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■ワンランク上の快適性を追求したステーションワゴン
1999(平成11)年9月15日、ホンダから上級ワゴン「アヴァンシア」が発売されました。アヴァンシアは、セダンのような高級感と広い室内空間をコンセプトに開発。先にデビューしたアコードワゴンより、ワンランク上の層をターゲットにした次世代上級ワゴンです。
●レガシィツーリングワゴンが牽引したステーションワゴンブーム
1990年代半ば、バブル崩壊の反動でセダンが低迷し、様々なレジャーに使えるマルチユースのステーションワゴンブームが起こりました。ブームに火を付け、けん引したのは、1989年にデビューした初代および2代目「レガシィツーリングワゴン」でした。多くのメーカーからステーションワゴンが競い合うように登場し、当時の市場を席巻しました。
それまでのワゴンは、お洒落で楽しむクルマではなく、商用車バンのイメージが強く、マイナーな存在でした。ところがレガシィツーリングワゴンは、パワフルなエンジンを搭載したスタイリッシュなデザインの楽しむクルマ、ステーションワゴンという新しいジャンルを誕生させたのです。夏はサーフィンやキャンプ、冬はスキーなどウィンタースポーツを楽しむクルマとして多くの若者の心を掴みました。
●ブームに乗れなかった上級志向のステーションワゴン
アヴァンシアは、セダンのような高級感と広い室内空間をコンセプトに開発された次世代上級ワゴンです。
プラットフォームは、米国生産のシビックを使い、4ドアにテールゲートを備えた高級感を意識させる流麗なフォルムを採用。最大の特長は、ゆとりの車室空間であり、後席は大人がゆったりできるスペースを確保し、さらに前席の中央に空間を持たせることで前後席間のウォークスルーも可能としました。
パワートレインは、2.3L直4 OHC 16Vエンジンと4速AT、3.0L V6 OHC 24Vエンジンと5速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意され、前後ともダブルウィッシュボーンのサスペンションによって、高級セダン並みの乗り心地が実現されました。
アヴァンシアは、クルマとしての完成度は高かったのですが、残念ながら多くのユーザーにその魅力は伝わりませんでした。ステーションワゴンを好んだ若者にとっては、高級感よりもスポーティさや利便性の方が重要だったのかもしれません。
●ステーションワゴンが衰退したのは、ミニバンとSUVの躍進
1990年代に一世を風靡したステーションワゴンですが、2000年を迎えると人気に陰りが見え始めました。
人気低迷の理由は、SUVとミニバンの台頭です。多人数が乗れて荷物も運べるファミリー志向のミニバンと、アウトドアでマルチに使えるSUVの、目的や使い方が明確な2つのジャンルのクルマが急速に市場を拡大。その結果として、ステーションワゴン市場が縮小したのです。
一方欧州では、SUVも人気ですが、ステーションワゴンが今も根強い人気をキープしています。長距離でも疲れず、高速走行の安定性に優れて荷物も積めるステーションワゴンが、レジャー目的には適しているのです。
アヴァンシアが人気獲得に苦しんだ理由は、ライバルが多い中で上級ワゴンが市場で受け入れなったことに加えて、登場時期がブームの下降気味のタイミングで遅かったことが影響しているのではないでしょうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)