これが未来のスポーツバイク? トライアンフが177psの電動ネイキッド「TE-1プロトタイプ」を公表

■エコで俊敏な電動スポーツバイクの未来

カーボンニュートラルに向けた世界的な電動化の潮流は、4輪車だけでなく、確実に2輪車の世界にも押し寄せていて、国内外のバイクメーカーでも、さまざまな電動バイクの開発を進めています。

トライアンフが電動スポーツバイクTE-1プロトタイプ公表
モーターなどはインテグラル・パワートレインが手掛けた(写真は2021年3月のフェーズ2発表時)

そんな中、イギリスのバイクメーカー「トライアンフ・モーターサイクルズ(以下、トライアンフ)」が、英国政府からの資金援助を受け、協業各社と2019年から開発を進めていた電動スポーツバイク「TE-1」のプロトタイプを公表しました。

同社の「スピードトリプル1200RS」などに非常によく似たネイキッドスポーツのフォルムを持つこのモデルは、最高出力177psという高い動力性能を発揮。

公道はもちろん、サーキットでも行われた実走行試験では、優れた加速性能とハンドリング性能も両立させているそうで、培った技術などは次世代のトライアンフ製バイクへ投入されるといいます。

●4輪レースの有名企業も開発に参加

今回公表された「TE-1」は、トライアンフが英国政府のゼロエミッション車両局(OZEV)から資金提供を受け、2019年5月から進めてきた電動バイクのプロジェクトによって作られたプロトタイプモデルです。

開発には、F1のコンストラクターとして名高い「ウイリアムズ」から分社化し、電動車のF1ともいえる「フォーミュラe」マシン向けバッテリーなどを供給する「ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング」も参画。

トライアンフが電動スポーツバイクTE-1プロトタイプ公表
プロジェクトに参画した企業や団体

また、自動車部品メーカー「インテグラル・パワートレイン」のe-Drive部門が、電動モーターやSiCインバーターなどを開発しています。さらに、ウォーリック大学が、より低い排出負荷と優れた性能を両立させるための研究成果を提供するなど、産学一体のコラボレーションにより実施されたのがこのプロジェクトなのです。

トライアンフが電動スポーツバイクTE-1プロトタイプ公表
TE-1プロトタイプのデザインスケッチ(写真は2021年3月のフェーズ2発表時)

●重量220kg、20分で80%の充電が可能

こうした4社共同開発によってプロトタイプが完成したTE-1は、以下のような特徴を持っています。

■161kmの航続距離…現在市販されている同クラスの電動モーターサイクルの実走行距離を大幅に上回り、実走行試験でカテゴリートップの161kmを達成(公式予測値)

■130kW(177ps/175bhp)の最高出力…ハイスペックなパワーにより、0-60mph加速3.6秒、0-100mph加速6.2秒という驚異的な加速を実現

■20分の充電時間(0〜80%)…現在市販されている同クラスの電動モーターサイクルよりも充電時間が早く、英国政府の研究機関Innovate UKが設けた基準もクリア

■車両重量220kg…現在市販されている同クラスの電動モーターサイクルより最大25%の軽量化で、優れたパワーウエイトレシオを実現

なお、このマシンには、トライアンフの高性能ネイキッドで、1160cc・3気筒エンジンを搭載する「スピードトリプル1200RS」を彷彿とさせるスタイルを投入。トライアンフのDNAを100%宿したデザインとスタイルによる高い存在感も演出しています。

トライアンフが電動スポーツバイクTE-1プロトタイプ公表
スピードトリプル1200RS

パワーは、最高出力177ps・最大トルク109N・m(11.1kgf-m)。スピードトリプル1200RSの最高出力180ps・最大トルク125N・m(12.7kgf-m)に匹敵する動力性能を実現しています。

さらに、出力制御でも、スピードトリプル1200RSと同等のスロットルおよびトルクマッピングなどを投入。スリリングなフィーリングとニュートラルなハンドリングを実現しているといいます。

●トルクフルなスロットルレスポンス

このマシンは、前述の通り、公道やサーキットで実走行試験も行われましたが、最終テストでは、アメリカの有名レース「デイトナ200」のチャンピオンレーサーであるブランドン・パーシュ選手も参加。エンジン性能評価とサーキットテストによるプロトタイプの最終セットアップに参加しています。

トライアンフが電動スポーツバイクTE-1プロトタイプ公表
TE-1プロトタイプをテストしたブランドン・パーシュ選手

テストしたパーシュ選手は、このマシンについて

「TE-1のスロットルレスポンスは信じられないほど非常にトルクフル、そしてスロットルを開けると瞬時にパワーを発揮します。

レーサーの私は強いトルク感と瞬発的な立ち上がりが大好きなので、本当に素晴らしい経験でした」

といったコメントを発表。TE-1プロトタイプの性能を高く評価しています。

トライアンフが電動スポーツバイクTE-1プロトタイプ公表
バッテリーなどはウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングが開発(写真は2021年3月のフェーズ2発表時)

さらに、開発チームは、TE-1について、

「トラクションコントロールシステムや前輪リフトコントロールなどの電子制御システムをさらに改良することで、より性能向上が期待でき、トルクのポテンシャルを最大限に引き出し、より速い発進や加速が可能となる」

と考えているそうです。

なお、トライアンフでは、プロジェクトを通じて培われた専門知識や技術などを、将来的に同社製の電動バイクにフィードバックすると言及しています。

トライアンフが電動スポーツバイクTE-1プロトタイプ公表
TE-1プロトタイプのテールライト

さて、どんなモデルが出現するのか? 電動化されても、スポーツバイクらしいエキサイティングな乗り味や、爽快なハンドリングなどを持つマシンの登場を期待したいものです。

なお、TE-1プロトタイプの走りやパーシュ選手のコメントなどが収録された動画は、トライアンフ・モーターサイクルズの公式YouTubeチャンネルで観ることができます(英語)。

(文:平塚直樹

トライアンフ・モーターサイクルズ公式YouTubeチャンネル
「Project Triumph TE-1 | Electric Prototype Completes Final Testing | Full Film」

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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