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■トライアル世界選手権とXトライアルでそれぞれ16連覇
ホンダのワークスチーム「レプソル・ホンダ・チーム(Repsol Honda Team)」に所属するトニー・ボウ選手が、9月17日に開催された「2022FIMトライアル世界選手権シリーズ(以下、トライアル世界選手権)」第6戦イタリア大会で、年間チャンピオンを獲得。トライアル競技の世界最高峰シリーズで、16年連続16回目の王者に輝きました。
しかも、ボウ選手は、もうひとつのトライアル世界最高峰「FIM X-Trial世界選手権(以下、Xトライアル)」でも年間タイトルを獲得しており、こちらもなんと16連覇。
世界の2大選手権で計32連覇という前人未到の記録を打ち立てました。
●2007年から16年連続ダブルタイトル獲得
トライアルとは、高低差や傾斜が複雑に設定され、途中にはさまざまな障害物が設けられたセクションと呼ばれるコースを、いかにバイクに乗ったまま足を着かずに走り抜けるか競う競技です。
その世界最高峰といえる選手権シリーズには2種類あり、今回ボウ選手がタイトルを獲得した「トライアル世界選手権」は、主に5〜9月に開催されるシリーズ。別名「アウトドア」とも呼ばれ、自然の地形を活かしたコースを使い、ダイナミックな走りを楽しめることが魅力です。
また、主に冬から春にかけて行われる「Xトライアル」は「インドア」とも呼ばれ、野球場などのスタジアム内に設置された人工的な競技区間で行われ、豪快な走りと、ライトアップなどによる華やかな雰囲気が人気です。
その両方の選手権で、それぞれ16年連続王者、合計で32連覇を達成したトニー・ボウ選手は、スペイン生まれの32歳です。
トライアル選手権には2003年にデビューし、2007年にホンダのワークスチームに移籍。その年に、トライアル世界選手権とXトライアルでダブルタイトルを初獲得した後、2022年シーズンまで両シリーズで16連覇を達成したという、まさにトライアル界の絶対王者なのです。
●最終レースを残して偉業を達成
2022年シーズンのトライアル世界選手権で、ボウ選手は、ホンダのワークスマシン「Montesa COTA 4RT」で参戦。
ちなみに、このマシンは、水冷4ストロークOHC単気筒エンジンを、アルミニウム製ツインチューブフレームに搭載したトライアル競技専用車です。
トランスミッションは4速で、タイヤにはフロント21インチ、リヤ18インチを採用。車両重量は70kgという超軽量マシンです。
ホンダが誇るワークスマシンを駆るボウ選手は、1大会2レース制で行われるシリーズで、開幕戦スペイン大会を1レース目2位、2レース目優勝と幸先のいいスタートを切ります。
その後も、第2戦アンドラ大会で2位と優勝を獲得。続く第3戦ドイツ大会では2レースとも優勝を飾りシーズンを前半からリード。
サマーブレイク(夏休み)明けの第4戦ベルギー大会、第5戦フランス大会でも連勝し、今回のイタリア大会1レース目でも2位を獲得します。
そして、これにより、ポイントランキングで2位を大きく引き離し、最終レースとなる2レース目を残して16連覇を決定。しかも、2レース目は優勝もし、有終の美を飾っています。
●ポイントを獲得し続けることが重要だった
今回の偉業達成について、ボウ選手は以下のようなコメントを発表しています。
「世界タイトルの獲得は、常に特別な経験です。ポイントでリードしていて、タイトルがかかっているレースは、いつもとは少し違います。なぜなら、タイトル獲得のためにはミスができないですし、集中力を保つのが難しいからです。
最初のラップで2つの大きなミスを犯してしまい、そこで優勝は遠のいてしまいました。2周目には、優勝争いに加わることができましたが、最終的には優勝できませんでした。
(今回大会が開催された)イタリアのファンはとても熱く、(会場となったイタリア内の)アルプスでのトライアルは、本当に美しいものでした。
今シーズンに関しては、ポイントを獲得し続けることが重要でした。非常に安定して戦えて、常に表彰台に立つことができました。私たちは最終戦まで戦い抜き、ついにこの新しいタイトルを獲得することができました。チームにとても感謝しています」
さて、ボウ選手とホンダの連勝街道がいつまで続くのか? 2023年シーズンも期待大です。
(文:平塚直樹)