目次
■お見せします・自分だけの仕様にしてくれる、カローラクロスのカスタマイズ機能イッキ見せ
カローラクロス試乗、第6回にして最終回。
最後は、カローラクロスのカスタマイズ機能の紹介と販売動向、燃費の報告です。
みなさん、ふだん使っているクルマ、ここがこうだったらいいのにと思うことはないでしょうか。
筆者などは最近のクルマについて、ある機能については余計なものに感じられたり、逆にこのようになっていたらいいのにと思うことが多々あります。といっても、しょっちゅう最新型のクルマに買い替えているわけでもないのですが…
それはともかく、カローラクロス試乗の最終回は、オーナーの「だったらいいのに」をかなえてくれる(かも知れない)カスタマイズ機能を見ていきます。
●カローラクロスのカスタマイズ機能は20項目・76点!
ユーザー任意で車両設定を行える機能を最初に採り入れたのは、筆者の認識ではおそらく三菱自動車で、「ETACS(イータックス)」の名で始めたのが最初だと思います。ETACS自体は80年代の三菱車から存在していたのですが、2000年代あたりのクルマから、ETACSの設定をユーザーが任意で設定できるように。
クルマというものはいったん買ったら使っているうちにいくつかの不満が出てくるもので、だからといって簡単には買い替えるわけにもいきません。事前に調べ、納得したり譲歩したりした上で注文書に判を押すわけですが、そうはいっても使っているうちに機能や使用性にメーカーの押し付け、大きなお世話を感じるようになるのがこれまでのクルマでした。
細かな調整がユーザー好みでできたらいいのに…このような声なき声を汲み取ったのか、ユーザーによる任意設定を可能にしたのが三菱のETACSでした。他のメーカーは、例えばルームランプの消灯時間やリモコンロックのアンサーバック有無くらいの設定はできるようにしていましたが、「カスタマイズ」と銘打てるほど豊富なメニューは用意してはいませんでした。
と思っていたら、ある時期からトヨタが三菱の後を追うようにカスタマイズ機能に力を入れ始めました。
最近のトヨタ車は、ユーザーカスタマイズの老舗? 三菱自動車さえもが青ざめて逃げ出すほどにユーザーカスタマイズのメニューを用意しており、カローラクロスのメニュー数を数えてみたら、項目としては20、点数としては76もありました。
その内容たるや、メーター表示に始まり、パワーバックドアやスマートエントリーのロック所作、Toyota Safety Sense、果てはエアコン、車内イルミネーションの点灯時間に至るまで…ザーッと並べてみましょうか。
●カローラクロスのユーザーカスタマイズ一覧
1.メーター、マルチインフォメーションディスプレイ
言語、単位、メーター表示(7インチディスプレイ車)、EVインジケーター点灯有無、燃費ランキング表示有無、燃費推移表示有無、燃費履歴表示有無、エコウォレット表示有無、エコウォレット表示有無、エコアクセルガイド表示有無、燃費グラフ表示方法、燃費推移計算間隔時間選択、ガソリン価格入力、比較燃費、オーディオシステム連動表示、エネルギーモニター表示有無、4WD作動状態表示有無、ドライブインフォタイプ表示タイミング、ほか、全22点
2.パワーバックドア
パワーバックドア機能を使う・使わない、ハンズフリーパワーバックドアの作動ありなし、パワーバックドア開閉調節、ブザー音量 全4点
3.スマートエントリー&スタートシステム、ワイヤレスドアロック共通
作動の合図(ブザー音量調整)、作動の合図(ハザードありなし)、解錠後にドアを開けなかったときの再ロックまでの時間設定、半ドア警告ブザー、全4点
4.スマートエントリー&スタートシステム
スマートエントリー&スタートシステムを使う・使わない、解錠されるドアの選択、全席解錠までのドアハンドル保持時間選択、連続ロック操作の有効回数、全4点
5.ワイヤレスドアロック
ワイヤレス機能を使う・使わない、解錠時の操作、全2点
6.ドアミラー
オート電動格納機能を使う・使わない 全1点
7.パワーウインドウ
メカニカルキー連動開閉機能を使う・使わない、ワイヤレスリモコン連動開閉を使う・使わない、ワイヤレスリモコン連動開閉作動の合図(ブザー)ありなし 全点
8.ランプ自動点灯・消灯システム
