最高価格は900万円!新型レクサスRXはフルモデルチェンジでPHEVまで登場、走りはどう変わった?【レクサスRXとは?】

■レクサスRXとは:日本では2代目まではハリアーだったプレミアムクロスオーバーSUV

初代レクサスRX
初代レクサスRX

レクサスは、1989年に設立されたトヨタ自動車のプレミアムブランドで、当初は北米マーケットでの展開でした。

導入時のレクサスに用意されたモデルは、LS(日本名セルシオ)とES(日本名カムリプロミネント)で、SUVは1996年にLX(80系ランドクルーザー)が最初に導入されたモデルで、RXはSUVとしては2車種目で1998年に導入されました。

初代RXは、日本国内ではハリアー(同じく初代)として販売されました。ハリアーがV6・3リットルと直4・2.2リットルエンジンであったのに対し、RXはV6・3リットルのみの設定でした。

2代目ハリアー
2代目RXは日本ではハリアーとして販売された。写真は日本仕様のハリアー

2代目RXも国内モデルはハリアーとして販売されます。2代目RXはV6・3.3リットルでスタート、のちにV6・3.5リットルに変更。V6・3.3リットルエンジンにモーター&ジェネレーターを組み合わせたハイブリッドモデルも設定されました。

3代目RX
3代目のレクサスRX。写真は2013年のマイナーチェンジ時のもの

3代目RXとなり、いよいよ日本への導入も開始されます。これから先は日本仕様のRXについて記述します。

初代・2代目と、ハリアーと共通だったRXですが、この3代目からはハリアーとは枝分かれし独立(とはいえプラットフォームは共通)します。

3代目RXが日本で発表されたのは2009年1月で、このタイミングでのパワーユニット&駆動方式は3種。V6・3.5リットル+THS IIのハイブリッドモデルのRX450hが4WDのみ、V6・3.5リットルのピュアエンジンモデルのRX350には4WDとFFが設定されました。2009年9月にはRX450hのFFモデルが設定されます。2010年8月、直4・2.7リットルエンジンを搭載するRX270を追加。

2012年4月、RXはマイナーチェンジを受けます。このマイナーチェンジで、グリルデザインを現在と同じスピンドルグリルとします。またRX450hとRX350には、スポーツグレードであるFスポーツを設定。2013年7月の一部改良では、ITSスポットと双方向通信を行うITSスポット対応DSRCユニットを全車に標準装備。全車にデイライト機能付のLEDクリアランスランプを搭載しました。

4代目RX
4代目のレクサスRX

2015年3月、ニューヨーク国際オートショーに4代目となる新型RXを出展。同年10月に日本でRXがフルモデルチェンジされます。搭載されたパワーユニットはRX200tが直4ターボ・2リットル、RX450hがV6・3.5リットル+THS IIのハイブリッドモデルで、いずれのモデルにもFFと4WDが設定されましたが、スポーツグレードのFスポーツは4WDのみの設定でした。

2016年8月にはそのFスポーツにFFモデルが追加となります。2017年12月にはRX450hにロングボディのRX450hLが追加。RX450hLではホイールベースはRX450hと同寸ですが、ボディを110mm延長、電動格納式サードシートを備え、ユーティリティ性をアップしています。

また、スペック変更などはないものの、レクサス車へのターボエンジン搭載が増えたことをうけて、RX200tの車名をRX300へと変更します。2019年8月には夜間、先行車や対向車の幻惑を避けつつ、必要な対象物にはハイビームを照射するブレードスキャン・アダプティブハイビームシステムの搭載などを行いました。

2020年の一部改良ではパーキングサポートブレーキ&ブラインドスポットモニター全車標準搭載。ハイブリッドモデルでは、AC100V・1500Wのアクセサリーコンセントがオプションで選べるようになりました。

2022年5月に、ホームページ上で5代目RXのデザインの一部を公開するとともに、6月にオンラインで発表することを予告。その予告通り、6月に世界公開。11月初旬にアメリカで開催された「SEMAショー」に出展。同年11月18日より日本での販売が開始となりました。

