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■ぞっとしたサウジアラビアGP
●サーキット近郊にミサイルが…
2022年F1第2戦サウジアラビアGP(3/25-27)は、グランプリ初日から寿命が縮まったのではないかというくらい波乱続きでしたね。
25日(金)。1回目のフリー走行が行われていた時間帯に、サーキット近郊の石油精製所でミサイルによる爆発事故が起こりました。
私は今までいくつかの海外GPに行ってきましたが、幸い怖い思いをしたことは一度もありません。どこかで「サーキットは安全」と思っていたし、あの夢のような場所の近くでミサイルが落とされるとは考えたこともありませんでした。
しかしドライバーのオンボードカメラの映像には、巨大な黒煙が。こんな事が現実に起こるなんて…。背筋が凍るほどゾッとしました。
FIA、F1、チーム代表、ドライバーによる話し合いが行われ予定通り開催されることになりましたが、中には開催続行に懸念したドライバーもいたとのこと。私も開催続行は怖いなと思っていました。どうかサーキットにいる人全員が、最後まで無事でありますように。
●市街地サーキットの恐ろしさを再確認した予選
前日のミサイル事件があり、どことなく不安な気持ちのまま見た予選。またしても背筋が凍るような出来事が起こりました。
予選Q2、ミック・シューマッハ(ハース)が思わず目をつぶりたくなるような大クラッシュを喫してしまったのです。コントロールを失ったマシンはウォールに激しくクラッシュ。さらにその衝撃で跳ね返され反対側のウォールにも当たり、映像で見ても分かるほど大破していました。
まず第一にドライバーの無事を確認したかったのですが、なかなか映らない…。いつもだったらクラッシュシーンがリプレイされるのにそれさえも映らず、画面にはコース上を走る救急車だけ。え?これってあまり良い状況じゃないということ?心臓の動機が速くなるほど、不安な気持ちでいっぱいになりました。
その後すぐにチームがSNSに「彼は意識があり、メディカルセンターに運ばれている」と投稿。良かった~(涙)。
ドライバーの状況を誰でもすぐに知れるなんて、良い時代になりましたよね。SNSが普及する前だったら私たちの元に情報が入ってくるのはもう少し後で、きっと心配で心配で仕方なかっただろうなぁ。
残念ながら決勝は欠場となってしまいましたが、大きな怪我もなく決勝日には笑顔でサーキットに訪れていて一安心! 市街地コースは現地観戦する時に移動手段など便利で大好きですが、今回の大クラッシュを見て恐ろしさを再確認しました。
そして最新マシンの安全性もしっかりと証明されましたよね。シューマッハの無事が確認されてからクラッシュシーンが放送されましたが、ヘイローがなかったらタイヤが顔に激突していたのではないかと思うとゾッとしました。ヘイローが登場した時は「ビーチサンダルの鼻緒みたいで嫌だ~」なんて思っていましたが、今ではヘイロー様様です。
●セルジオ・ぺレスが初ポールポジション獲得!
このどんよりとした雰囲気を吹き飛ばしてくれたのが、セルジオ・ぺレス(レッドブル)。自身初、そしてメキシコ人ドライバー初のポールポジションを獲得したのです!
長いことF1で走っているのでポールポジションはもう取っているだろうと思っていましたが、まさか初めてだったとは。参戦215戦目と、ポールポジション獲得までかかった期間としても最長記録を更新しました。
予選Q3、全車ラストアタックに入りシャルル・ルクレール(フェラーリ)とカルロス・サインツJr.(フェラーリ)が1-2に。「フェラーリ、フロントロウか。速いなぁ」と思っていた矢先、ぺレスが渾身の走りでポールポジションを獲得!
セッション終了後、チームからポールポジションと報告が入ると「イエース!ピー!ピー!努力は必ず報われるものだね」と、放送禁止用語全開で喜んでいましたね(笑)。
マシンから降りると、まるで「ありがとう」と言っているかのようにフロントタイヤをポンポン。素敵すぎる…。
会場からはぺレスの愛称【チェコ】コールが鳴り響き(TVの前で私もしちゃいました)、最高の雰囲気で予選が終わりました。チェコ、ありがとう!
