ホンダ「ZR-V」は、シビック譲りのスポーティな走りで、乗り心地や静粛性のレベルも高い!

■ライバルは、トヨタ・カローラクロス、C-HR、SUBARUクロストレック、マツダCX-30など

ホンダ「ZR-V」は、半導体不足などを理由に2022年秋から2023年春に発売が延期されました。ただし、先行予約はすでに開始されています。

ホンダ ZR-V
新型ZR-Vの走行シーン

新型ZR-Vは、CR-Vとヴェゼルの間を埋めるSUVとして位置づけられています。ボディサイズは明らかにされていませんが、北米向けの3代目HR-Vは、全長4567×全幅1839×全高1610mm。

なお、2022年8月に生産を終えたCR-V(2022年10月17日現在、ホームページでは在庫販売の主旨が記載されています)は、全長4605×全幅1855×全高1680mm。ヴェゼルは、全長4330×全幅1790×全高1580mm。

CR-Vでは大きすぎる、ヴェゼルでは少し狭く感じる層にとってジャストといえるサイズになるはず。

ホンダ ZR-V
「e:HEV」の「Z」グレード

価格は明らかにされていませんが、ボディサイズ的には、トヨタではC-HRとカローラクロス、マツダCX-30、新型SUBARUクロストレック、三菱エクリプス クロスあたりと競合しそうです。

そのほか、トヨタ・ハリアーやRAV4、マツダCX-5、日産エクストレイルなど、少し大きなクラスと比較する人もいるかもしれません。

ホンダ Z-RV
低く構えたフォルムが印象的

さらに、欧州CセグメントSUVであるフォルクスワーゲンT-Roc、アウディQ3、プジョー3008などもサイズ、クラス的には近くなっています。なお、開発陣によるとベンチマークは設定しなかったとしつつも、走りの面では某ドイツ製SUVを意識したようです。

●ハイブリッド仕様、ガソリンエンジン車ともに「X」と「Z」グレードを設定

徹底的に走りを磨き上げたというZR-Vは、プラットフォームはシビック・ベースではあるものの、正確に言うとフロントがシビック、リヤ後半(フロア後半部やサスペンションなど)はCR-Vだそう。

ホンダ ZR-V
2.0Lエンジン+2モーターの「e:HEV」と1.5Lガソリンターボを設定する

パワートレーンは、シビック譲りの2.0L直噴エンジンと、2モーターハイブリッドシステムを組み合わせたスポーツe:HEVをSUVに初搭載。さらに、1.5Lガソリンターボも設定されています。

シビックはFFのみになっていますが、SUVのZR-Vには、FFとAWDが両パワートレーンに設定されています。現行シビックでもキャッチコピーどおり、爽快な走りを披露してくれる両パワートレーンですので、加速性能や加速フィールに大きな期待を寄せている方も多いはず。

ホンダZR-V
「e:HEV」のインパネ

グレード展開は、スタンダードタイプの「X」、上級の「Z」を設定。なお、弟分となるヴェゼルは、ガソリンエンジン車が「G」のみであるのに対し、ZR-Vは、ハイブリッド仕様もガソリンエンジン車にも平等に「X」と「Z」が用意されています。

ホンダ ZR-V
ガソリンエンジン車のシフトレバー、センターコンソールまわり

「ホンダ・センシング」は全車標準で、「Z」にはHonda CONNECT for Gathers+ナビ装着用スペシャルパッケージ、10.2インチ デジタルグラフィックメーター、ドライブモードスイッチ(NORMALモード、SNOWモード、ECONモード、SPORTモード)、パワーテールゲート(予約クローズ機能付)などの充実装備が用意されています。

●スポーティな走りと快適性を高次元で両立

試乗ステージは、自転車競技だけでなく、クルマの走行会などでもお馴染みの群馬サイクルスポーツセンター。自動車メーカーのテストコースと比べて、荒れた路面もあり、多彩なコーナーや勾配が連続し、クルマで走らせるにはなかなか厳しい環境といえるでしょう。

ホンダZR-V
新型ZR-Vの走行シーン

ZR-Vでまず印象的なのは、フロントシートの乗り心地と静粛性の高さ。とはいっても、ホンダらしいスポーティなハンドリングと両立しているのが光ります。さらに、ライントレース性が高く、最大の魅力である正確なハンドリング、フットワークの高さを存分に享受できます。どんなコーナーでも操舵が一発に決まるため、運転が上手くなったような気分に浸れます。

ホンダZR-V
ZR-Vのフロントシート。シートサイズの大きさが印象的

想像するよりも、ロードノイズや車内のこもり音も良く抑えられていて、後席に座るとリヤのタイヤハウスあたりから音や振動が若干伝わってくるものの、ライバルと比べても十分に静かで快適といえるレベルにありそう。

やや路面からの当たりが強めに感じられるシビック(とくに1.5Lガソリンターボ仕様)と比べても、車重が重く、全高が高い分だけストローク感もあるZR-Vは、乗り心地の面では良い方に作用していそう。

上級仕様の「Z」に搭載されている走行モードをSPORTすると、エンジン回転が高まり、鋭い中間加速を堪能できます。

ホンダZR-V
ZR-Vのリヤシート

人気になりそうなのは、ハイブリッドの「e:HEV」でしょう。2.0Lエンジン+2モーターの同ハイブリッドは、2モーター内蔵電気CVTとの組み合わせ。モーターの最大トルクは、3.0Lガソリンエンジン並の315Nmに達するため、上り勾配もグイグイと加速させていきます。

一方の1.5Lガソリンターボも、過給してから加速フィールは痛快といえるレベルで、全体的に軽快なフットワークを享受できます。

ホンダZR-V
ZR-Vのメーターディスプレイ

また、FFとAWDでは、走行時に雨が降っていたためAWDの安定感が光りました。ただし、FFの軽さは捨てがたく、1.5LガソリンターボとFFの組み合わせでも十分に走りを楽しめそうです。非降雪地域で4WDを必要としないのならFFを選択する手も十分にアリです。

一方の4WDも通常走行時は、FF中心で、コーナリング時や滑りやすい路面で後輪に駆動力が配分され、「タイヤ4輪の利用率の最適化」もあり、コーナーでの安定感やコントロールのしやすさでFFを上回るのも事実。山岳地帯や降雪地域であれば迷わず4WDをチョイスしたいところ。

さらに、デュアルピニオン化された電動パワステは、切り始めから違和感がなく、剛性感を抱かせるのも美点です。

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ZR-Vのエクステリア

ZR-Vで賛否両論ありそうなのは、現在では小さめに感じる開口部と縦基調のフロントグリルでしょう。

低く構えたように見える実車は、写真よりもスポーティに映りましたが、良くも悪くも個性的で、好みが分かれそうなのは間違いなさそう。スタイリングに惚れれば、走りの良さに加えて、後席の足元空間の広さなど使い勝手の面での実利も十分に享受できます。

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ZR-Vのラゲッジスペース

ライバルとの比較では、カローラクロスが199万9000円〜319万9000円。ZR-Vの価格は正式発表されていないものの、ディーラーで先行予約を受け付けていて、カローラクロスよりも高めの設定になっているようです。

ZR-Vは、ハリアーの下位グレードとも競合しそうな価格設定でこの点も売れ行きを左右するかもしれません。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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