国内D1初のバンクドリフトを実現したエビス西コースの復興【D1GP EBISU DRIFT】

■バンクドリフトのカッコよさを知っているか!

バンクを走る齋藤太吾
バンクを走る齋藤太吾

D1GPの2022年最終ラウンドとなる第8戦・第9戦は、第4戦・第5戦と同じエビスサーキット西コースで行われました。

しかし、同じ場所ではありません。西コースの一部として出来上がったばかりのバンクを使って開催されたのです。このバンクが出来たいきさつと、走った選手の声を紹介しましょう。

アーウィンデールを走る熊久保選手
2006年。アーウィンデールのバンクを走る熊久保選手。

まず、D1選手やD1ファンで、「バンク」と聞いて思い浮かべるのは、2000年代にアメリカで開催していた頃のアーウィンデール・スピードウェイのバンクでしょう。

もともとNASCARに使われるオーバルコースで開催されたD1では、バンク部分も審査区間に入っていたのですが、アクセルONで、もうもうと白煙を上げながらバンク上段をキープして走るドリフトは本当にカッコよく、アメリカのファンが熱狂したのも、このバンクのおかげがあったのではないかと思うほどです。

熊久保社長
大会のオープニングで挨拶をする熊久保社長。

そして、2006年にそのアーウィンデール・スピードウェイでの最終戦でチャンピオン獲得を決めたのが、エビスサーキットの熊久保社長です。熊久保社長はバンクを走る気持ちよさも、見た目のカッコよさも熟知していて、前々からバンクをエビスサーキットに作りたいと思っていたそうです。

西コースバンク
西コースのバンク全景。上の生えていない場所が土砂崩れが起きた箇所です。

いっぽう、2021年2月に福島県は最大震度6強の地震に襲われました。そして、エビスサーキットでは土砂崩れが起こり、西コースはその土砂で寸断されてしまったのです。

エビスサーキットでは、クラウドファンディングなどを行って復旧を目指しましたが、流入した土砂を運び出す費用がかさむことがわかりました。土砂をすべてコース外へ運び出すのは予算的に難しい。しかし、残してしまうとコースが成立しない。

どうやってコースを直そうか…と考えていた地震から6ヵ月後くらいの時期に、「バンクにしよう」と思いついたそうです。

そもそも、元通りの西コースになったところで、それは100%に戻ったにすぎない。それより120%までコースの価値を高めたほうが、寄付をしてくれた方、お客さんに恩返しができると考えて、バンクを作ることになりました。

●2023年からは一般利用者も走行可能に

集合写真風景
選手の集合写真を撮るときの様子。この角度ならバンクの傾斜がわかりやすいでしょう。

バンクができあがったのは2022年の秋。まだ一般利用者には開放しておらず、D1GPがお披露目のような形です。

バンクの傾斜は18%で、前述のアーウィンデール・スピードウェイのバンクが20%だそうなので、ほとんど同じ傾斜です。アーウィンデールのバンクがハーフバンク(半周のバンク)であるのに対して、このバンクがクオーターバンク(約4分の1周)だということもあって写真では伝わりづらいのですが、バンクの中はなかなかの傾斜です。

実は18%という傾斜は、舗装をひく通常の機械の限界の傾斜で、これ以上になると特殊な機械が必要になるのだそうです。

この西コースのバンクは、2023年春には一般利用者も使えるようになる予定なので、見るだけではなく走っても楽しめるようになります。

かつては、ジャンピングドリフトで世界に知られた南コースがドリフト用ではなくなってしまいましたが、今度はこのバンクがエビスサーキットの新しいドリフトの名所となりそうです。

いっぽう熊久保社長は、「アーウィンデールみたいなバンクに憧れて今回バンクを作ってみたけど、どこかにまたハーフバンクを作りたいという気持ちがますます強まった」ということなので、いつかはそんなコースが見られるかもしれません。

●バンクは甘くない! 覚悟して駆け上がれ

今回のD1GPでは、このバンク頂点近くのアウト側に通過指定ゾーンが設けられ、そこを通過しつつ、いかに角度をつけたまま、姿勢変化も少なく、車速を維持して走れるかが高得点のカギとなりました。

バンク入口遠景
ストレートを加速していったマシンは、S字コーナーのような区間を通ってバンクを駆け上がります。

実際に走ってみた感想を選手にも聞いてみましたが、まず練習走行から早々に高得点を出していた横井選手は、「手前で速度がのるので、どこかで減速しないといけないけど、減速のタイミングが早すぎるとアウトまで行けないので、サイドブレーキでドリフトを伸ばさないといけなくなる(※そうすると点が低くなる)。アクセルを入れてある程度登り始めてから減速を入れないといけないので難しい。それから、ドリフト状態で登っていくから、フロントが走って欲しいところなんだけど、傾斜のせいか転がってくれない」ということで、フロントに関してはセッティング変更をしたそうです。

また、第9戦で単走優勝した蕎麦切選手は、「めっちゃ止まる。思ったより登っていかなくて難しいです。平坦なコーナーでの距離感だとぜんぜんドリフトが届かないので、思いきって奥で振り返していかないと距離感が合わない。でも、アウト側にはコンクリートウォールがあって、行き過ぎたらクラッシュしてしまうので、距離を合わせるのに時間がかかりました。でも、壁沿いを走るとスカッとするのと、バンクで止まるので、ウリャーっと思いきって飛び込める楽しさがありますね」と話してくれました。

●末永選手が2連勝し、チームメイトの横井選手がシリーズ優勝

さて、その第8戦と第9戦ですが、まず第8戦は齋藤太吾選手が単走優勝し、追走では末永正雄選手が優勝。

第9戦は蕎麦切広大選手が単走優勝しましたが、追走トーナメントでは、準決勝の対戦の途中でクラッシュしたクルマの部品が観客席に飛び込んでけが人が出てしまいました。

すぐにその対策をするのが難しいとの判断から、ベスト8終了時点で競技は終了。ベスト4進出選手に関しては、単走の順位によってラウンド順位も決まり、またしても末永正雄選手が優勝となりました。

このラウンドの結果、シリーズチャンピオンは末永正雄選手のチームメイトである横井昌志選手に。そして単走シリーズチャンピオンは川畑真人選手に決まりました。

2023年のD1グランプリシリーズは、5月13日、14日、滋賀県・奥伊吹モーターパークで開幕です。

D1GPの情報は公式サイトをご覧ください。

(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス、まめ蔵)

【関連リンク】

D1GP 公式サイト
https://d1gp.co.jp

この記事の著者

まめ蔵

まめ蔵 近影
東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦。好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。