ホンダ・バラードスポーツCR-Xがデビュー。FFの走りを変えたライトウェイトスポーツ【今日は何の日?7月1日】

■1980年代スポーツ志向に回帰したホンダが放ったFFスポーツ

1983(昭和58)年7月1日、ホンダの「バラードスポーツCR-X」が発売されました。オイルショックと排ガス規制を乗り切った1980年代は、その反動から高機能・高性能化時代に突入。スポーツ志向に回帰したホンダが放ったライトウェイトスポーツは、クルマ好きの若者に大きなインパクトを与えました。

1983年発売のバラードスポーツCR-X。セミリトラクタブルヘッドライトにワイド&ローのスタイリング
1983年発売のバラードスポーツCR-X。セミリトラクタブルヘッドライトにワイド&ローのスタイリング

●1980年代のホンダのスポーツ戦略

オイルショックと排ガス規制強化の対応で追われた1970年代、自動車メーカーは性能を抑えても、クリーンな排ガスと低燃費に注力しました。ホンダも世界で最初にマスキー法をクリアしたCVCCエンジンをベースに乗り切りましたが、モータースポーツに参戦したり、スポーツモデルを投入する余裕はとてもありませんでした。

1982年にデビューしたシティターボ
1982年にデビューしたシティターボ
1982年にデビューした2代目プレリュード
1982年にデビューした2代目プレリュード

排ガス対応が一段落すると、ホンダのエンジンはF1とF2で復活し、1984年には米国GPでウィリアムズ・ホンダが優勝を果たします。市販車でも、1982年にホットハッチの「シティ・ターボ」、リトラクタブルヘッドライトを装備したワイド&ローのスペシャルティカー「2代目プレリュード」を投入。その後に続いたのが、バラードスポーツCR-Xだったのです。

●FFライトウェイトスポーツという新たなジャンルを開拓

バラードスポーツCR-Xは、シビックの兄弟車「バラード」のスポーツモデルで、パワトレーンなど多くのコンポーネントは、シビックの共用品でした。

1980年に登場したノッチバックセダンのホンダバラード
1980年に登場したノッチバックセダンのホンダバラード

最大の特徴は、FFの軽量スポーツ「FFライトウェイトスポーツ」という新たなジャンルを開拓したこと。2+2シートに割り切ったパッケージングと、軽量化材料の適用によって実現された超軽量車重は、1.3Lモデルで760kg、1.5Lモデルは800kgでした。また、セミリトラクタブルヘッドライトや低く抑えたボンネット、シャープなテールエンドなど、斬新なワイド&ローのスポーティなフォルムを採用。パワートレインは1.3Lおよび1.5Lエンジンと3速ATおよび5速MTの組み合わせ。翌年には1.6L高性能エンジンを搭載した「バラードスポーツCR-X Si」が追加され、多くの若者を夢中させました。

●FFでもクイックに曲がれて軽快に走れることをアピール

バラードスポーツCR-Xの最大の注目は、前述したように軽量化材料を多用したFFのスポーツモデルであることです。

バラードスポーツCR-Xのボディサイズとパッケージング
バラードスポーツCR-Xのボディサイズとパッケージング
バラードスポーツCR-Xのスタイリッシュなスタイリング
バラードスポーツCR-Xのスタイリッシュなスタイリング

当時はスポーツモデルといえばFRが常識でした。前輪が駆動と操舵の2つの機能を担うFFでは、シャープなコーナリングを実現するのが難しかったためです。バラードスポーツCR-Xは、軽量化と足回りのチューニングによって、その不安を払拭。FFでも、これだけコーナーがクイックに曲がれるぞとアピールした貴重なモデルでした。

また、樹脂系の軽量材料を積極的に使っていることも先進的でした。バンパーには、耐衝撃性や対候性に優れた樹脂のHPプレンド、フロントフェンダーやノーズコーンサイドプロテクター、ヘッドライトにはポリカーボネイトベースのHPアロイを採用。これらが、ボディの軽量化に大きく貢献しました。


昭和の時代は、FFはスポーツ走行に不向きで、FFは居住性やコストダウンのためのシステムと揶揄されたこともありました。FFの技術が進化したことで「シビックタイプR」のように、FFの素晴らしいスポーツモデルも出現するようになりました。しかし機構的にみれば、やはりFRの方がスポーツ向きであることに変わりはないと思います。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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