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■走る喜びを大切にしたマツダらしい電気自動車
2012(平成24)年7月6日、マツダは電気自動車「デミオEV」のリース販売を10月から開始することを発表。主に、中国地方の地方自治体や法人向けに合計100台が販売されました。マツダとしては、EV市販化に向けた実証試験という位置付けと思われます。
●ベースは、マツダの人気コンパクトカー3代目デミオ
初代デミオは、1996年にデビューしてコンパクトながら軽快な走りと広い室内スペースが評価され、ファミリー層を中心に大ヒット。1990年代に経営不振に陥っていたマツダの救世主になりました。
2002年の2代目に続いて登場したのが、2007年の3代目デミオ。環境・安全性能を高め、流線形のフォルムに変貌したことが、特徴でした。また、2011年にはSKYACTV技術の第一弾となる「SKYACTIV-G」エンジンを搭載したことで、大きな注目を浴びました。
●軽快な走りと航続距離200kmを達成
デミオEVは、床下に20kWhのリチウムイオン電池、エンジンルームに最大出力102PS/最大トルク15.3kgmのモーターとインバーターを搭載。最高出力は、ベースのデミオより11PS増しの102PS、最大トルクは2.7kgm増しの15.3kgmを発揮、満充電時の航続距離は200km(JC08モード)を達成しました。
ベース車と比較して地上高を15mm上げただけで、車室スペースおよび荷室スペースは、ベース車と同等。また、リチウムイオン電池の搭載によって車両重量は190kg増えましたが、重いバッテリーが車両中心付近の低い位置にあることで車重配分が最適化され、良好なハンドリングと安定した乗り心地、さらにモーターによる優れたレスポンスが実現されました。
価格は357万7000円。個人へのリース販売はなく、主に中国地方の自治体や法人を中心に、合計約100台がリース販売されました。
●マツダ初の市販EV「MX-30 EV」と比べてみた
デミオEVから8年の時を経て、満を持して2020年マツダ初の電気自動車「MX-30 EV」が発売されました。デミオEVがMX-30の開発に大きく貢献したことは容易に想像できますが、両者のスペックを比べてみました。
・デミオEV(1180kg):コンパクトハッチバック、価格:357万7000円
リチウムイオン電池(電圧/容量):346V/20kWh
モーター(最高出力/最大トルク):75kw(102PS)/150Nm
航続距離(JC08モード):200km
・MX-30 EV(車両重量:1650kg):クロスオーバーSUV、価格:451万
リチウムイオン電池:418V/35.5kWh
モーター:107kw(145.5PS)/270Nm
航続距離(JC08モード):281km
MX-30 EVの電池容量は、デミオEVの約1.8倍ですが、車両重量が1.4倍重いので航続距離は1.4倍程度にとどまっています。MX-30 EVの方が高出力(出力は約1.4倍、トルクは1.8倍)ですが、パワーウェイトレシオ(車重/PS)でみると、MX-30 EVが11.3、デミオEVは11.6で、両者の高速での動力性能は同等と言えます。車重は重くなりますが、構造上電池が大量に積めるSUVの方がEV化するには効率的と判断したのでしょう。
新しい技術を採用した場合、メーカーはリース販売することがあります。コストが高くまだ量産レベルでない場合がほとんどですが、デミオEVもおそらくそのケースではないでしょうか。またリースだと、個人と比べて様々な走行データが入手しやすいので、課題などをフィードバックして開発の参考とするという狙いもあります。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)