ライトセンサーの感度調整、ライト消し忘れ防止機能の作動タイミング選択、ワイパー連動ライト点灯機能のありなし 全3点
9.ランプ
デイタイムランニングランプ点灯有無 全1点
10.PCS(プリクラッシュセーフティ)
プリクラッシュセーフティ作動有無、警報タイミング選択 全2点
11.LTA(レーントレーシングアシスト)
車線維持支援機能作動有無、操舵支援機能ありなし、警報感度設定、ふらつき警報作動有無、ふらつき警報作動感度 全5点
12.RSA(ロードサインアシスト)
RSA機能有無、制限速度超過告知、制限速度超過の告知車速選択、追い越し禁止告知方法の選択 など全5点
13.先行車発進告知機能
先行車発進告知ありなし、告知タイミング選択 全2点
14.BSM(ブラインドスポットモニター)
ブラインドスポットモニター機能ありなし、ドラミラーインジケーター明るさ選択、など全3点
15.クリアランスソナー
クリアランスソナー機能ありなし、ブザー音量選択、フロントセンサーの検知可能距離選択 など全5点
16.RCTA(リヤクロストラフィックアラート)
RCTA機能ありなし選択、ブザー音量選択 全2点
17.PKSB(パーキングサポートブレーキ)
PKSB機能ありなし 全1点
18.ドライブスタートコントロール
後進速度の抑制制御ありなし 全1点
そしてエアコン、車内照明関連です。
19.エアコン
AUTOスイッチON時、連動して外気導入と内気循環を自動切り替えをする・しない 全1点
20.イルミネーション
ドア閉後の室内灯消灯までの時間選択、パワースイッチOFF後の照明点灯ありなし、解錠後の照明点灯ありなし、接近時の照明点灯ありなし、ドアトリム、センタートレイ、カップホルダーの照明点灯ありなし 全5項目
ね? こんな細かいとこまで「だったらいいのに」と考えるひといる? と思うほど多彩でしょう。無頓着なひとは知らなくてもかまわない機能です。しかし使う人の小さな「だったらいいのに」が実現でき、便利にクルマを使えるようになるのならカスタマイズ機能は知らなければ損です。
設定変更方法は3とおり。
A:計器盤センターの7もしくは9インチディスプレイで行う
B:メーター内のマルチインフォメーションディスプレイで行う
C:トヨタ販社で行う
の3つです。
A方式やB方式は自宅の車庫ででもできるし、AとCのふたとおりでできる項目もありますが、ちょいと面倒なのは、項目によってはC…トヨタ販社「でしか」設定変更できないものがあることです。パワーウインドウのリモコン開閉機能設定や、クリアランスソナーの検知距離など、現在の設定状態を忘れたら困ったことになりそうな項目はまだわかるのですが、ドアミラーのドアロック連動開閉や室内イルミネーション設定のような「そんなのユーザーができるようにしてあげればいいじゃないの」といいたくなるような項目までトヨタ販社でないと設定変更できないようになっています。
このへん、一覧表にまとめましたのでごらんください。
いっそ取扱説明書のカスタマイズのページをコピーしたものに、希望する設定に赤で印をつけてメカニックに渡すという依頼をすればまちがいがないでしょう。
ここにない項目はどうしようもありません。ないものはない! 潔くあきらめましょう。
筆者なら車速連動ドアロック機能の有無を設けてほしいところです。大きなお世話とか、事故時の救出を妨げるおせっかいデバイスというひとがいますが、いまどきの日本ときたら、道路っ端での人待ち中、または信号待ちなどでいきなりドアを開けられて襲われるということがないとはいい切れません。表には出て来ませんが、実際にそのような事件が起きているのと、特に昨今はあおり運転に端を発し、あおったほう、またはあおられたほうが他方に襲われるという事件も頻発しています。「ロックはしないでおくべき」という風潮にただただ乗ってドアロックをしなかったら、あるいはロックを忘れていたらどうなるかは自明の理。考え方はひとそれぞれですから、作動するしないを選択できる車速連動ドアロックのメニューがあればいいと思うのです。いまのクラウンにはその項目があり、車速連動ドアロック有無の選択ばかりか、ロック/アンロックのタイミング、運転席ドアを開けたと同時に他のドアも解錠するか否かなどの選択項目も用意されています。カローラクロスもプログラム追加だけでできるような気がするけどどうなのかなあ?
