「ルノー アルカナ R.S. LINE E-TECH HYBRID」のまったく新しいハイブリッドシステムはダイレクトなのに極めてスムーズな走りを実現

■ルノー・スポールのエッセンスを感じさせる「R.S. LINE」を設定

ルノーに新たに加わったクーペ風味のクロスオーバーSUV「アルカナ」は、ルーテシアやキャプチャーと同じ「CMF-B」プラットフォームをベースに仕立てられています。

低く構えているようにも見えますが、最低地上高は200mmで、キャンプやスキーなどを楽しむ層でも安心して使えるロードクリアランスが確保されています。

ルノー アルカナ
ルノーの新型クロスオーバーSUV「アルカナ」のエクステリア

日本に導入されているのは、「ルノー アルカナ R.S. LINE E-TECH HYBRID」。

「R.S. LINE」のネーミングは、日本では聞き慣れない方もいるかもしれません。本格派のルノー・スポール(R.S.)ほどハードではないものの、R.S.のエッセンスが散りばめられた、ややライトなスポーティグレード。

メルセデス・ベンツの「AMGライン」、BMWで主力グレードになっている「M SPORT」、アウディでお馴染みの「S line」といったスポーティグレードに近いイメージといえそうです。

ルノー アルカナ
流麗なルーフラインを描くリヤビュー

エクステリアには、F1からインスピレーションを得たというフロントブレードがロー&ワイドなスタンスを強調。

フロントバンパーの両サイドには、フロントホイールハウスにつながるエアディフレクターが備わっています。こちらは、スポーティな見た目だけでなく、前輪が発生させる空気の乱れを抑制でき、燃費向上に寄与するそう。

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ダイレクト感のある走りが魅力

インテリアには、ルノー・スポールのエッセンスがより多く採用されています。ドアトリムとダッシュボードにカーボン調パネルが配置され、赤いラインのアクセントがレーシーなムードを演出。また、メーターディスプレイは10.2インチのフルデジタルパネルで、中央にはタッチ式7インチディスプレイが用意されています。

基本的なデザインやレイアウトは、キャプチャーと似た印象のコクピットとなっています。

ルノー アルカナ
アルカナのインパネ

アルカナ最大の見どころは、2022年5月時点で唯一のフルハイブリッドが搭載されている点です。F1などのモータースポーツからからフィードバックされた技術も駆使されています。

エンジンは1.6Lの直列4気筒NAで、駆動を担うメインモーターと「HSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)」の2モーターを搭載。

エンジンとモーターをつなぐトランスミッションは、電子制御式のドッグクラッチ(マルチモード付AT)になります。シンクロナイザーもクラッチもリバースギヤもないシンプルな構造になっています。

ルノー アルカナ
フルハイブリッドを採用する

ラリーなどのモータースポーツでは、ドッグ(犬の歯のような)クラッチが使われていて、アルカナの場合は、モーターも含めた「HSG」が回転を同期させることでショックのないスムーズな変速を実現しているそう。

発進時はモーターが担うためスタートは至ってスムーズ。後退時もモーターを逆回転させることで静かでスムーズな動きを可能にしています。

クリープ現象もありますが、弱めの印象。トヨタの「THS2」のようにモーター走行をできるだけ粘らせるような発進、加速ではなく、エンジンの始動は早め。最も気になるドッグクラッチは、変速時にMTのようにクラッチを切るため、極わずかな変速の間や耳を澄ませているとクラッチを切るような音が聞こえてきます。

ルノー アルカナ
フランス車らしい大きく座り心地のいいフロントシート

それでもモーターアシストもあるため、極低速域から同トランスミッションは非常にスムーズで、初出とは思えない出来映えです。高速域になると、エンジンの効率の良さを活かし、加速時などのモーターアシストはもちろん、エンジンが主役であるのが分かります。

なお、エンジンが再始動した際の音や振動もあまり気にならないのも印象的です。

ハイブリッドですので、減速時のエネルギー回生も行われます。回生ブレーキはシフトレバーを「B」にすることで強めになり、回生されたエネルギーを使って低速域のモーター走行をまかなうことになります。回生ブレーキで減速できるのはもちろん、制動力が必要なシーンではメカブレーキが作動。

ダイレクト感とスムーズさを兼ね備えたトランスミッションに加えて、モーターアシストも加わるため、加速性能は十分に力強く、走行モードを「スポーツ」にするとエンジンが常に作動し、よりレスポンスが高まり、スポーティな走りを堪能できます。

ルノー アルカナ
クーペクロスオーバーだが、頭上空間も不足なく確保されている

「ハイブリッド車=燃費重視の我慢グルマ」という図式は、昔のこととはいえ、出力を絞って燃費向上を重視する基本的な狙いは、根底にあります。

ルノー(アルカナ)の場合は、燃費のため走りを犠牲にするような足の遅さはなく、「エコ」や標準モードにすると、モーター走行を重視することでスムーズさを実感できます。

WLTCモード燃費は、22.8km/Lと秀逸。トヨタC-HRのハイブリッド(25.0km/L)など「THS2」には及ばないものの、輸入車でも良好な実燃費を期待できそう。

ルノー アルカナ
アルカナの走行シーン

また、アルカナの美点は、同じプラットフォームを使うルーテシアやキャプチャーよりも若干乗り心地にフラット感がある点です。市街地走行では路面よっては少し硬さも抱かせますが、よりフラットライド。

同時に直進安定性の高さやコーナーでの素直なフットワークも光るなど、コンパクトSUVの中ではバランスに優れた走りを堪能できます。

クーペクロスオーバーということで、居住性や積載性が気になる方もいるでしょう。後席は身長171cmの筆者でも比較的余裕があります。

後席の足元空間は、CセグメントSUVとしては、驚くほど広くはないものの、通常時の荷室容量は480L。フロアボードは上段、下段に設置できるため、開口部との段差を減らしたい時は上段に、下段に設置すれば荷室高を100mm強高くすることができます。

ルノー アルカナ
アルカナのラゲッジスペース(通常時)

アルカナは、子ども2人がいるファミリー層でも日常使いに十分な居住性、積載性を備えています。全幅も1820mmに収まっていて、最小回転半径は5.5mと、肥大化する現在の新型車にあって日本でも取り回ししやすいSUVといえるでしょう。

●ボディサイズ:全長4570×全幅1820×全高1580mm
●価格:429万円

(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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