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■モビリティのカラーデザインを表彰する希有なイベント
12月13日(火)・14日(水)、一般社団法人日本流行色協会が主催する「オートカラーアウォード2022」が開催されました。このイベントは、自動車やオートバイなど、モビリティのカラーデザインの企画力や美しさを評価する顕彰制度で、1998年から実施されているものです。
24回目となる今回は、10のメーカーから20台がエントリー。初日にオンラインで各社の担当デザイナーによるプレゼンテーションがあり、2日目には東京国際交流館プラザ平成(江東区)にてグランプリの発表と表彰式が行われました。ここでは、その中から四輪車の選考について報告します。
●インテリアやボディカラーのデザイナーが集結
この催しの特徴は、いわゆるCMFデザイナーにスポットを当てていることです。
クルマのデザイナーというと、もっぱら外観を手掛けるエクステリアデザイナーに注目が集まりがちですが、ここではCMF、即ちカラー(色)、マテリアル(素材)、フィニッシュ(仕上げ)と、インテリアやボディカラーを専門に担当するチームが主役なのです。
今回、四輪車のエントリーは、トヨタ「シエンタ」、日産「フェアレディZ」「サクラ」、ホンダ「ZR-V」、マツダ「CX-60」「MAZDA 6」、スバル「レガシィ アウトバック」、三菱「ek X EV」、スズキ「アルト」、ダイハツ「ハイゼット トラック」で、各社自慢のボディカラーや内装色をアピールしました。
クルマのデザイン開発でユニークなのは、エクステリアとCMFで各々のテーマを設けることです。
今回も各メーカーは独自のテーマを掲げていて、たとえばシエンタでは「Emotive life tool – 日常を彩り、愛着が湧くちょっといいモノ」、アルトの「JUST FOR ALL JAPAN – ベーシックカーCMFの極意」など、カラーデザインならではのユニークな発想が感じられます。
●今の時代を本当に反映した色とは?
肝心の審査はデザインの有識者3名によるオートカラーアウォード審査委員と、各メーカーで構成される同協会自動車色彩分科会審査委員により、「優れた企画・発想」「新しい色域への挑戦」「市場への影響」「他業種への影響」などを基準として選考されます。
かなり難航したという審査の結果、本年度はダイハツの「ハイゼット トラック」がグランプリに輝きました(ホンダの二輪車「HAWK11」が特別賞を受賞)。売れ筋のミニバンやスポーツカーを抑えてトラックが受賞とあって、発表の瞬間、会場がざわめいたのが印象的です。
同車のテーマは「CMFの力で”はたらく”をもっと楽しく、快適に!」。軽商用車の常識にとらわれない「アイスグリーン」や「オフビートカーキメタリック」など、3色のボディカラーとブラックのインテリアの提案です。
審査委員の講評では「軽トラックの概念を越えたカラーや、汚れや破れに対応したシート素材など、緻密な現場のリサーチが生きた」「ユーザーに対する愛情が昇華したカラー。社会にもっとも影響を与える仕事である」「フィールドワークによる提案はデザインの原点だと感じられた」といった声がありました。
EVを筆頭にモビリティの進化が叫ばれる中、自然への調和が感じられ、仕事や暮らしに根ざした「実感のあるカラー」が選ばれるところに、この賞のユニークさや、CMFデザインの奥深さが感じられる結果でした。
以下は、授賞式後に聞いた同車担当のデザイン部CMF担当 里舘ひなのさんの声です。
「今回受賞できたのは、働く皆さんの声に寄り添った「気持ち」の部分が評価されたのかなと思います。私自身がトラックユーザーではないので最初は着眼点も分からなかったし、現場では『軽トラはこんなもの』という諦めのような声もあって戸惑いました。
そこからどうやって提案に結びつけるかが大変でしたが、3色のカラー展開をはじめ『キレイさを保つ内装』など、お客様の声に寄り添うことで、CFMデザインが持つ可能性を広げることができたと思います」。
オートカラーアウォードは年に1回のイベントですが、カーデザインの奥深さを知る上で、今後も継続してCMFデザインに注目したいと思います。