●発売から6か月半の販売動向
トヨタ広報の方にお願いして、昨年2021年9月14日の発表・発売から今年2022年3月末…6ヶ月半の販売動向を出していただきました。
★販売台数
3万8950台(2021年9月14日~2022年3月末)
★ガソリン・ハイブリッド比率
ガソリン車:ハイブリッド車=22:78
★機種別比率
・G”X” : 全体0.4% ガソリン車2.0% ハイブリッド車 -
・G : 全体6.0% ガソリン車13.0% ハイブリッド車4.0%
・S : 全体6.0% ガソリン車14.0% ハイブリッド車3.0%
・Z : 全体87.0% ガソリン車71.0% ハイブリッド車93.0%
★ボディカラー比率
・プラチナホワイトパールマイカ : ガソリン車45.0% ハイブリッド車50.0%
・アティチュードブラックマイカ : ガソリン車27.0% ハイブリッド車19.0%
・スパークリングブラックパールクリスタルシャイン : ガソリン車6.0% ハイブリッド車9.0%
・ダークブルーマイカメタリック : ガソリン車5.0% ハイブリッド車6.0%
・セメントグレーメタリック : ガソリン車5.0% ハイブリッド車5.0%
発表から6ヶ月半の間の販売台数は3万9850台とのことで、月平均にすると6000台弱。いまどきのこの値段のこのサイズのクルマとしては売れている部類に属するかも知れません。
日本自動車販売協会連合会…通称・自販連の統計を見てみると、昨年2021年9月、10月までの「カローラ」の販売台数が7000~8000台あたりを推移しているのに対し、カローラクロス発表・発売開始である9月14日以降の数字が明確に現れる11月にはいきなり1万3631台に。以降、今年2022年3月までの間に1万台を割った月はありません。自販連のデータは、本流カローラにカローラスポーツ、カローラツーリング…「カローラ」と名がつくあらゆるボディバリエーションをいっしょくたにしてランキングを出しており(教習車まで含んでいる!)、カローラが上位にあるといっても少々トリックがあることを差し引かなければならないのですが、逆にいうと11月以降の「カローラ」の台数が急増しているということは、シリーズ中、カローラクロスがカローラシリーズ全体の販売量を押し上げていることがわかります。やはりSUV時代なのです。
売れ筋機種は、ガソリン車、ハイブリッド車問わず、Zが圧倒的多数を占め、全体の9割弱。ハイブリッド版に限れば93%と、ほぼ全数がZとなっています。FWD車同士の比較で、ガソリン車でも264万円、ハイブリッド車でも299万円…どう考えても乗り出し時点で300万を超えるモデルが最多量販機種とは、クルマが売れないとはいいながらも売れるものは売れているのであり、購買力のある顧客は、いるところにはいるものです。
筆者は、初代ソアラやその後のマークIIに代表されるトヨタ自慢の「スーパーホワイト」に影響されているのか、「トヨタ」といえば白を思い浮かべ、実際自分のクルマも白を選ぶことが多いのですが、カローラクロスも白系統のプラチナホワイトパールマイカが1番人気のようです。同時にスパークリングブラックパールクリスタルシャインとともに、エクストラチャージが発生する塗色がよく1位になったなとも思います。
★メーカーコメント
カローラクロスは、アウトドアにも便利な広い室内空間と、都会的で上質な内外装デザインを採用しております。街乗りからレジャーまで幅広いシーンで活躍するSUVならではの高いユーティリティをぜひご体感ください。
■エピローグ
今回乗ったカローラクロス、「カローラ」の名を冠してはいますが、良きにつけ悪しきにつけ、もはや「カローラではないな」というのが乗っての感想です。
まず良きの方。9代目のカローラ(2000(平成12)年)は、過去のカローラと訣別し、イチから組み立て直した新生カローラでした。だからNCV(ニュー・センチュリー・バリュー)。現在のカローラは、そのNCVカローラに匹敵する、再び新生したカローラで、技術的にシリーズ全体が底上げされていることがカローラクロスを見てみるとわかります。乗り味がもはやカローラではありません。試乗本編でも述べたとおり、かつてのひとクラス上のクルマの乗り味、ハンドリングに到達したというものでした。
次、悪しきのほう。車両価格とサイズがカローラの域を超えています。時代が違う、かつてとは比較にならないほどの電子デバイスがついているからといえばそれまでですが、5ナンバーサイズ時代のカローラを知る目には、1800mmを超える車幅、最上級機種なら300万円を超えるというのはもはやカローラではなくなりました。昔のカローライメージのまま手を伸ばそうとすると、高い、大きい、車庫に入らない! ということにもなりかねないので、くれぐれも予算や車庫サイズとの相談をお忘れなく。ただし、クラウン同様、祖父・父親の代からカローラを乗り継いでいるというひとでもないなら問題はないかも知れません。過去のカローラを知らないひとが、このカローラクロスそのものを気に入り、「お、アウトドアに繰り出すにはいいじゃないの!」と食指が動いたならいい選択かと思います。
あと、このようなクルマだからこそ、ぜひパノラマルーフを選ぶといいヨ!
