいものです。現在、軽自動車の人気が非常に高いのは維持費などが安いというだけでなく、サイズ的に使いやすいという面も大きく影響しています。

ご存じのように軽自動車はエンジン車の場合、排気量の上限は660ccで、最高出力は各社の申し合わせで64馬力に自主規制しています。

三菱eKクロスEVフロントスタイル
三菱eKクロスEVのフロントスタイル

この排気量制限は快適なドライブフィールを生み出すにはもの足りないものです。日産サクラ&三菱ekクロスEVも最高出力は47kW(64馬力)と自主規制内にしていますが、最大トルクは195Nmとエンジン車の2倍近くにもなり、この大トルクによって軽自動車とは思えない快適なドライブフィールを実現しています。

ヨーロッパのコンパクトカー市場に殴り込みを掛けて欲しい、そんなクルマでした。

●6位:ホンダ・シビックタイプR

ホンダ・シビックタイプRフロントスタイル
ホンダ・シビックタイプRのフロントスタイル

シビックタイプRはシビックをベースとしたハイパフォーマンスモデルです。先代はイギリス製造だったのですが、現行モデルは日本製造になりました。最終組立工場は埼玉県寄居町にある埼玉製作所で、エンジン車のシビックやハイブリッドのシビック、フリード、ホンダeなどと混合生産されています。

専用ラインで製造しないことでコストダウンを果たしているのですが、サスペンションについてだけはサブラインで専門のスタッフによって組み立てられています。

ホンダ・シビックタイプRリヤスタイル
ホンダ・シビックタイプRのリヤスタイル

機会があって大分県のオートポリスで試乗しましたが、そのパフォーマンスの高さは手に余るものでした。

せっかくいいクルマがあるのだから、しっかりタイプRでモータースポーツに参加して欲しいというのが私の気持ち。鈴鹿やニュルブルクリンクのタイムアタックじゃもの足りないですよー。

●5位:日産フェアレディZ

日産フェアレディZフロントスタイル
日産フェアレディZのリヤスタイル

シビックタイプRがシビックをベースにし、工場での生産性も重要視してコストダウンを図って実現したのに対し、フェアレディZはもちろん専用デザインを採用しています。

シビックタイプRはタイムを追求するクルマとして開発されましたが、フェアレディZはそうではなく「ダンスパートナー」という位置付けとしました。タイムを競うのではなく、クルマをパートナーとして一緒に楽しく走ろうではないか、という考え方です。

日産フェアレディZリヤスタイル
日産フェアレディZのリヤスタイル

初代やZ32のデザインモチーフをふんだんに盛り込んだクルマ作りは、いい意味で温故知新。悪い意味だと過去にすがりついているのですが、そういうクルマがあってもいいのです。すべてが最新のデザイン、最新のテクノロジー、最新のスピリッツで作られている必要はないのです。

いかにもエンジンの大トルクで走るクルマ、それがフェアレディZでした。

●4位:ジープ・グラディエーター

ジープ・グラディエーターフロントスタイル
ジープ・グラディエーターのフロントスタイル

ジープと言えば誰もが知っているクロスカントリー4WDです。私が仕事で使っているPCのMacに入れているATOKという辞書では、「ジープ」と入力すると「ジープ《商標名》」と表示され、誤用しないよう促されます。つまり、それほどにジープは一般名称のように扱われているということです。

ジープ・グラディエーターリヤスタイル
ジープ・グラディエーターのリヤスタイル

グラディエーターはそんなジープのなかでは異質の存在です。グラディエーターはラングラーのピックアップトラック版で、後部に大きな荷台を備えます。3490mmとやたらと長く、私の住んでいる都内の住宅密集地ではまず乗ることはできません。

ある意味、非現実的なモデルなのですが、それが楽しかったのです。

都内の臨海地区でも試乗しましたが、なんといっても楽しかったのはシーズンオフのスキー場を使ってのクロスカントリー走行。ロングホイールベースのモデルでも、さすがジープブランドのモデル。しっかりと走ってくれるのが印象的でした。

●3位:シビックRS

シビックRSフロントスタイル
シビックRSのフロントスタイル

2022年はシビックが誕生して50周年ということでさまざまなイベントが行われました。なかでも印象的だったのが歴代シビック一気乗りというイベント。モビリティリゾートもてぎ(旧ツインリンクもてぎ)の北ショートコースを使って、歴代のシビックに乗るというものでした。

用意されたモデルのなかでもっとも目を引いたのが初代シビックのスポーツモデルであるRS。1200ccの4気筒OHCエンジンにツインキャブを組み合わせることで当時としてはハイパワーな76馬力を実現したモデルです。

シビックRSリヤスタイル
シビックRSのリヤスタイル

私は初代シビックのハイデラックスというモデルに乗っていた(正確に書くなら友人から平日は自由に使っていいと言われ、カギを託されていた)ので、とくに思い出深いモデルでした。

乗ってみると、ステアリング細かったなあとか、そうそうアクセルもクラッチもスカスカだったなあとか思い出します。でも、それでよかったのです。

性能を突き詰めなくても楽しいクルマは世の中にたくさんあるなあ、ということを再認識しました。

●2位:バンコクの路線バス

バンコク エアコンバス
バンコクのエアコンバス

私は国内の地方都市や海外に行くとバスに乗るのが好きです。まあ、都内でもけっこう乗るのでもしかしたら“乗りバス”なのかもしれません。バスは庶民の足ですから、バスに乗るとその土地の空気感を感じることができます。

バンコクエアコンレスバス
窓を全開で走っているのはエアコンレスバス

タイのバンコクはバス網が発達していて、バスを上手に乗り継げばかなり効率的に移動することができます。しかし、この上手に乗り継ぐのがじつに難しいのです。タイ文字が読めるワケもなく、タイ語も話せません。

しかし、文明の利器は素晴らしい。スマホでGoogleマップを開いて、目的地を入力すると、乗るべきバス停までの徒歩経路、降りるバス停の名前、バス停から目的地までの徒歩経路が示されます。

バンコクのバスは乗車したら車掌さんに行き先を告げて、料金を支払わないといけないのですが、言葉ができなくてもスマホの画面を車掌さんに見せればOK牧場。この方式なら、世界中でバスが楽しめるな、とほくそ笑んでいます。

●1位:蔵王スキー場の雪上車

蔵王雪上車
蔵王スキー場の雪上車

2022年に乗った乗り物でもっともすごかったのが蔵王のスキー場で乗った雪上車です。

なんでそんなクルマに乗ったのかといえば、蔵王に樹氷を見に行き、ナイトツアーにも参加したからです。昼間の樹氷観光はゴンドラに乗っていくのですが、夜の樹氷観光は雪上車に乗ってゲレンデを上っていくのです。

樹氷
雪上車の奥に見えるのが樹氷

この雪上車、メルセデス製の12000cc・6気筒エンジンを搭載していて、最高出力は400馬力とのことなので割と聞き慣れた数値です。しかし、最大トルクにいたっては2000Nmに迫るというとんでもない数値。

駆動はタイヤでなくクローラ(いわゆるキャタピラー)で、きつい勾配もガンガン上っていきます。今まで乗った乗り物のなかで雪道では最強のパフォーマンスを示してくれました。

この雪上車、大きなくくりでクルマと考えたら今まで乗ったなかで、もっともトルクのあるクルマだったと思うのです。

(文・写真:諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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