■壁に寄せないと減点!
D1GPの審査コースには、通過指定ゾーンが設けられます。そこを車体の一部が通過することが求められるのです。外すと減点です。
ふつうの常設サーキットの場合は、コースの縁に設けられるので、行き過ぎてもコースアウトするだけなのですが、特設コースの奥伊吹モーターパークの場合は、1コーナーのアウト側、コンクリートウォール際にも通過指定ゾーンが設けられます。行き過ぎたら即クラッシュというわけです。
D1GPにおける審査で高得点を出すかねあいからすると、理想の走りは、直線をフル加速したらコーナーに対して適切な位置で鋭くテールを振り出し、旋回できる最大角度を一気につけます。そうして姿勢が決まったらアクセルON。
途中でできるだけアクセルを加減することなく、ドリフトの角度も変えることなく、アクセル一定、角度一定で旋回していくのが理想の走りです。その走りかたで指定ゾーンも通過したいわけです。
とはいえ、人間なので、毎回まったく同じ操作ができるわけではありません。また路面コンディションも、タイヤのグリップも毎回同じではありません。
そのなかで、ドリフトしながら、しかもテールを壁に寄せるために、D1ドライバーはどんな操作をしているのでしょうか? この奥伊吹で2回の単走優勝の実績があり、練習走行を見ていても毎回安定して壁に寄せていたTMARの#77松山北斗選手に聞いてみました。
■振り出した瞬間に距離を察知!
「まず振り出しですけど、コースのアウト側の白線をたどっていけば、ちょうど壁スレスレになるので、早めに白線にのるイメージで振り出します。振り出すときの視線の先は正面と白線です。」(松山選手)
「振り出しはサイドブレーキを引くんですけど、その瞬間に振り出した位置が、アウト側の壁に対して、近いのか遠いのかがわかるので、それによって角度をコントロールします。一瞬アクセルを踏むのを遅らせたり、ハンドルの切りかたとかで角度を調整するんです」
D1では、大きな角度で旋回することが高得点につながります。でも、車速が低いのに手前から大きな角度をつけてしまうと、ドリフトがコーナーまで届かない。角度が大きいとそれだけクルマにブレーキがかかるからです。
そこで、大きな角度をつけるためにはできるだけ奥で振り出したほうがいいということになります。といっても、奥で振り出すとオーバーラン(奥伊吹の場合は即クラッシュ)するリスクが高まるので、ほどほどのところで振り出して、あとは角度で調整するというわけです。
振り出した瞬間に位置が判断できるというのは、やはりクルマやタイヤの特性を熟知しているからでしょうね。
「振ったあとは毎回同じようにアクセルを踏みます。そこで姿勢が安定してからコーナーの奥の壁が見えてくるので、そこから壁のことを考えるという感じです。」(松山選手)
「そのままアクセルを踏み続けたときに、壁に当たっちゃうのか、それとも足りないのかを判断します。あとはアクセルを踏む量で壁に寄せるラインをコントロールします」
それでは、そのときの目線はどうしているのでしょう?
「基本的に、いちばん近づくちょっと手前くらいまでは壁を見てますよ。でもラインがちょうどいいと思ったら、早めに目線をイン側に移して、クリップを意識するようにするし、当たりそうだと思ったら壁をよく見て対処するようにしています」とのこと。
選手によって多少ちがうかもしれませんが、松山選手はこのようなドライビングで、毎回きれいに壁に近いラインをトレースしているのです。言うのは簡単ですが、クルマの動きを予測しつつ適切に操作をしてコントロールするのはものすごく高度な技です。
さて、6月11日に行われたD1GP第2戦。単走優勝は目桑宏次郎選手。
そして第2戦の追走優勝は中村直樹選手でした。また、翌日の6月12日に行われたD1GP第3戦では、中村直樹選手が単走でも追走でも優勝してしまいました。
D1GP次戦は8月20日(土)~21日(日)。福島県のエビスサーキット西コースで開催です。
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(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス、まめ蔵)
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