以上、全6回に渡り、カローラクロスについて述べてきました。
カローラクロスの購入検討している方のお役に立てたかどうか未知数ですが、最後は燃費報告でおしまいにします。
(文:山口尚志 モデル:Mai 写真:山口尚志/トヨタ自動車)
■燃費報告
★トータル燃費:21.2km/L(カタログ燃費(WLTC総合):26.2km/L)
★総走行距離:505.4km(一般道160.9km+高速道251.1km+山間道93.4km)
★試乗日:2022年4月9日(土)~11日(月) ずっと晴れ、すべてドライ路面、クーラーはほとんどOFF
【経路内訳】
一般道:東京都練馬区~新宿区~江東区、群馬県前橋市内、高崎市内 計72.6km
高速道:
首都高11号線台場IC~C1都心環状線右まわり~5号線早稲田IC 計14.0km
関越自動車道: 往路 練馬IC~前橋IC 92.5km 前橋IC~昭和IC 往復57.0km 復路 前橋南IC~練馬IC 87.6km
山間道:赤城山 3往復 93.4km
【所感】
カタログ燃費達成率80.9%。一般にガソリン車のカタログ値達成率が8割で、ハイブリッド車となるとなお乖離が大きくなるというのが定説だが、今回のカローラクロスはハイブリッド車であるにもかかわらず、カタログ値の80.9%まで到達したのはささやかな自慢。高速道路ではときおり急加速も試みながらも、全体的にはいまどき高速ともいえない80~100km/hで巡航、山間道でもドライブモード「ノーマル」「パワー」「エコ」の機械任せで走ったくらいで、格別ていねいなアクセルワークを心がけたわけでもないのにこの達成率なら、ドライブモードを「ノーマル」のまま、ちょいと意識してやさしいアクセルワークを習慣にしていれば、22.3~23.6km/L(カタログ達成率85~90%)も不可能ではないと思われる。
帰着時の給油時の燃料計指針は1/4とちょっと、スタート時と同じ給油機による給油量は23.79Lでした。
【試乗車主要諸元】
■トヨタ・カローラ クロス ハイブリッドZ(6AA-ZVG11-KHXEB型・2021(令和3)年型・2WD・電気式自動無段変速機・プラチナホワイトパールマイカ)
・メーカーオプション:プラチナホワイトパールマイカ(3万3000円)、イルミネーテッドエントリーシステム(フロントカップホルダーランプ、フロントドアトリムショルダーランプ、フロントコンソールトレイランプ・11000円)、ディスプレイオーディオ(9インチ・2万8600円)、アクセサリーコンセント(4万4000円)、ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ(4万4000円)、パノラミックビューモニター(2万7500円)、おくだけ充電(1万3200円)、パノラマルーフ(電動サンシェード&挟み込み防止機能付き・11万円)
・ディーラーオプション:ラゲージトレイ(1万5400円)、ETC2.0ユニットナビキット連動タイプ(光ビーコン機能付き・3万3000円)、カメラ別体型ドライブレコーダー(6万3250円)、フロアマット(ラグジュアリータイプ・2万8600円)
●全長×全幅×全高:4490×1825×1620mm ●ホイールベース:2640mm ●トレッド 前/後:1560/1570mm ●最低地上高:160mm ●車両重量:1430kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.2m ●タイヤサイズ:225/50R18 ●エンジン:2ZR-FXE(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1797cc ●圧縮比:- ●最高出力:98ps/5200rpm ●最大トルク:14.5kgm/3600rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:36L(無鉛レギュラー) ●モーター:1NM(交流同期電動機) ●最高出力:72ps ●最大トルク:16.6kgm ●動力用主電池(種類/容量):リチウムイオン電池/3.6Ah ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):26.2/25.9/28.9/24.7km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:299.0万円(消費税込み・除くメーカー/ディーラーオプション)