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■ライダーは全日本で活躍中の黒山健一選手
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、新型の電動トライアルバイク「TY-E2.0」を、世界最高峰「2022年FIMトライアル世界選手権」シリーズの第5戦フランス大会に出場させることを発表しました。
TY-E2.0は、ヤマハが2018年に発表した初代モデル「TY-E」をベースに、各部をアップデートした最新の電動トライアルマシンです。
今回出場するのは、ガソリン車と電動車が混走する「トライアル2」クラスで、ライダーは初代モデルでも世界挑戦の実績がある黒山健一選手。決勝は2022年8月28日(日)に行われます。
●トライアル世界最高峰に電動バイクで挑戦
ヤマハが2022年3月に発表し、バイクの一大祭典「第49回 東京モーターサイクルショー」(3月25日〜3月27日・東京ビッグサイト)にもお披露目されたのがTY-E2.0です。
製品ライフサイクル全体のカーボンニュートラルを目指す目標に向けたアプローチのひとつとして開発されているこの電動バイクモデルは、前述の通り2018年に初代モデルのTY-Eが登場。
2018年と2019年には世界選手権「トライアルEカップ」へ出場し、今回もライダーを務める黒山選手のライディングで、2年連続のランキング2位を獲得しています。
ちなみにトライアルとは、山間部などの高低差や傾斜が複雑に設定されたセクションと呼ばれるコースを、いかにバイクに乗ったまま足を付かずに走り抜けるかを競う競技。
なかでも、今回ヤマハが挑戦するFIMトライアル世界選手権は、その世界最高峰の大会だといえます。
●TY-E2.0とはどんなバイク?
では、TY-E2.0は、どんな特徴を持った電動トライアルバイクなのでしょうか?
まず、車体には初代モデルをベースに、新設計のCFRP製コンポジット(積層材)モノコックフレームを採用。パワーユニットやバッテリーのレイアウトを見直すことで、前モデルとの比較で大幅な低重心化を達成しています。
パワーユニットも熟成。クラッチやフライホイールなどのメカニズムと、微妙なグリップの変化を読み取る電動モーター制御の組み合わせにより、トラクション性能なども向上しています。
ほかにも、前モデル比で約2.5倍の容量を持つ新開発の軽量バッテリーを搭載するなどで、より戦闘力をアップ。車体サイズは全長2003mm×全幅830mm×全高1130mm、ホイールベース1310mm。車両重量は70kg以上です。
●乗って楽しい電動バイクに期待
そんなTY-E2.0が、今回挑戦するのは、前述の通り、2022 年FIMトライアル世界選手権の第5戦フランス大会で開催されるトライアル2クラスです。
このクラスは、2022年シーズンから、ヤマハもかつて参戦した電動トライアルバイクのレースであるトライアルEカップを吸収し、ガソリン車と電動車が混走するレギュレーションになりました。
そして、ライダーは、これも前述の通り、黒山選手。全日本選手権で11回のチャンピオンに輝き、世界選手権では最高ランキング3位を獲得している実力派です。
2022年シーズンは、主に全日本選手権のIAスーパーに出場しており、開幕戦で優勝するなど大活躍。4戦を終えた時点でランキング2位につけています。
なお、黒山選手は、今回のチャレンジについて以下のコメントを発表しています。
「TY-E 2.0は、カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発だけでなく、レースを通じて開発することでEVに楽しさを加えようというヤマハ発動機らしいプロジェクトです。
レース部門と開発部門が協力し合うプロジェクトですが、それぞれが経験と知識を総動員し、全員が同じ方向を向いて取り組んできました。私も開発ライダーとして関わってきましたが、その成果を確認するレースに出場できることが楽しみであり、とても誇りに思います。
またこのプロジェクトは、ヤマハ発動機の未来だけでなく、モーターサイクルやレースの未来にも影響するものだと考えています。2輪ファンやヤマハファン、レースファンのためにという気持ちを持って臨み、開発を進める上での貴重なデータと課題をできるだけ多く持って帰りたいと思います」
ヤマハはTY-Eの開発について、「FUN×EV」というコンセプトを掲げ、CO2を排出せず、しかも乗って楽しい新しいモデルを創出することを目的にしているといいます。
TY-E 2.0と黒山選手の世界挑戦がどんな結果になるのかはもちろん、将来的にこのチャレンジが「エコで楽しい」画期的なバイクの誕生に繫がることにも期待したいですね。
(文:平塚直樹)