■森林資源の有効活用や地域社会の活性化にも寄与
ヤマハ発動機の広報グループが発信した、2022年4月25日付のニュースレターは、静岡県周智郡森町に同社がオープンした「ミリオンペタルバイクパーク」がテーマです。なお、運営するのはミリオンペタルです。
このMTBコースは、ヤマハ発動機の社内公認クラブ「森マウンテンバイククラブ(MmtbC)」のメンバーが自らスコップを持ち、1年かけてコースを整備してきたという、いわば手作りのMTBコース。
こうした専用コースを自ら作り上げた、MmtbCの小倉幸太郎部長(ヤマハ発動機 新事業推進部)によると、「MTBのフリークが、家族や仲間とともに心おきなく楽しめる環境をつくりたい。それが純粋な動機でした。その後、さまざまな素晴らしい出会いが重なり、いまでは森林資源の有効活用や地域社会の活性化などにも寄与していきたいです」と強い思いを語っています。
「この森林は、水源涵養保安林でもあり、保健保安林でもあります。こうした土地を使わせていただき、行政や森林組合、地域の皆さんと相互に協力しながら発展させていくために法人を設立しました。無給ではあるのですが、会社の人事部門に相談して手続きを踏み、副業というかたちで施設運営に携わっています」と、さらに続けています。
同コースが開設できたのは、森町森林組合の甚沢万之助組合長との出会い、そして理解と協力があったからこそ。
また、「MmtbC」クラブ員による手弁当のコースづくりでは、2021年に活動を後押しする出来事があったそうです。
林野庁の助成事業として、森林づくりの課題をオープンイノベーションで解決するアクセラレータープログラム「SUSTAINABLE FOREST ACTION(SFA)」に応募し、最優秀賞を獲得したことです。
「走るフィールドに困っているMTBの愛好家と、森林の利活用を望む地権者、手入れの行き届いた健やかな森づくりを推進する国や行政、地域社会の活性化など、それぞれの課題の解消に向けたビジネスプランを提案して評価をいただきました。事業化資金(300万円)の助成を受け、活動が加速しました。人が集まり、そこで楽しみ、森林や地域も生き生きとする。こうした循環を生み出していくことが、フィールドづくりには欠かせないと考えています」と小倉さんは説明します。
さらに、「森町で成功事例をつくり、ロールモデルとして全国に発信していきたい。提携する施設が各地に広がっていくことをイメージしています」と将来像も描いているそう。
なお、日本国内のMTB人口は、およそ10万人いるそうです。
小倉さんは、「じつは、先進国の中では圧倒的に低い数字です。日本は国土の3分の2が森林という国ですから、もっと楽しむ人が増えるポテンシャルを秘めています。そのためにも、フィールドの整備や管理がますます重要になってくると思います」と、こうした活動の意義や将来性について語っています。
(塚田 勝弘)