●5代目レクサスRXの基本概要 パッケージング:GA-Kプラットフォームを採用し若干サイズアップ

レクサスRX500h外観
レクサスRX500hのフロントスタイリング

先代まではKプラットフォームを使っていたRXですが、5代目からはTNGAに変更しプラットフォームはGA-Kとなります。これに伴いホイールベースは先代に比べて60mm延長されました。

ボディサイズは全長×全幅×全高が4890×1920×1695mmで、全長は変更されていませんが、全幅は25mm拡幅、全高は10mm低くなりました。

4WDモデルのリヤセクションには、モーターが搭載されます。エンジンとフロント用モーターはフロントセクションに搭載、ハイブリッドモデルのバッテリーはリヤシート下、プラグインハイブリッドモデルのバッテリーはフロア下に収められています。

RX500hパワートレイン
RX500hのパワートレイン

先代モデルでは3列シートモデルも用意されましたが、5代目は2列シートのみの設定となりました。とはいえ、RXに最初に設定された3列シートモデルは、ホイールベースを変更せずに全長のみを延長して3列シート化を実現しているので、今後の登場もないとは言い切れません。

また3列シートを持つ新たなクロスオーバーSUVの登場のウワサもあります。ラゲッジルームは定員乗車時で612リットルが確保され、ゴルフバッグ4個が搭載可能です。リヤシートは6対4分割可倒式で、フルラゲッジ時の容量は1678リットルとなります。

●5代目レクサスRXの基本概要 メカニズム:PHEVも追加されパワーユニットは3種に

RX350エンジンルーム
RX350のエンジンルーム

5代目レクサスRXは3種の異なるパワーユニットが用意されます。RX350はピュアエンジンモデルで、2.4リットルの直列4気筒ターボエンジンが採用。最高出力は279馬力、最大トルクは430Nmで、電子制御の8速ATが組み合わされます。駆動方式はFFと4WDを用意。4WDは機械式で、湿式多板クラッチにて駆動トルク制御を行っています。

RX450h+バッテリー
RX450h+に搭載されるリチウムイオンバッテリー

RX450h+は2.5リットルの直列4気筒エンジンとモーターを組み合わせたシリーズ・パラレル方式のプラグインハイブリッドです。エンジンは185馬力/228Nmのスペック、モーターはフロントが182馬力/270Nm、リヤが54馬力/121Nmのスペック。ミッションは電気式無段変速、駆動方式は4WDのみ。バッテリー容量は18.1kWhで、EV航続距離は86kmとなっています。

RX500hエンジンルーム
RX500hのエンジンルーム

RX500hは202馬力/460Nmの直列4気筒ターボエンジンに、フロントが87馬力/292Nm、リヤが103馬力/169Nmのモーターが組み合わされ、ハイブリッドはパラレル方式となります。組み合わされるミッションは6速のダイレクトシフト。ダイレクトシフトは電子制御タイプの進化版で、さらに速いシフトチェンジが可能になるなど、走りの性能が向上されています。

サスペンションはフロントがストラット式、リヤは新開発のマルチリンク式となりました。ショックアブソーバーには極低速域から作用するスイングバルブを採用。減衰力変化を行うAVSはソレノイドバルブ方式として、Fスポーツグレードには標準装備となりました。

●5代目レクサスRXのデザイン:スピンドルグリルからスピンドルボディに進化

スピンドルボディ
ボンネットフードがグリルに被さり、さらにグリルの模様も刻まれているスピンドルボディ

レクサスは、スピンドルグリルという紡錘型のグリルデザインをアイデンティティとしてきました。5代目RXもスピンドルグリルを採用していますが、さらに紡錘型を強調した『スピンドルボディ』という造形に進化しています。スピンドルボディとは、ボディ全体を表すのではなく、フロントフードのパネルをLEXUSのエンブレムまで下げ、ボディとグリルの境界を融合させたシームレスなデザインとすることを示しています。

