久し振りの海外モーターショーは2年に1度の釜山。日本車、デザインと元気さで負け始めてる?

■韓国「釜山モーターショー」の勢い

海外のモーターショーは何年ぶりだろうかと調べてみたら、2019年の北京以来でした。今年の5月から帰国時の「検疫」と名付けられた禁固刑もなくなり(SNS禁止&健康なのにお酒を飲めない時点で禁固刑と同じ)、自由に渡航出来るようになたっため通常通りの取材活動が出来るようになると思う。ということで復活第一弾は隣国韓国の釜山モーターショーです。韓国の場合、ソウルと釜山の隔年開催となっています。

●ヒョンデ日本再上陸の真意に迫る

『ジェネシス』のコンセプトカー
『ジェネシス』のコンセプトカー

茹でガエル状態となっている日本人の多くが韓国車を未だポンコツだと思っているようだけれど、ヒョンデグループはホンダや日産を軽く抜いてトヨタの背後が見えてきています。なかでもWRCのイメージを上手に使っている欧州市場の場合、ヒョンデ起亜を合わせたらトヨタを凌ぐ。何と言ってもデザインがカッコ良いです。上はヒョンデの高級車部門となる『ジェネシス』がワールドプレミアしたコンセプトカー。マツダとガチで戦えるくらい美しい!

ジェネシスの『G80』
ジェネシスの『G80』

次もBMWなら5シリーズに相当するジェネシスの『G80』。欧州のデザイナーを積極的に起用し、しかもデザインセンスを尊重しています。このクラスのセダン、日本勢はレクサスGSを最後にギブアップしてしまった。レクサスLSだって開店休業状態の失敗作。世界を見ると高級セダン市場はしっかり残っていますから、そこを韓国勢に全て持っていかれる。トヨタですら韓国勢にやられてしまった。こうやって少しずつ陣地を失っていく。

SUVの『G70』
SUVの『G70』

左は『G70』というボルボXC60やマツダCX-60に相当するSUV。エクステリアについちゃ少しばかりボルボXC60入っていますが、インテリアが新しい。大きい液晶パネルど~ん! コテコテの革内装ど~ん! 明るいカラーも躊躇わず使う。その上、全てのモデルに電気自動車をラインアップしていくそうな。ヒョンデのチャン社長にインタビューする機会があったのだけれどハイブリッドについて聞いたら「トヨタに勝てないです(笑)」とのこと。

『G70』のインテリア
『G70』のインテリア

昨年就任したチャン社長はかつて日本の企業で働いていたことがあり日本語堪能! ヒョンデの日本再上陸は、チャン社長とヒョンデグループ会長の強い意思だといいます。チャン社長に「今の対韓感情だと良いクルマでも売れないと思います」と言ったら「すぐに売れると思っていません。少しづつでいいから理解して欲しいと思っています」。人物評価をけっこう得意とする私としては、大ポジティブなファーストインプレです。

『アイオニック6』
アイオニック6

●セダンバージョンのヒョンデ『アイオニック6』や起亜の『EV6』

釜山でアイオニック5のセダンバージョンとなる『アイオニック6』がワールドプレミアしました。CD=0.21という素晴らしい性能を持つそうな。日本で売れるかどうか聞かれたので「これは厳しい」と答えておきました。日本で尻下がりクルマが売れたことなし! レパートJフェリーやブルーバードセダン、大失敗作ですから。でもヒョンデ的には台数を追求するつもりないという。だったら好きな人もいるかもしれません。まずは対韓感情です。

 

『アイオニック6』のリア
『アイオニック6』のリア

欧州COTYに輝いた起亜の『EV6』を初めて見ました。アイオニック5の兄弟車ながら、イメージがずいぶん違う。ヒョンデと起亜、ハード面は共通ながらデザインや販売部門は完全なる別会社になっているそうな。欧州COTYでは、アイオニック5が3位だったのですが、ヒョンデ側としちゃ大いに悔しかったということです。とはいえ社長や経営陣同じ。日本で起亜を売るかと聞いてみたら起亜が決めることらしい。で、起亜はその気無し。

 

EV6
EV6

参考までに書いておくと起亜はマツダにルーツを持つ。起亜開発の1トントラックを売っているのだけれど、起亜モデルは『ボンゴ』。ヒョンデが『ポーター』。どちらもマツダ時代の名前をそのまんま使っているのです。直近ではヒョンデが保守層に。若いユーザー層に支持されている起亜と、上手に棲み分けしているように思います。とはいえヒョンデもデザイン評価の高い起亜を強く意識しており、新世代電気自動車第3弾の『7』はカッコ良い。

電気自動車の『7』
電気自動車の『7』

茹でガエル日本は世界を全く見ないが、このままだと韓国勢にジワジワ領域拡大されていくと危惧します。チャン社長の「ハイブリッドではトヨタに勝てないから次の世代で勝負する」という言葉に凝縮されているように思うのです。未だに日本はジャーナリストすら「電気自動車なんかダメだ」と茹でられています。電気自動車の中核技術である電池も日本より進んでいるし、直近では燃料電池に注力しているようです。

韓国2輪の電池事情
韓国2輪の電池パック事情

少し2輪事情も。何と! 日本勢と同じ電池パックで2輪を走らせようとしています。すでに運用を始めているという。街中にあるレンタル電池ステーションにカードをかざすと充電済みのリチウム電池(1個0.8kWh)を取り出せます。大半の2輪は2個使う。これで80~100km程度走れるとのこと。電気スタンド、ガソリンスタンドより低コストで設置出来そうなので、街中は全く困らず2輪に乗れると思う。この技術、海外展開するようです。

レンタル電池ステーション
レンタル電池ステーション

韓国なんかどうでもいい、と思うのは自由です。実際、日本市場への参入ハードル高い。ただ世界は日本のような感情無し。気がつけば家電製品のように日本の製品は通用しなく無くなっているようなことになりかねない。日本語堪能で日本を理解しているヒョンデのチャン社長が韓国の強さを日本に紹介してくれたら有り難い。ライバル関係として切磋琢磨していくことこそ日本の将来のためだと私は考えます。

シティカブリオレ
シティカブリオレが展示されていました

釜山ショーに展示してあったシティカブリオレ。インテリアなど含めすんばらしいコンデョションでした。持って帰りたくなったほど。現在進行形で近くて遠い国になっている(ビザ取得も苦労する。飛行機便少なく、福岡と釜山間の船も運休中)韓国ながら、民間はもう少し将来を見据えた関係を考えるべきだと思う。

 

(文・写真:国沢 光宏