●運を味方につけることができず
初ポールポジション獲得で会場のボルテージを一気にあげてくれたペレスですが、決勝では運を味方につけることができませんでした。
スタートでしっかりとポジションをキープし、そのまま首位独走。これはポール・トゥ・ウインもいけるか!?と思っていたのですが16周目のタイヤ交換を終えた直後、ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)がクラッシュしセーフティカーが導入されたのです。
2番手ルクレールのアンダーカット(前を走るライバルよりも早くピットインし、フレッシュなタイヤで速く周回してポジションをあげる戦略)を阻止すべく、上位勢で誰よりも早くピットインしたペレス。しかし、ライバル達はセーフティカーランでロスタイムがなくなるこの間にぞくぞくとピットインし、タイヤ交換をしていきます。
その結果、3番手まで順位を落とすことに(涙)。たった数分、いや数秒後にまさかセーフティカーが入るなんて誰が予想できたでしょう。でも、これもレース。運を味方につけることができず悲願のポール・トゥ・ウインを逃してしまいましたが、今シーズン、必ず成し遂げてくれると信じています!
●大興奮のチームメイトバトル!
前戦バーレーンGPでも白熱したバトルを見ることができましたが、今回も熱いバトルの連続! まずはフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)とエステバン・オコン(アルピーヌ)のチームメイトバトルです。
スタート直後から何度も何度もしかけるアロンソに、必死に抵抗するオコン。「今はライオンになるなぁ〜!」と心の中で叫んでいたであろうアロンソ(ライオン伝説はこちらでチェック)が、7周目のターン1でパスし6番手に浮上しました。その翌周、今度はオコンがパス! さらにその翌周にはアロンソが抜き返すというオーバーテイク合戦が繰り広げられました。
そして2台がバトルをしている間に後方のバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)とケビン・マグヌッセン(ハース)が1秒以内に近づき、DRSゾーンは4台の大接戦! ぶつからないでよ〜とヒヤヒヤしていると、オコンにチームから「お願いだから順位を守って」と無線が入ります。
分かる、分かるけど、私たちファンはバトルが見たいのよ〜!と思った矢先、オコンはボッタスに抜かれてしまい8番手に順位を落としてしまいました。モチベーションが下がってしまったのでしょうか…。
でも、2台の熱いチームメイトバトルには興奮させてもらいました!
●今シーズンは頭脳戦!?
そして何と言ってもマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とルクレールの優勝争いですよ。もう、最高にしびれました!
レース終盤、首位ルクレールに迫るフェルスタッペン。42周目のターン27手前でパスするも、43周目のメインストレートで抜きかえされてしまいます。今年のマシンは抜かれても前のマシンにすーっと近づくことができるため、すぐに抜き返すことが可能。ここでドライバー達の頭脳戦がはじまったのです。
43周目のターン27手前。またしてもフェルスタッペンがルクレールに近づくと、なんと2台ともタイヤをロックアップ!次のメインストレートで抜き返されるのを恐れ、あえてお互いポジションを譲ろうとしたのです。
「お先にどうぞ」と言わんばかりの走りに衝撃を受けましたが、これが今年のバトルのあり方になりそうですよね。ただ前のマシンを抜くだけじゃない。その先のことも見据えた頭脳戦です。純粋なバトルももちろんみたいけれど、これはこれで更にF1が面白くなるかも!?
とは言え、これじゃいつまで経っても同じことの繰り返しなのでは?と思っていたら、フェルスタッペンがチャンピオンの意地を見せつけてくれました。47周目のメインストレートでルクレールをパスすると、DRSを使われないようにその差をひろげていきます。
最終ラップにはルクレールが1秒以内に近づくも、フェルスタッペンが逃げ切り今シーズン初優勝! ウォールすれすれで走る姿は、めちゃくちゃかっこよかったです。
レース後のインタビューで「良いレースだったよ。ルクレールのほうがペースがよかったから、とにかく抜いていくことが必要だった。今年のマシンは近づくと良い出口ラインがとれてしまうから、オーバーテイクをプランするのが難しくなった」と答えたフェルスタッペン。
バトルを心から楽しんでいたのが分かる、嬉しそうな表情が印象的でした。私たちファンはもちろんですが、ドライバー自身もオーバーテイクが増えて楽しいのかな?
今回も面白すぎてあっという間に終わったサウジアラビアGP。何より、無事にレースを終える事ができて本当に良かったです。
(yuri)