延長されたホイールベース、低重心化、前後トレッドの拡幅により、低重心で踏ん張り感あるスタイルを実現しています。フード先端は上げられ、バックウインドウ後端を下げることで、水平的で低重心に見せるとともに、伸びやかなフードを強調しています。リヤドア下のサイドシルからリヤフェンダーに向かっての膨らみ感のある造形は、かなり迫力のあるものです。

RXコンソールとインパネ
RX450h+のコンソールとインパネ

インテリアでは、人が馬を操る際の手綱に着想を得た「Tazuna Consept」に基づいて、ステアリングスイッチやヘッドアップディスプレイを連携。運転に集中しながらもナビゲーションなどのディスプレイも見やすくするようになっています。

フロアコンソールは大きく高いもので、ドライバーとパッセンジャーを分離。ドライバーシートは運転に集中できる雰囲気にあふれています。

●5代目レクサスRXの走り:絶妙な乗り味を味わえたPHEVのRX450h+

RX450h+走り
もっとも気持ちよくはしれたRX450h+

もっともバランスの取れている走りを感じたのが、プラグインハイブリッドのRX450h+。まず重心が低いために、全体としての落ち着き感があります。大きなボディはボディ剛性の確保が難しいものですが、RXはボディ全体がしっかりとしていて一体感のある印象を受けます。

従来のKプラットフォームからGA-Kプラットフォームへの進化のポイントは、リヤサスペンションへのマルチリンクの採用で、このマルチリンクサスの採用にあたり、ボディリヤまわりの剛性が強力に強化されています。この効果は大きく、ガッシリとした印象にあふれているのです。

EV走行している際の静粛性も高く、EVらしさをより味わえるモデルとなっています。EV走行可能距離が86kmとのことなので、上手に使えばあまりエンジンが始動せずに使うこともできそうです。

RX500h走り
シリーズ最上位グレードのRX500h

RX500hは、走りの性能を強調するFスポーツパフォーマンスというグレードのみの設定。それだけに走りは気持ちいいものです。モーターの役割はエンジンのサポート役で、従来どおりの、エンジンのトルクを使って走りを楽しむタイプの乗り味となります。

今回試乗した印象では、割と早くエンジンが始動するというものでしたが、こうした部分はもう少しロングドライブでしっかりとチェックしておきたいですね。ハンドリングのよさは際立っていて、ボディの大きさを感じさせないものです。

RX350走り
レクサスの上級さは十分に備えるRX350

RX350は、シリーズのなかではもっとも非力なモデルとなりますが、それでも279馬力・430Nmと力強いものです。試乗車はFFで、車両重量は約1.9トンでしたが、それが足かせになるようなこともありませんでした。

他グレードと比較すれば、RX350がもの足りなく感じるのですが、これはレクサス(トヨタ)のうまいところで、ユーザーが余分にお金を払えば、ちゃんとその見返りを与えてくれるという印象。クルマ単体でみれば、RX350も十分にレクサスのクロスオーバーSUVらしい高級感にあふれるモデルでした。

●5代目レクサスRXのラインアップと価格:最上位グレードは900万円の500h

RXシリーズ
それぞれに特徴的な個性があるRXシリーズ

5代目レクサスRXは3種のパワーユニットを持ちますが、グレード展開は各パワーユニットで同一ではなく、独自性が持たされています。

最もローパワーとなるRX350は、ラグジュアリーグレードのバージョンLと、スポーツグレードであるFスポーツの2本立て。RX350バージョンLはFFと4WDが設定されますが、Fスポーツは4WDのみです。というよりもRX350バージョンLにのみFFが存在します。

RX350のバージョンLとFスポーツで、最も異なる装備はブレーキ。バージョンLはφ340ブレーキディスク&片押し2ポットであるのに対し、Fスポーツはφ400ブレーキディスク&対向6ポッド。ホイールデザインなども異なりますが、タイヤサイズは同一。FFにはNAVI・AI-AVSが非装備ですが4WDなら両グレードに装備されます。

