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■サーキットを楽しむための至高のマシン、ダラーラ・ストラダーレEXP
イタリアとイタリア車をこよなく愛する越湖信一さんが、「ダラーラ・ストラダーレEXP」の日本上陸をリポート。
ジャンパオロ・ダラーラその人が「私たちがレースの世界から学んだことのすべてが詰まっている」と語る渾身のサーキット専用車は、一体どんなクルマなのでしょうか。富士スピードウェイで、その実力の一端が明らかにされたようです。
●フェラーリやランボルギーニの開発もサポート
イタリアのパルマ郊外、ヴァラーノ・デ・メルガーリに位置するこの小さな自動車開発コンサルティング・メーカーであるダラーラ社は、フェラーリやランボルギーニをはじめとする多くの市販モデルのヴィークル・ダイナミクスや空力解析に引っ張りだこ。世界中のスポーツカー・メーカーにとって、彼らの役割はとても大きいのです。
さらに、北米のインディレースやスーパーフォーミュラ、そしてフォーミュラEにおいて唯一のシャーシ供給メーカーでもあります。
つまり、現在のレースカーを含むスポーツカーの世界において、無くてはならない存在なのですが、そのダラーラ社もコロナ禍から抜けだして、現在フル稼働中ということです。
●ミウラを作った男の「理想のロードカー」、ダラーラ・ストラダーレ
そのダラーラ社を立ち上げたのは、あのランボルギーニ・ミウラを作った男、ジャンパオロ・ダラーラ。そのジャンパオロの夢から生まれた理想のロードカーがダラーラ・ストラダーレです。
ダラーラ・ストラダーレは乾燥重量855kgという“非常識な”軽量さを持ちながらも、フォーミュラカーに匹敵する高い強度を持つCFRP製センターモノコックを備えるライトウエイト・ミッドマウントスポーツカーです。
公道走行のホモロゲーションを獲得しながらも、安全にサーキット・ランも楽しむことができるこの限定生産スポーツカーの生産も順調に進んでいるということです。
そう、彼らはダラーラス・トラダーレをひっさげて自動車メーカーとしてのデビューも飾ったため、そこでも大忙しなワケです。
●ダラーラ・ストラダーレの強化版「EXP」とは
ダラーラ・ストラダーレはダラーラ社の専用ファクトリーにてハンドメイドで仕上げられ、デリバリーが始まっています。昨年にはサーキット専用モデル、ダラーラストラダーレEXPの追加も発表され、ダラーラ社創立50周年を迎える本年、遂にデリバリーが始まりました。
このEXPはロードユースも可能なノーマルモデルをベースに、ノーマル比25%アップの500ps、40%アップの700Nmを発揮する、よりハイパワーなパワートレインを搭載。スリックタイヤ装着のための新たなサスペンション・セッティングとブレーキの強化が施されています。結果、そのパフォーマンスはGT3クラスを軽く凌ぐものとなっているのです。
このEXP用に開発されたコンポーネンツはノーマルモデルとも互換性があるので、既存のダラーラストラダーレ・オーナーもこれらを組み合わせてアップデートすることが可能です。
●プライベート・サーキットブームにもうってつけの1台
さて、早くも日本にデリバリーされたEXPを、オフィシャル・インポーター(ダラーラ社はアンバサダーと呼ぶ)であるアトランティックカーズが富士スピードウェイへと持ち込み、オフィシャル・ローンチが行われました。
イタリアからダラーラ・ストラダーレEXPのプログラム・マネージャーであるダニエッレ・グァルナッチャが駆けつけ、シェイクダウンへの万全の準備が行われたのです。
残念ながら当日はかなりの豪雨に見舞われ、ウェット・コンディションとなってしまいましたが、ダニエッレとも旧知の田中哲也氏がステアリングを握り、周回を繰り返しました。
「セッティングは完璧でした。レインタイヤを装着しましたが、こういった悪条件下においても強力なダウンフォースを安定して発揮するEXPのポテンシャルを皆、理解してくれたはずです」とダニエッレ。
このEXPは、世界最大のスポーツカーマーケットでもある北米へのデリバリーも始まっています。現在、世界各地でプライベート・サーキットの設立がブームとなっていますが、ここ北米でその動きは顕著であり、このEXPに関しても強い引きがあるということです。
ダラーラ社は今年創業50周年を迎えますが、ジャンパオロ御大が創立以来強く抱き続けている信念は、安全性を極めたスポーツカー作りです。
ハイパワーを誇るスポーツカーは山のように存在しますが、サーキット走行における安全性にここまでこだわったクルマはないと断言できます。このダラーラストラダーレEXPが、スポーツカーの楽しみ方をさらに広げてくれることは間違いないでしょう。
(文:越湖 信一/Special Thanks: Atlantic Cars, Dallara)