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■広い室内空間で楽しさを追求したボクシーなハイトワゴン
1996(平成8)年11月18日、ホンダから“クリエイティブムーバー”第4弾の「S-MX」がデビューしました。
クリエイティブムーバーとは、生活を楽しむことを追求した新発想のクルマづくりで、「オデッセイ」「CR-V」「ステップワゴン」に続く第4弾がS-MXです。
●クリエイティブムーバーと呼ばれた新発想の個性的なモデル
ホンダは、1990年代クリエイティブムーバーというコンセプトのクルマづくりを進めました。
クリエイティブムーバーとは、“クルマは、使う人が思いのままに創造・演出するための道具であり、主人公はあくまで人”であるとする新発想のクルマを指します。
クリエイティブムーバーとして登場したのは、第1弾「オデッセイ(1994年)」、第2弾「CR-V(1995年)」、第3弾「ステップワゴン(1996年)」、そして第4弾が「S-MX」です。
オデッセイとステップワゴンは、多彩なシートアレンジで多人数が楽しめる3列シートのミニバン。CR-Vは、最低地上高を確保してオフロードも楽しめると同時に、広い車室でシートアレンジも配慮されたSUV。そして、S-MXは、2列シートのコンパクトハイトワゴンでした。
すべてに共通するのは、広い室内空間と多彩なシートアレンジなど、乗員が楽しめることを重視している点です。
●コンパクトハイトワゴンのパイオニアとなったS-MX
S-MXは、ステップワゴンをベースに全長を55mm短縮した個性的なボクシーなスタイリングと、広い室内空間が特徴。前後2列のベンチシートは、完全フラット化することができ、車中泊にも対応可能でした。ドアはスライド式ではなくヒンジタイプで、右側後部のドアがない変則的な3ドアレイアウトが個性を発揮しました。
パワートレインは、低中速トルクを重視した2.0L直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFベースで、4WDも用意されました。
若者向けのユーティリティに優れたS-MXは、当初は6000台を超える好調な販売を記録。しかし、その後はライバルの出現によって、販売は徐々に低迷し、2002年に1代限りでホンダの歴史の中から消えてしまいました。
●キューブとbBの登場によってS-MXの人気は下降
S-MXの販売低迷の原因となったライバル車は、日産自動車「キューブ(1998年)」とトヨタ「bB(2000年)」です。
日産キューブは、キューブ(立方体)の名の通り斬新な立方体のフォルムで、柔らかいキュートな雰囲気のハイトワゴン。トヨタbBは、その名の通りボクシーでシンプルな男性的なワイルドなハイトワゴン。いずれも、個性的なスタイリングと広い室内空間、多彩なシートアレンジが特徴でした。
基本的には、S-MXと同じコンセプトでしたが、比較的安価に設定されたこともあり、若者やヤングファミリー層から高い支持を受け、S-MXの影は薄くなってしまったのです。
S-MXに続いたキューブもbBも、人気は長く続きませんでした。コンパクトハイトワゴンのお株を奪うような、広い室内空間や快適装備を駆使した軽のスーパーハイトワゴンが現れ、市場を奪われてしまったのです。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。
(Mr.ソラン)