RX350バージョンLのFFは664万円、4WDは705万円で価格差は41万円、RX350Fスポーツは4WDのみの設定で価格は706万円と、わずか1万円の価格差となっています。

RX450h+はバージョンLのみの設定で、価格は871万円、RX500hはFスポーツ・パフォーマンスのみの設定で900万円となります。RX450hはバージョンLなのでブレーキはφ340ブレーキディスク&片押し2ポット。RX500hはφ400ブレーキディスク&対向6ポッドですが、キャリパーにLEXUSのロゴが刻まれます。

RX500hタイヤ
RX500hはミシュランのパイロットスポーツ4SUVを履く

ホイールはRX350を含めてすべて21×8.0Jですが、バージョンL、Fスポーツ、Fスポーツ・パフォーマンスでそれぞれデザインが異なります。タイヤはどのグレードでも235/50R21 101Wですが、バージョンLとFスポーツはブリヂストンのアレンザ001、Fスポーツ・パフォーマンスはミシュランのパイロットスポーツ4 SUVを履きます。

●5代目レクサスRXのまとめ:クロスオーバーSUVのベンチマーク的存在

RX500hリヤ
RX500hのリヤスタイリング

日本にはハリアーとして導入されたレクサスRXですが、初代からその存在は異彩を放っていました。それまでも、シティ4WDやアーバン4WDなどと呼ばれたモデルも存在しましたが、どうしても土の匂いは消えませんでした。

しかし、レクサスRXはデビュー当時から完全に土の匂いのしないSUVとして登場したのです。人々がSUVという形は求めたものの、オンロードの性能を最重視したことをしっかりと受け止めたクルマ作りは素晴らしいの一言に尽きます。

レクサスSUVシリーズ
左からレクサスSUVのベーシックのNX、中核となるRX、最上位のLX

それでも、当初はオフロードでの性能も確保するためであった4WDが必要でした。SUVを名乗りながらも4WDが存在しないのはおかしいと見られたからでしょうし、実際にオフロード性能を求めるマーケットも数多く存在していました。

この4WDという駆動方式は、今はオンロードでの性能を向上するために生かされている部分も見逃せません。4WDが必要ない状況であるのに残し形骸化するのではなく、その機能を今の性能、今の状況に合わせて進化させたところもRXの素晴らしい部分です。

今やSUV、それもクロスオーバーSUVと言われるジャンルは、世界的に見ても大きなマーケットシェアとなりました。レクサスRXはそのクロスオーバーSUVのジャンルを切り開いてきたクルマであり、これからもそうあり続け、ベンチマーク的存在となることでしょう。

(文:諸星 陽一/写真:小林 和久)

●レクサスRX450h+主要諸元
・寸法
全長×全幅×全高(mm):4890× 1920 ×1700
ホイールベース(mm):2850
トレッド フロント/リア(mm):1650mm/1675mm
・エンジン
排気量(cc):2487
圧縮比:-
 最高出力( kW〈ps〉/rpm):136〈185〉/6000
最大トルク(Nm〈kgm〉/rpm):228〈23.2〉/3600-3700
燃料タイプ:プレミアムガソリン
燃料タンク容量(L):55
・フロント電気駆動モーター
最高出力(kW(ps) /rpm):134(182)/-
 最大トルク(Nm〈kgm〉/rpm):270〈27.5〉/-
・リヤ電気駆動モーター
最高出力(kW(ps) /rpm):40(54)/-
 最大トルク(Nm〈kgm〉/rpm):121〈12.3〉/-
・駆動用バッテリー
化学成分:リチウムイオン
容量(Ah):51
セル数:-
・トランスミッション:電気式無段変速機
・ドライブトレイン:4WD
・燃料消費率(WLTC km/L):18.8
・シャシー
サスペンション(F/R):ストラット/マルチリンク
タイヤサイズ:235/50R21 101W
ホイールサイズ:21×8.0J
ブレーキタイプ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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